老化の元凶「糖化」は、糖質と脂質のダブルパンチで進む

人生も半ばを過ぎると、老化と無縁ではいられない。少しでも老化を遅らせ、健康寿命を延ばしたいというのは誰しも願うことだろう。近年では老化研究が急速に進み、老化を進める要因も明らかになってきた。今、その中で注目されているのが「糖化」だ。糖化は、見た目の老化はもちろん、血管や内臓、骨、関節などの機能低下、糖尿病、認知症など多くの病気のリスクも高める。では、糖化を防ぎ“老けない”ために何を実践すればいいのだろうか。本特集では、糖化の最新事情とその対策を、糖化研究の専門家である同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏に聞いていく。

『糖と油で老化が進む! 「糖化」の防ぎ方』 特集の内容

  • 第1回

    老化の元凶「糖化」は、糖質と脂質のダブルパンチで進む←今回

  • 第2回

    「糖化」を防いで老化を遅らせる、食事のルール

  • 第3回

    蒸留酒より醸造酒? 糖化を最小限に抑える「お酒」の飲み方

数ある老化対策の中で最も重視すべきは「糖化」

 年を重ねると、皮膚のシミ・シワ、白髪などが目立ち始める。こうした自然な加齢現象は誰にでも起こり、避けて通るのは難しい。とはいえ、“老け方”には明らかに個人差があり、同じ年代なのに10歳若く見える人もいれば、逆に10歳老けて見える人もいる。問題は見た目だけではない。健康寿命に大きく影響するさまざまな病気の進み方にも個人差がある。同い年の友人は若々しく病気知らずなのに、自分だけ老け込んで病気がちになっていくとしたら――。こんな事態は誰だって避けたいものだ。

(写真はイメージ:PIXTA)

 近年、老化研究が大幅に進み、老化を進める要因も明らかになってきている。その代表として、体内の過剰な糖が悪影響を及ぼす「糖化」や、活性酸素により起こる「酸化」、免疫の低下、心身のストレス、生活習慣などが分かっている。どれも重要な要素だが、特にクローズアップされているのが糖化だ。最近はテレビや週刊誌などでも取り上げられる機会が増えているので、聞き覚えのある人も少なくないだろう。

2025年刊行『糖と脂で体は壊れる』(池田書店)

 同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏は、「数ある老化要因の中で、最も重視するべきなのが糖化です」と言い切る。米井氏は早くから老化対策(アンチエイジング)の重要性に着目し、2000年に日本鋼管病院に日本初のアンチエイジングドックを開設した医師だ。日本抗加齢医学研究会(現・日本抗加齢医学会の前身)の立ち上げに関わり、同志社大学で糖化の観点から抗加齢医学研究に携わってきた。糖化ストレス研究会の理事長も務める中、アンチエイジングについて多くの著書も手がけている。

 糖化とは、糖質がたんぱく質と結びつき、そこに熱が加わって褐色に色づく反応のこと。メイラード反応ともいう。例えば、小麦粉のでんぷんや砂糖(糖質)に卵(たんぱく質)を加えて加熱すると、キツネ色のパンケーキが焼き上がる。まさにこれが糖化反応だ。

 パンケーキに限らず、こんがり焼けた料理のおいしさは誰もが知るところだが、これが体内で起こると大きな問題となる。糖化反応によって体内のたんぱく質が“焦げて”変性し、劣化してしまうからだ。下の写真は、牛の皮をブドウ糖溶液()と、ブドウ糖を含まない溶液()に数日漬け込んだもの。糖を含むというだけで組織内のたんぱく質の糖化が進み、茶褐色に変色し、弾力が失われていく。

牛皮の糖化モデル(左が糖化処理なし、右が糖化処理あり)。(写真提供:同志社大学 アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター)

 糖化反応が進むと、最終的に終末糖化産物AGEs:Advanced Glycation End Products)と呼ばれる物質になる。AGEsはたんぱく質が変性した状態であり、体内の老化を進めるもとだ。

 「たんぱく質は、皮膚や筋肉だけでなく、各種臓器、血管、骨などさまざまな器官の構成要素です。同様に、ホルモンや酵素、遺伝子などもたんぱく質(機能性たんぱく質)でできています。これが糖化によって焦げていくのですから、見た目が老けたり、臓器などが劣化したりして、さまざまな疾患につながるのです」(米井氏)

糖化でさまざまな病気のリスクも高まる

 糖化によってリスクが高まる病気は、多岐にわたる。その1つが糖尿病。糖尿病患者の体の中では、血糖値を調節するインスリンというホルモンが効きにくいことが分かっているが、それも糖化の影響だ。「インスリンがつくられる過程で糖化を起こすため、血糖値を下げる機能が落ちると考えられます」と米井氏。

 このほかにも、糖化によって血管が傷むと、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなり、皮膚ではシミやシワが増える。脳では認知症、骨では骨粗しょう症、目では白内障や加齢黄斑変性など、糖化はさまざまな病気の引き金になる。さらに、免疫力の低下や慢性疲労、意欲の減退などにも影響するという。

 米井氏は、近年の研究から糖化を進めるメカニズムが明らかになってきたと話す。糖質のとり過ぎが原因であることは従来から知られていたが、脂質の影響も大きいことが分かったという。米井氏は「糖質と脂質が体を壊していくのです」と警告する。本特集 第1回では米井氏への取材を基に、糖質と脂質が糖化を進め、老化につながる仕組みを解説。第2回では糖化を抑える食事のルール、第3回ではお酒との付き合い方や運動のコツなど、具体的な糖化対策を紹介しよう。


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人生も半ばを過ぎると、老化と無縁ではいられない。少しでも老化を遅らせ、健康寿命を延ばしたいというのは誰しも願うことだろう。近年では老化研究が急速に進み、老化を進める要因も明らかになってきた。今、その中で注目されているのが「糖化」だ。糖化は、見た目の老化はもちろん、血管や内臓、骨、関節などの機能低下、糖尿病、認知症など多くの病気のリスクも高める。では、糖化を防ぎ“老けない”ために何を実践すればいいのだろうか。本特集では、糖化の最新事情とその対策を、糖化研究の専門家である同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏に聞いていく。

