伸び続ける襟足「負けたら切るねん!」巨人・山崎伊織が球団タイの開幕28イニング連続無失点
◆JERA セ・リーグ 巨人2―0中日(23日・東京ドーム)
深く呼吸し、山崎は集中力を研ぎ澄ませた。最大のピンチを切り抜け、思わず笑みがこぼれた。0―0の4回1死満塁から木下をシュートで三ゴロに封じ、本塁封殺。2死満塁からは柳を149キロで詰まらせ、投ゴロに仕留めた。打球を自らつかむと「近かったので」と確実な本塁へ送球。開幕からの無失点記録を継続させ、降り注ぐ「伊織コール」に身を委ねた。
5回5安打、103球と球数を要しながら無失点。打線の援護に恵まれず開幕4戦4勝とはならなかったが、開幕28イニング連続無失点として07年高橋尚成の球団記録に並び「状態が良くない中、5回しか投げてないけど、なんとかピンチを粘っていった結果、チームが勝つことができた」とホッと息をついた。
粘りに粘った。初回、2者連続四球などで計28球を費やしたが、本塁は踏ませない。5回2死一、三塁では4番の細川を右飛に打ち取るなど、要所を締めた。最速151キロの直球は「高さやコースを間違えないように」と丁寧さを意識。フォークやカットボール、シュートを交えてしのぎ「甲斐さんが、引きたい場面でも『来いよ!』って伝えてくれて、助けられてなんとか試合はつくれた」と女房役に感謝した。
帽子からはみ出た襟足に願いを込めた。G球場での先発練習中、京本から「髪の毛切らないんですか?」と聞かれ「負けたら切るねん! 打たれたらボウズにするんや!」と即答した。「ボウズはうそやけどな」と笑いながら、「去年もけっこうあった。泉さん、大勢、バッサー(船迫)に『今日、負け投手になったら襟足を切る!』って宣言してる」と願を掛けることが多かった。襟足は自身の無失点記録と並行して、伸びっぱなし。「だいぶ伸びたからもう切らんとあかんな」というが、願を掛けずともゼロを並べ続けられる安定感が今年の山崎にはある。
阿部監督は「球団記録か何か知らないけど、皆さんがプレッシャーをかけるので慎重になりすぎていたのはあった」と言いつつ「なんとか粘ったね」とたたえた。「なんとかまた先発としていい仕事ができるように、今後も頑張っていきたい」と山崎は前を見た。球団新記録を樹立して、開幕4連勝へ。気持ちを切らさず、次もまたゼロを重ねていく。(水上 智恵)
高橋尚成氏「伊織は本当にOB思いですね。記録更新の活躍は、歴代の先輩方たちの名前が改めて紹介される場になりますから。なかなか、開幕から無失点イニングの記録って話題にならない。彼が0行進を続けてくれたおかげで、僕の名前もこうして出てきた。そして簡単に並んでくれたこともうれしいです。僕の07年は、初めてタイトル(最優秀防御率、2.75)を取り、14勝(4敗)で内海哲也と並んでチーム勝ち頭になった年。伊織にもエースの活躍を期待します」
◆高橋由伸氏 Point「ピンチでも冷静」
満塁のピンチでも、山崎は冷静に見えた。4回1死満塁、木下への勝負球は内角シュート。併殺こそ取れなかったが、狙い通りに詰まらせた。1打席目は外角中心の配球で空振り三振に打ち取り、一転したその2打席目。勝負どころでコースを間違えない制球力が大したもので、勝てる投手へと成長した証拠だった。
打者として、これほど厄介な相手はいない。右打者にはシュート、左打者にはカットで内角を意識させられる。詰まりたくないからミートポイントを前にする。するとフォークでかわされる。コース、球種を一つに絞るなど、割り切るしかないのだ。今年はさらに、角度と球威がある。コンディションさえ維持できれば勝ち星はどんどん伸びていくだろう。(スポーツ報知評論家)
◆記録メモ…「セ」記録まであと3回
巨人先発の山崎は5回を無失点。今年の初登板から続く無失点を28回に伸ばして、07年に高橋尚成がマークした開幕から28イニング連続無失点の球団記録に並んだ。
開幕から続けた無失点の記録は、1リーグ時代の39年に高橋敏(阪急)が作った38回1/3。パでは21年平良海馬(西)の38回、セでは63年中井悦雄(神)と23年村上頌樹(神)の31回。
なお、開幕に限定せずシーズン途中を含む連続イニング無失点の記録は、58年金田正一(国鉄)の64回1/3。巨人では43年藤本英雄の62回がある。