米井嘉一(よねい よしかず)氏 同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター 教授

1982年慶應義塾大学医学部卒業、1986年同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学、日本鋼管病院内科、同院人間ドック脳ドック室部長などを経て、2005年より現職。2008年より同志社大学大学院生命医科学研究科教授を兼任する。研究テーマは抗加齢医学、糖化ストレス、内科学。『糖と脂で体は壊れる』(池田書店)ほか著書多数、科学誌「Nature」2025年3月13日号でも研究内容が紹介された。

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  • 誰もがなる「白内障」、失明原因1位「緑内障」 早期発見のカギ

    年を重ねたら誰もが必ずなる病気で、眼鏡をかけても矯正できない白内障。日本人の中途失明原因の1位であり、40歳以上の20人に1人がかかるという緑内障。視機能低下を進ませるこれら2つは、一体どうしたら早期発見でき、どんな治療をするのでしょうか。過去の人気記事を基に、多くの人が直面する白内障・緑内障との付き合い方を見ていきましょう。

  • 危険な「脳卒中」から身を守る方法

    脳卒中は突然起こる病気でありながら、実は8割が予防できる病気でもあると言われている。予防のために私たちができることは何なのか。脳の血管を守る極意を見ていこう。

  • 頻尿、尿漏れ… 尿のお悩みは症状に合った適切なケアを!

    急に尿意が生じる、くしゃみをすると尿が漏れる…。尿のお悩みの中には、症状に合った適切な対策をとりさえすれば、わざわざ医療機関に行かずとも、生活習慣の見直しや体操などセルフケアで改善できるものが少なくありません。あきらめる前に試しにやってみましょう。

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米井嘉一(よねい よしかず)氏 同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター 教授

1982年慶應義塾大学医学部卒業、1986年同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学、日本鋼管病院内科、同院人間ドック脳ドック室部長などを経て、2005年より現職。2008年より同志社大学大学院生命医科学研究科教授を兼任する。研究テーマは抗加齢医学、糖化ストレス、内科学。『糖と脂で体は壊れる』(池田書店)ほか著書多数、科学誌「Nature」2025年3月13日号でも研究内容が紹介された。

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LDLコレステロール値や中性脂肪値などが高い脂質異常症は、血管の老化を進め、心筋梗塞による突然死の原因となる病気だ。しかし、過信して放置している人や誤解している人も多いようだ。何が本当なのか。本特集では、コレステロールに関する正しい情報を解説し、血管の老化と突然死を防ぐ方法を紹介する。

山下静也(やました しずや)氏 りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)理事長

1979年大阪大学医学部卒業。米シンシナティ大学臨床病理学教室、大阪大学医学部講師、同大学院医学系研究科助教授、同総合地域医療学寄附講座教授などを経て、2015年地方独立行政法人りんくう総合医療センター副理事長兼病院長に就任。2020年より現職。日本動脈硬化学会元理事長・名誉会員。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の執筆協力委員・顧問も務めた。専門は脂質異常症、動脈硬化症、肥満症。

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年を重ねると増えてくる「関節」まわりの痛みや凝り、違和感。なかでも多くの人が気になっているのが、「股関節」ではないだろうか。股関節は体の中心にあって、歩く機能を支える大切な関節だ。100年ずっと自分の股関節で歩くにはどうすればいいのだろうか。股関節の仕組みや股関節を守るために必要なこと、痛んでしまった股関節の治療などを紹介する。

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 順風満帆に過ごしているつもりでも、職場やプライベートの悩みがむくむくと膨らんでくる。強がってみたり、困りごとに向き合わずに放置したりと一瞬悩みから解放されたように振る舞っても、ふと立ち戻ると何も解決していないことに気が付き、一人で考え込んでしまう……そんなあなたは悩みで心がコリ固まっています。

 職場での人間関係、恋愛、健康や病気、加齢、キャリア、家庭……人の悩みはさまざまな場面で存在します。でもその多くは、「こうあるべき」という自分の思い込みによるものかもしれません。決めつけや先入観、一つひとつ、はがしていきませんか。

 この連載では、「こうあるべき」の思い込みを解いて心のコリを軽くするような言葉を、精神科医のTomy先生が発信していきます。きっとパッと視界が広がるでしょう。

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精神科医Tomy先生が、ビジネスパーソンのさまざまな悩みに向き合う本連載。今回のテーマは「成長感」です。50代半ばの男性は、40代になった頃から1年が過ぎるのがどんどん速く感じられるようになり、自分の成長を感じられなくなったと言います。このまま年齢を重ねていくことに不安を感じている男性に、Tomy先生がアドバイスします。

(写真:fujiwara/stock.adobe.com)

成長を感じられず、このまま年齢を重ねるのが不安です

 今回悩みを打ち明けてくれたのは、医療機器製造の中堅企業で営業として働いている50代の秀之さん(仮名)です。若い頃はわりと好奇心旺盛で、新しいことにも積極的に挑戦してきた秀之さんですが、40歳を過ぎた頃から新しいことを始めるのが急におっくうになったと言います。毎日同じことの繰り返しになると、1年が過ぎるのがより速く感じられるようになりました。

 部下の挑戦を後押しする立場でありながら、自分自身はあまり挑戦していない。成長も感じられないことに焦りや不安を感じるようになった秀之さん。

 友人たちからは、「何か新しいことを始めてみれば?」と言われるものの、なかなか重い腰が上がりません。

 「このまま50代が過ぎ、60代へと年齢を重ねていっていいものでしょうか。成長している実感があれば、こうした不安もなくなるのではないかと思うのですが……。Tomy先生、私は、これからどうすればいいのでしょうか?」

日常に「小さな変化」を起こしてみて

 率直に言えば、秀之さんに限らず年齢を重ねると成長を感じられなくなるのは、当然のことです。自分から動かなければ人間関係は固定化しがちになるだけでなく、放っておくとむしろ、ネットワークは小さくなっていきます。仕事面も若い頃と比較して、成長スピードが落ちているように感じるのは自然なことでしょう。ただ私は、肉体的には難しくても、精神的には永遠に成長できると思っています。

 秀之さんは、日常生活の中に「楽しいこと」があまりないのかもしれません。もしそうなら、探しに行きましょう。大事なのは今が快適であることと、毎日に適切な変化があることです。

 人間、日常生活にまったく変化がなければ、「このままでいいのかな」と不安になるものです。新しいことを始めるのは不安かもしれませんが、まずは「こんなことをしてみようかな」というものを探してみるだけならできるのではないでしょうか。その中で、楽しそうだな、できそうだなと思うものがあれば、挑戦してみてください。

 面倒で断っていた交流会に1回は参加してみる、近くのスポーツジムに通ってトレーナーや常連さんと話してみる。そんな小さなことでいいので、日常に変化を起こしてみましょう。

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 職場での人間関係、恋愛、健康や病気、加齢、キャリア、家庭……人の悩みはさまざまな場面で存在します。でもその多くは、「こうあるべき」という自分の思い込みによるものかもしれません。決めつけや先入観、一つひとつ、はがしていきませんか。

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「認知症」についての問題

【問題】日本の認知症患者は戦後、右肩上がりに増え続けており、2012年の患者数は462万人でした。その時点で、2025年には675万人、2040年には802万人に達すると見込まれていました。しかし、2024年5月に厚生労働省が発表した最新の推計では数値が見直されました。最新統計における、2040年の推計患者数は次のうちどれでしょう。

  • (1)約1600万人
  • (2)約1000万人
  • (3)約800万人
  • (4)約600万人

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  • 誰もがなる「白内障」、失明原因1位「緑内障」 早期発見のカギ

    年を重ねたら誰もが必ずなる病気で、眼鏡をかけても矯正できない白内障。日本人の中途失明原因の1位であり、40歳以上の20人に1人がかかるという緑内障。視機能低下を進ませるこれら2つは、一体どうしたら早期発見でき、どんな治療をするのでしょうか。過去の人気記事を基に、多くの人が直面する白内障・緑内障との付き合い方を見ていきましょう。

  • 危険な「脳卒中」から身を守る方法

    脳卒中は突然起こる病気でありながら、実は8割が予防できる病気でもあると言われている。予防のために私たちができることは何なのか。脳の血管を守る極意を見ていこう。

  • 頻尿、尿漏れ… 尿のお悩みは症状に合った適切なケアを!

    急に尿意が生じる、くしゃみをすると尿が漏れる…。尿のお悩みの中には、症状に合った適切な対策をとりさえすれば、わざわざ医療機関に行かずとも、生活習慣の見直しや体操などセルフケアで改善できるものが少なくありません。あきらめる前に試しにやってみましょう。

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年を重ねたら誰もが必ずなる病気で、眼鏡をかけても矯正できない白内障。日本人の中途失明原因の1位であり、40歳以上の20人に1人がかかるという緑内障。視機能低下を進ませるこれら2つは、一体どうしたら早期発見でき、どんな治療をするのだろうか。過去の人気記事を基に、多くの人が直面する白内障・緑内障との付き合い方を見ていこう。

テーマ別特集「白内障・緑内障」この記事の主な内容 全員が必ずなる「白内障」 80代ではほぼ100% 60歳以上は10人に1人が緑内障 9割が未発見 白内障に気づくために日常生活で注意すべきサインは 緑内障はカレンダーを使って視野欠けをセルフチェック 「眼底検査」で緑内障を早期発見 40歳以上は受けてみよう 白内障は手術で治る 単焦点・多焦点の違いは 緑内障は、目薬やレーザー、手術で治療する

 「最近、視界がぼやける」「見える範囲が狭まってきた」…これを放置していると、「見たいものがはっきりと見えなくなる」「読書や運転が難しくなる」「段差や階段がよく見えず外出がおっくうになる」なんて事態になりかねない。こうした事態になると、筋力・歩行機能の低下、社会参加の減少などから、健康寿命が縮まっていく。

 実は、視界がぼやけたり、見える範囲が狭くなることは、「白内障」や「緑内障」のサインかもしれない。誰もがなる「白内障」と、放っておくと失明につながる危険もある「緑内障」。視機能の衰えを抑えるためには早期発見が重要だ。この記事で早期発見のポイントや治療法をチェックして、いつまでも「見たいものをはっきりと見られる」状態をキープしよう。

全員が必ずなる「白内障」 80代ではほぼ100%

 水晶体は本来透明だが、加齢によって濁ると、光の通りが悪くなり、物がかすんで見えるようになる。これが「白内障」だ。

 「50代では3割、80代ではほぼ100%の人に白内障の所見が見られます。つまり、将来的には全員が白内障になります。水晶体が濁るのは白髪になるのと同じような加齢現象で、両眼に起きるのも特徴です」と、順天堂大学医学部眼科学教室先任准教授の平塚義宗氏は話す。

 水晶体が濁ると光が散乱するため、ぼやける、かすむという症状が出る。まぶしく見える、細かいものが見えない、物がだぶって見える、眼鏡の度数が合わないなどの症状が出て、進行すると視力がさらに低下していく。

 ただし、最初のうちはなんとなく目がかすむように感じるだけで、視力が落ちていることに気づかない人もいる。水晶体の中央部ではなく周辺部が濁ることが多いため、見た目でも分からず、眼科で散瞳検査(瞳孔を開いて詳しく目を見る検査)を行うことによって発見できる。

加齢により水晶体が硬くなり、白く濁る。さらに進行すると水晶体は黄色や褐色になり、放置すると失明に至ることもあるが、日本では白内障で視覚障害になるケースは1.8%と高くない(*1)。(イラスト:内山弘隆)

60歳以上は10人に1人が緑内障 9割が未発見

 一方で、目と脳をつなぐ視神経が障害され、視野が欠けるのが「緑内障」。日本の中途失明原因の1位で、40歳以上では20人に1人、60歳を超えると10人に1人が該当する。実はとても身近な病気だ。

眼球が球形を維持するための一定の内圧のことを「眼圧」というが、その圧力が高まると目と脳をつなぐ視神経が傷つき、その結果、視覚情報が伝わらず、視野が欠損する。ただ、日本人には、眼圧が高くなくても視神経に異常をきたして緑内障になる「正常眼圧緑内障」というタイプが多く、7割を占める。正常といわれる眼圧値であっても、その人にとっては「高い」と判断されるのだ。(イラスト:内山弘隆)

 「国内の調査では、緑内障の90%は未発見と推計されています(*2)。これは、片目の視野が部分的に欠けていても、もう片側の目で補うことができ、自覚することが非常に難しいからです」(平塚氏)

 進行とともに視野が欠ける範囲が増え、見える範囲が狭くなっていく。後期になると、交通事故件数が2.1倍に増える、うつ病リスクや転倒リスクが増えることなどが分かっている。視野が欠けることは生活に大きな影響をもたらす。足下の視野が欠ければ階段を踏み外すし、側方の視野が欠ければ横から近づいてくる人や車に気づかずぶつかってしまう。

進行すると徐々に視野が欠けていく。(図:40歳以上の人のためのアイフレイルガイド(日本眼科啓発会議))

 視機能の低下につながる、身近な病気である「白内障」と「緑内障」。早期発見が、進行を抑えるカギとなる。日常生活でどんなサインがあれば、これらの病気を疑ったほうがよいのだろうか。次ページから、早く気づくためのポイントを紹介する。

*1 Jpn J Ophthalmol. 2023 May;67(3):346-352. *2 日本緑内障学会「日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(通称:多治見スタディ)報告」

【 ピックアップ記事 】 目の機能低下を加速させる5つの目の病気、早期発見のポイント

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腰痛や肩こり、ひざ痛の原因は、もしかしたら股関節の動きに問題があるからかもしれない。前回は歩き方の見直しについて詳しく紹介した。今回は、股関節の動きを正すクセづけをしていこう。

股関節の負担を減らす3大対策

  • 正しく歩く → 股関節ウォーク 前回紹介
  • クセを正す → うつ伏せもも上げ筋トレ ←今回
  • ほぐす → 前ももストレッチ ←今回

筋肉に“いい位置”を記憶させよう

 股関節ウォークだけでも股関節まわりの筋肉に、いい股関節の位置での歩き方を「クセづけ」することはできるが、長年染みついた筋肉のクセを正すには、筋トレとの組み合わせが近道だ。

 「筋トレで、使われていなかった筋肉に動きを思い出させ、過剰に使われていた筋肉の負担を軽減させます。何度も繰り返すと、その動きが刺激となり、どう動けばいいか、どの筋肉たちを同時に働かせればいいかが脳内に記憶されていきます」(理学療法士・姿勢改善トレーナーのHiromi氏)

 では、股関節ウォークの筋肉の使い方を記憶させるクセづけ筋トレはどうすればいいのか。

 「実は、歩くときの足の踏み出しには、寝ながら足を上げるときと同じクセが出ます。例えば、『うつ伏せもも上げ』で足が内側に倒れる人は、歩くときに太ももを内側へねじって歩く内股グセが、外側に倒れる人は足を外に開くガニ股で歩くクセがついていることがほとんどです。ですから、逆にこの『うつ伏せもも上げ』で正しい股関節の動きをインプットしていくと、歩く際にも自然と同じ筋肉の使い方ができるようになり、脚をねじらずに歩くことができるようになります」とHiromi氏は説明する。

まずはこれだけ! クセづけトレ「うつ伏せもも上げ」

 うつ伏せで太ももを真っすぐ上げる動きで腹筋群とお尻にある大殿筋、太もも内側の内転筋に同時に動き方を記憶させる。まずは真っすぐ上げることができるかをチェックしよう。

「うつ伏せもも上げ」で体幹と股関節を同時に鍛える

手を頭の下に置いてうつ伏せになり、恥骨を床につけて下腹を凹ませる。ひざを90度に曲げ、つま先を天井に向ける。(写真:Hiromi)

息を吸って準備し、息を吐きながら、床から太ももを少しだけ持ち上げて10秒キープ。3セットずつ、左右の足で繰り返す。(写真:Hiromi)

足が内側、外側に倒れないよう、足の親指と小指を天井に向けて真っすぐ伸ばすイメージで。(写真:Hiromi)

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年を重ねると増えてくる「関節」まわりの痛みや凝り、違和感。なかでも多くの人が気になっているのが、「股関節」ではないだろうか。股関節は体の中心にあって、歩く機能を支える大切な関節だ。100年ずっと自分の股関節で歩くにはどうすればいいのだろうか。股関節の仕組みや股関節を守るために必要なこと、痛んでしまった股関節の治療などを紹介する。

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首や肩、ひざなど年を重ねると増えてくる「関節」まわりの痛みや凝り、違和感。特に、体の中心にあって、歩く機能を支える「股関節」で困っている人は多いかもしれない。球関節で自在に動くメリットがある一方で、しっかりとまわりの筋肉がサポートする必要がある関節。股関節を守るために普段どのような心がけが必要なのか、基本を紹介していく。

片足立ちで靴下を履く動作でチェック

 「私の股関節は元気といえるのかな?」「股関節まわりの筋肉は大丈夫かな」と心配している人にまずやってほしいのが、片足立ちで靴下を履くこと。支えるほうの脚のひざをしっかり伸ばして、体をぐらぐらさせずに履けるだろうか。

これが最もシンプルな股関節のチェック

ささっと立ったまま靴下を履けるだろうか。自信がないという人は壁を背にして、よろけてもいいような状態でやってみよう。軸足のひざを曲げないこともポイントだ。(写真:稲垣純也)

 実はこの動作、非常に多くの機能チェックにつながっている。「股関節の側面から考えると、靴下を履けるよう股関節を屈曲させ、足をしっかり引き寄せられる可動域があるか、またそれを担う腸腰筋などの筋力があるかどうかが分かります」と股関節を専門とする整形外科医で、北里大学大学院医療系研究科医学専攻主任の高平尚伸氏は話す。

 そして、「支える側の股関節まわりの筋力もあるかどうか、片足でしっかり立つためのバランス能力があるかということも分かります。シンプルな動作ですが、両脚それぞれの股関節の可動域と股関節まわりの筋力が必要になる実に複合的な動作です」と言う。

 つまり、片足立ちで靴下を履けるかどうかは、股関節をはじめ下半身全体のバランス能力や筋力・柔軟性の指標にもなるのだ。

 この片足立ち靴下履き、習慣にすると、ちょっとしたトレーニングにもなると高平氏は言う。股関節に痛みがあって受診しているという人は無理せずに行い、痛みはないができなかった人は習慣にしよう。

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腰痛や肩こり、ひざ痛の原因は、もしかしたら股関節の動きに問題があるからかもしれない。股関節がズレていると、歩くたびに体が振られ、腰やひざに負担がかかってしまう。股関節に違和感がある人、歩くと痛みが出るという人は、まず歩き方から見直そう。

股関節の負担を減らす3大対策

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  • ほぐす → 前ももストレッチ 次回紹介

歩くと痛いのは、股関節がズレているのかも

 「歩くとひざが痛む」「長時間歩くと腰が痛くなってつらい」といった歩行時の痛みや「股関節に違和感を感じる」という人はいないだろうか。「こうした歩行時に生じる痛みや股関節に違和感は、股関節にはまる脚の骨のてっぺん、つまり大腿骨頭(だいたいこっとう)のズレから生じることが多いです」と理学療法士としての経験を生かし、姿勢改善トレーニングなどを手がけるHiromi氏は語る。

 大腿骨頭のズレとは、本来股関節にはまるべき位置や角度がずれていることを指すという。「大腿骨頭がずれると、脚を動かしたときに股関節の動きが滑らかでなくなり、ときには引っかかったり詰まったりといった違和感を感じることがあります」

 では、なぜ骨頭がずれるのか。「姿勢のクセなどが影響して、骨盤に傾きが生じたまま歩くことで、使う筋肉が偏るからです。使う筋肉のバランスが偏ると、大腿骨についている筋肉に一方向へ引っ張る力が生まれてしまい、それが股関節のはまり具合のズレにつながってしまいます」(Hiromi氏)

股関節がズレていると、歩くたびに体が振られ、腰やひざに負担がかかる。(写真:Hiromi)

崩れた姿勢で歩いていると股関節がズレる

反り腰で太ももが内側へねじれた姿勢では、内ももや股関節前側の筋肉が緊張しやすい。この姿勢で歩くクセがつくと、骨頭が前上方・外上方にずれやすく、股関節への負担が蓄積される。(図版:Hiromi)

 健康な股関節の場合、多少崩れた姿勢で動くくらいでは安易に骨頭がずれることはないが、「数十年その姿勢で動きを積み重ねてきた場合、またはもともと股関節のゆるみが大きい場合には、股関節にずれが起こりやすい。もし、違和感や痛みが強く、長く続いている場合には股関節の損傷などに発展していることもあるので、早い段階で医療機関を受診してみてもらったほうがいいでしょう」

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高齢者のための治療法と思われていた「人工股関節手術」が劇的に進化している。素材の耐久性が上がり、術式や先進機器の研究開発も相まって、50代でも手術を選ぶ人が増えてきた。元気に歩ける体を取り戻すことができ、テニスやゴルフもできるようになると注目を集めている。

日常生活を脅かす「股関節」の痛み

 股関節は、大腿骨(だいたいこつ)の先端にあるボールのような形をした「大腿骨頭(だいたいこっとう)」が、骨盤側の受け皿となる「寛骨臼(かんこつきゅう)」にはまり込んだ、ボールとソケットのような構造をした関節。このボールがあらゆる方向に動いて、立つ、座る、しゃがむ、歩くなど、多様な動きを支えている。

 股関節の痛みや違和感を放っておくと徐々に痛みが増し、スポーツや登山などを楽しめなくなるだけでなく、歩行困難や、痛みで睡眠が妨げられるなど、日常生活が脅かされることもある。また、ひざや腰が痛いと思っていたら、股関節に原因があったということも少なくないという。

股関節のしくみ

ボールのような形をした大腿骨頭が、受け皿となる寛骨臼にはまっている股関節。大腿骨頭があらゆる方向に動く。スムーズに動くかどうかは、クッションの役割を果たす「関節軟骨」がポイントになる。(イラスト:内山弘隆)

股関節痛の主な原因となるのは何?

 股関節の痛みを引き起こす原因の多くは「変形性股関節症」。寛骨臼と大腿骨頭の間にあって、クッションの役割を果たす「関節軟骨」が少しずつすり減って変形し、痛みが生じる病気だ。

 「変形性股関節症には、肥満などが原因で起こる1次性と、なんらかの疾患に続いて起こる2次性があります。日本人は2次性が90%程度を占めていて、女性に多いのが特徴です」と話すのは、藤田医科大学ばんたね病院臨床教授の金治有彦氏。2次性のなかでも、圧倒的に多いのが、生まれながらに寛骨臼のかぶりが浅い「寛骨臼形成不全」によるものだ。ほかに、「大腿骨寛骨臼インピンジメント」「大腿骨頭壊死症」なども痛みの原因となるという。

股関節の痛みの原因となる病気

  • 寛骨臼形成不全による変形性股関節症 変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減って変形する進行性の病気。寛骨臼のかぶりが浅く、股関節の一部分に負担がかかる「寛骨臼形成不全」によるものが圧倒的に多いが、「発育性股関節形成不全」なども要因となる。
  • CE角は、大腿骨頭の中心と寛骨臼の縁を結んだ線と、大腿骨頭の中心を通る垂線との角度で、成人の正常値は25~30°。上図の青線のように20°以下になると寛骨臼形成不全と診断される。(イラスト:内山弘隆)
  • 大腿骨寛骨臼インピンジメント インピンジメント(impingement)は「衝突」の意味。大腿骨や寛骨臼、もしくは両方の骨の形に異常によって関節唇などが損傷し、痛みが出る。進行すると変形性股関節症の一因にも。スポーツなどで過度に股関節を屈曲させることで発症することが多い。
  • その他 大腿骨頭壊死症 股関節唇損傷

    リウマチ性股関節症など

  • 骨粗しょう症と関連して起こることが多い病気 急速破壊型股関節症

    大腿骨頸部骨折

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股関節の痛みの生じ方は大きく6タイプに分かれ、痛む動作ごとにほぐすべき&鍛えるべき場所が異なる。タイプに合わせた体操を行うことで、股関節がスムーズに動くようになり、痛みの軽減にもつながる。専門医伝授の体操を紹介する。

 立ち上がろうとするときにズキッとする、なんとなく違和感がある──このような股関節の異変を感じていないだろうか。

 両脚の付け根にある股関節は、立つ・座る・しゃがむ・歩くといった日常の動作を支える要となる関節だ。「球関節(きゅうかんせつ)」と呼ばれる球面の構造で、いろいろな方向に動く自由度の高い関節ゆえに、不安定になりやすく、症状の表れ方もさまざまだ。

 変形性股関節症の治療法を研究し、数多くの手術を手がける北里大学大学院医療系研究科医学専攻主任の高平尚伸氏は、股関節のセルフケアのカギは「6方向の動き」だと話す。

 「股関節は片側だけで22の筋肉で支えられ、屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋の6方向の複雑な動きを可能にしている。この6方向のどこに問題が起こっているかを評価することで、効果的なセルフケアを導き出せる」(高平氏)

 6方向のうち、どちらに動かしたときに痛みや違和感があるか、確かめてみよう。

股関節の6方向の動き

  • 【大腿部の動き】
    • 屈曲…大腿部を前方に曲げる動き
    • 伸展…後方に伸ばす動き
  • 【足の動き】
    • 外転…足を外側に開く動き
    • 内転…内側に閉じる動き
  • 【大腿骨の動き】
    • 外旋…大腿骨を外側に回す動き
    • 内旋…内側に回す動き

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    年を重ねたら誰もが必ずなる病気で、眼鏡をかけても矯正できない白内障。日本人の中途失明原因の1位であり、40歳以上の20人に1人がかかるという緑内障。視機能低下を進ませるこれら2つは、一体どうしたら早期発見でき、どんな治療をするのでしょうか。過去の人気記事を基に、多くの人が直面する白内障・緑内障との付き合い方を見ていきましょう。

  • 危険な「脳卒中」から身を守る方法

    脳卒中は突然起こる病気でありながら、実は8割が予防できる病気でもあると言われている。予防のために私たちができることは何なのか。脳の血管を守る極意を見ていこう。

  • 頻尿、尿漏れ… 尿のお悩みは症状に合った適切なケアを!

    急に尿意が生じる、くしゃみをすると尿が漏れる…。尿のお悩みの中には、症状に合った適切な対策をとりさえすれば、わざわざ医療機関に行かずとも、生活習慣の見直しや体操などセルフケアで改善できるものが少なくありません。あきらめる前に試しにやってみましょう。

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コレステロールに関する誤解を解き、血管の老化と心筋梗塞による突然死を防ぐ方法を紹介する本特集。コレステロール値と食事の関係については、「卵は1日に何個食べても大丈夫」「食品に含まれるコレステロールはいくらとっても問題ない」と言われることがあるが、本当なのだろうか。2回目の今回は、コレステロールと食事に関する疑問を紐解いていく。

脂質異常症は心筋梗塞による突然死を招くサイレントキラー

 日本では20歳以上の4人に1人が「脂質異常症の疑い」(*1)とされている。コレステロールの値が気になっている人は多いのではないだろうか。

 脂質異常症は、悪玉であるLDLコレステロール値や中性脂肪値などが高い状態が続いたり善玉であるHDLコレステロール値が低い状態が続いたりすることで、動脈硬化を進行させる病気だ。動脈硬化が進行しても自覚症状はほとんどないため、脂質異常症を放置している人も多い。しかし、全身にコレステロールを運ぶLDLが増え過ぎると、その一部が血管内膜に入り込んで酸化LDLに変わる。それを貪食細胞(マクロファージ)が食べて生じる、コレステロールをたくさんため込んだ粥状のプラークが血管壁に蓄積することで、ますます動脈硬化が進行する。

 「脂質異常症が怖いのは、本人が気づかないうちに動脈硬化を進行させ、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞を発症して命を奪ったり、後遺症で介護が必要な状態にさせるからです」と指摘するのは、脂質異常症や動脈硬化に詳しい、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)理事長の山下静也氏だ。

 山下氏によると、脂質異常症の疑いとなるのは「LDLコレステロール値が140mg/dL以上」「中性脂肪値が空腹時採血で150mg/dL以上か随時採血で175mg/dL以上」といった値が出たとき。「脂質異常症の疑いのある人は、かかりつけ医に相談したり動脈硬化に詳しい医師のいる医療機関を受診したりするとともに、生活習慣を見直しましょう」(山下氏)

脂質異常症の人の血管

脂質異常症になると、酸化されたLDLが動脈壁に蓄積してプラーク(粥状動脈硬化巣)を形成し、血管が狭くなる。コレステロールを多く含むプラークに亀裂が入ると、血小板が集まって大きな血栓(血のかたまり)が形成されて血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞などを起こす。(イラスト:内山弘隆)

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LDLコレステロール値や中性脂肪値などが高い脂質異常症は、血管の老化を進め、心筋梗塞による突然死の原因となる病気だ。しかし、過信して放置している人や誤解している人も多いようだ。何が本当なのか。本特集では、コレステロールに関する正しい情報を解説し、血管の老化と突然死を防ぐ方法を紹介する。

山下静也(やました しずや)氏 りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)理事長

1979年大阪大学医学部卒業。米シンシナティ大学臨床病理学教室、大阪大学医学部講師、同大学院医学系研究科助教授、同総合地域医療学寄附講座教授などを経て、2015年地方独立行政法人りんくう総合医療センター副理事長兼病院長に就任。2020年より現職。日本動脈硬化学会元理事長・名誉会員。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の執筆協力委員・顧問も務めた。専門は脂質異常症、動脈硬化症、肥満症。

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脂質異常症は、本人が気づかないうちに動脈硬化を進行させ、心筋梗塞などによる突然死を招く病気だ。悪玉であるLDLコレステロールの値が高いだけではなく、善玉であるHDLコレステロールの値が低い場合も動脈硬化が進む。コレステロールにまつわる誤解を解き、動脈硬化と突然死を防ぐ方法を紹介する特集の3回目である今回は、一見難しそうな、HDLコレステロールを増やす方法と、LDLコレステロールを運動で減らす方法、そして薬物療法を始めるタイミングについて取り上げる。

HDLコレステロール値が低いと危険なワケ

 健康診断の結果を見て、LDLコレステロール値や中性脂肪値とともに、HDLコレステロール値が気になっている人も多いのではないだろうか。

 コレステロールは細胞膜やホルモン(性ホルモンや副腎皮質ホルモン)、消化液の主成分である胆汁酸の材料となり、栄養分を分解し、中性脂肪はエネルギー源になるなど、私たちが生きていくために欠かせない物質だ。コレステロールと中性脂肪は、主成分が水である血液にはなじまないため、タンパク質と脂質が結合した「リポタンパク」という乗り物に乗って、体の隅々まで運ばれている。

 LDLやHDLというのは、この乗り物のような役割を果たすリポタンパクの名前だ。HDLは、動脈壁にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓に運び、動脈硬化を抑える役割を果たしているので善玉と呼ばれる。

 「このHDLコレステロールは値が高すぎると機能不全を起こしている可能性があるという話をこの特集の1回目でしましたが、低すぎるのも問題です。40mg/dL未満になると、余分なコレステロールを回収できなくなって動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など心血管疾患の発症リスクや総死亡リスクが上がります」

 そう説明するのは、脂質異常症や動脈硬化に詳しい、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)理事長の山下静也氏だ。

LDLとHDLは、コレステロールを運搬するリポタンパクの名前。悪玉のLDLが増えすぎたり、善玉のHDLが少なすぎたりすると、血液中のコレステロールが血管壁(内膜)に蓄積して、動脈硬化が進む。(元イラスト:PIXTA)

 本特集2回目 卵は1日何個食べても、コレステロールに影響しない? で取り上げたように、食事からとるコレステロールを減らすなどすると、LDLコレステロール値は下がる人が多いが、食生活の改善だけではHDLコレステロールはなかなか増えない。また、HDLコレステロールを増やすような薬も今のところ開発されていない。そのため、「HDLコレステロールを増やすのは難しいのではないか」と考えている人もいるのではないだろうか。

 山下氏は、「HDLコレステロールを増やすのが難しいと考えているとしたら、それは誤解です。HDLコレステロールは、運動によって増やすことが可能です」と話す。

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    年を重ねたら誰もが必ずなる病気で、眼鏡をかけても矯正できない白内障。日本人の中途失明原因の1位であり、40歳以上の20人に1人がかかるという緑内障。視機能低下を進ませるこれら2つは、一体どうしたら早期発見でき、どんな治療をするのでしょうか。過去の人気記事を基に、多くの人が直面する白内障・緑内障との付き合い方を見ていきましょう。

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    脳卒中は突然起こる病気でありながら、実は8割が予防できる病気でもあると言われている。予防のために私たちができることは何なのか。脳の血管を守る極意を見ていこう。

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LDLコレステロール値や中性脂肪値などが高い脂質異常症は、血管の老化を進め、心筋梗塞による突然死の原因となる病気だ。しかし、「LDLコレステロールが高め」と健康診断などで指摘されても「少しなので問題ないだろう」などと過信して放置している人は少なくない。あるいは「高齢者はむしろ高めのほうがいい」「高齢者は低いのはよくない」といった誤解も多いようだ。何が本当なのか。本特集では、コレステロールに関する誤解を解き、血管の老化と突然死を防ぐ方法を紹介する。

LDLコレステロールが高いほど心筋梗塞のリスク増

 健康診断の結果を見て、悪玉であるLDLコレステロールの値に一喜一憂する人は少なくない。でも、悪い数値にショックを受けたからといって、改善するためにすぐに行動するかと言うと、それはまた別の話。LDLコレステロール値が高くなっても、痛い、だるいなどの自覚症状はないため、そのまま様子見している人は多いようだ。

 あなたも、「少し高いくらいなら心配ない」「年をとればLDLコレステロールが高いほうがいい」などと考え、放置していないだろうか。

 「『LDLコレステロールが少し高いくらいなら心配ない』というのは一概には言えません」――そう指摘するのは、脂質異常症や動脈硬化に詳しい、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)理事長の山下静也氏だ。

 「心配ないかどうかは内臓脂肪型肥満や高血圧、糖尿病、喫煙、年齢といった動脈硬化リスク因子の有無やそれぞれのリスクの程度などによって変わります。リスク因子がある場合はその分、動脈硬化の進行が早まるからです」と山下氏が言うようにケースバイケースであることは肝に銘じる必要がある。「LDLコレステロールが高くなっても特に自覚症状はありませんが、高い状態が続くと血管の壁に余分な脂質が蓄積して動脈硬化が進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳血管疾患などを起こして死亡するリスクが高まります」(山下氏)

 「高齢者はLDLコレステロールが高いほうがいい」というのも間違いだと山下氏は強調する。「高いほうがいいということを示すデータはありません。高齢者でもLDLコレステロール値が高くなればなるほど、心筋梗塞など突然死の原因となる病気の発症リスクが上がることは、国内外の複数の研究で明らかになっています」と話す。

 例えば、40~69歳の日本人8131人を16~28年間追跡調査した結果では、LDLコレステロール値が高いほど心筋梗塞の発症率が上昇した。LDLコレステロール値が140mg/dL以上の群の心筋梗塞発症リスクは、80mg/dL未満の群の3.8倍だった(図1)。

図1 LDLコレステロール値が高いほど心筋梗塞の発症リスクも増加

40~69歳の日本人8131人を16~28年追跡調査した結果。LDLコレステロール値が80mg/dL未満の人たちを1とすると、LDLコレステロールが20mg/dL上がるごとに心筋梗塞発症リスクが上昇した。(Prev Med. 2011 May;52(5):381-6.を基に作成)

70~100歳の高齢者もLDLコレステロールが高いと危険

 この日本の研究は40~69歳の男女が対象だが、20~100歳のデンマーク人9万1131人を平均7.7年追跡したコペンハーゲン疫学研究でも、同じようにLDLコレステロール値が高くなるほど心筋梗塞の発症リスクが上がることが示されている。LDLコレステロール値が約39mg/dL上がるごとに全年齢で心筋梗塞発症リスクが上昇したが、特に70~100歳の人でその傾向が強かった(*1)。

 コペンハーゲン疫学研究のデータを用いた分析では、心筋梗塞以外の死亡を含めても、LDLコレステロールが140mg/dLより高くなると死亡率が上がることが分かっている(*2)。脂質異常症の治療を受けている人のみのデータでは、LDLコレステロール89mg/dLの群で最も死亡率が低くなっていた。高齢者であっても、LDLコレステロールが高いほうがいいとは言えないわけだ。

 コレステロールについては、減らしたいけど減らせないと悩んでいる人が多いせいか多くの情報が飛び交い、その分、誤解や思い込みによる誤った情報も少なくない。例えば、次に挙げたような情報だ。本記事ではこうした情報の一つ一つについて山下氏に“本当のところ”を解説いただく。

コレステロールに関するよくある誤解

  • LDLコレステロール値が少し高いくらいなら心配ない
  • 高齢者はLDLコレステロール値が高いほうがいい
  • 高齢者はLDLコレステロール値を下げ過ぎないほうがいい
  • コレステロールは体に有害な物質だ
  • LDLコレステロール値が正常ならコレステロールの心配はない
  • HDLコレステロール値は高ければ高いほうが良い
  • 家族性高コレステロール血症は珍しい病気なので気にしなくていい

 ↑ これらぜんぶ正しくありません!

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人生も半ばを過ぎると、老化と無縁ではいられない。少しでも老化を遅らせ、健康寿命を延ばしたいというのは誰しも願うことだろう。近年では老化研究が急速に進み、老化を進める要因も明らかになってきた。今、その中で注目されているのが「糖化」だ。糖化は、見た目の老化はもちろん、血管や内臓、骨、関節などの機能低下、糖尿病、認知症など多くの病気のリスクも高める。では、糖化を防ぎ“老けない”ために何を実践すればいいのだろうか。本特集では、糖化の最新事情とその対策を、糖化研究の専門家である同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏に聞いていく。

『糖と油で老化が進む! 「糖化」の防ぎ方』 特集の内容

  • 第1回

    老化の元凶「糖化」は、糖質と脂質のダブルパンチで進む←今回

  • 第2回

    「糖化」を防いで老化を遅らせる、食事のルール

  • 第3回

    蒸留酒より醸造酒? 糖化を最小限に抑える「お酒」の飲み方

数ある老化対策の中で最も重視すべきは「糖化」

 年を重ねると、皮膚のシミ・シワ、白髪などが目立ち始める。こうした自然な加齢現象は誰にでも起こり、避けて通るのは難しい。とはいえ、“老け方”には明らかに個人差があり、同じ年代なのに10歳若く見える人もいれば、逆に10歳老けて見える人もいる。問題は見た目だけではない。健康寿命に大きく影響するさまざまな病気の進み方にも個人差がある。同い年の友人は若々しく病気知らずなのに、自分だけ老け込んで病気がちになっていくとしたら――。こんな事態は誰だって避けたいものだ。

(写真はイメージ:PIXTA)

 近年、老化研究が大幅に進み、老化を進める要因も明らかになってきている。その代表として、体内の過剰な糖が悪影響を及ぼす「糖化」や、活性酸素により起こる「酸化」、免疫の低下、心身のストレス、生活習慣などが分かっている。どれも重要な要素だが、特にクローズアップされているのが糖化だ。最近はテレビや週刊誌などでも取り上げられる機会が増えているので、聞き覚えのある人も少なくないだろう。

2025年刊行『糖と脂で体は壊れる』(池田書店)

 同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏は、「数ある老化要因の中で、最も重視するべきなのが糖化です」と言い切る。米井氏は早くから老化対策(アンチエイジング)の重要性に着目し、2000年に日本鋼管病院に日本初のアンチエイジングドックを開設した医師だ。日本抗加齢医学研究会(現・日本抗加齢医学会の前身)の立ち上げに関わり、同志社大学で糖化の観点から抗加齢医学研究に携わってきた。糖化ストレス研究会の理事長も務める中、アンチエイジングについて多くの著書も手がけている。

 糖化とは、糖質がたんぱく質と結びつき、そこに熱が加わって褐色に色づく反応のこと。メイラード反応ともいう。例えば、小麦粉のでんぷんや砂糖(糖質)に卵(たんぱく質)を加えて加熱すると、キツネ色のパンケーキが焼き上がる。まさにこれが糖化反応だ。

 パンケーキに限らず、こんがり焼けた料理のおいしさは誰もが知るところだが、これが体内で起こると大きな問題となる。糖化反応によって体内のたんぱく質が“焦げて”変性し、劣化してしまうからだ。下の写真は、牛の皮をブドウ糖溶液()と、ブドウ糖を含まない溶液()に数日漬け込んだもの。糖を含むというだけで組織内のたんぱく質の糖化が進み、茶褐色に変色し、弾力が失われていく。

牛皮の糖化モデル(左が糖化処理なし、右が糖化処理あり)。(写真提供:同志社大学 アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター)

 糖化反応が進むと、最終的に終末糖化産物AGEs:Advanced Glycation End Products)と呼ばれる物質になる。AGEsはたんぱく質が変性した状態であり、体内の老化を進めるもとだ。

 「たんぱく質は、皮膚や筋肉だけでなく、各種臓器、血管、骨などさまざまな器官の構成要素です。同様に、ホルモンや酵素、遺伝子などもたんぱく質(機能性たんぱく質)でできています。これが糖化によって焦げていくのですから、見た目が老けたり、臓器などが劣化したりして、さまざまな疾患につながるのです」(米井氏)

糖化でさまざまな病気のリスクも高まる

 糖化によってリスクが高まる病気は、多岐にわたる。その1つが糖尿病。糖尿病患者の体の中では、血糖値を調節するインスリンというホルモンが効きにくいことが分かっているが、それも糖化の影響だ。「インスリンがつくられる過程で糖化を起こすため、血糖値を下げる機能が落ちると考えられます」と米井氏。

 このほかにも、糖化によって血管が傷むと、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなり、皮膚ではシミやシワが増える。脳では認知症、骨では骨粗しょう症、目では白内障や加齢黄斑変性など、糖化はさまざまな病気の引き金になる。さらに、免疫力の低下や慢性疲労、意欲の減退などにも影響するという。

 米井氏は、近年の研究から糖化を進めるメカニズムが明らかになってきたと話す。糖質のとり過ぎが原因であることは従来から知られていたが、脂質の影響も大きいことが分かったという。米井氏は「糖質と脂質が体を壊していくのです」と警告する。本特集 第1回では米井氏への取材を基に、糖質と脂質が糖化を進め、老化につながる仕組みを解説。第2回では糖化を抑える食事のルール、第3回ではお酒との付き合い方や運動のコツなど、具体的な糖化対策を紹介しよう。


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人生も半ばを過ぎると、老化と無縁ではいられない。少しでも老化を遅らせ、健康寿命を延ばしたいというのは誰しも願うことだろう。近年では老化研究が急速に進み、老化を進める要因も明らかになってきた。今、その中で注目されているのが「糖化」だ。糖化は、見た目の老化はもちろん、血管や内臓、骨、関節などの機能低下、糖尿病、認知症など多くの病気のリスクも高める。では、糖化を防ぎ“老けない”ために何を実践すればいいのだろうか。本特集では、糖化の最新事情とその対策を、糖化研究の専門家である同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏に聞いていく。

『糖と油で老化が進む! 「糖化」の防ぎ方』 特集の内容

  • 第1回

    老化の元凶「糖化」は、糖質と脂質のダブルパンチで進む←今回

  • 第2回

    「糖化」を防いで老化を遅らせる、食事のルール

  • 第3回

    蒸留酒より醸造酒? 糖化を最小限に抑える「お酒」の飲み方

数ある老化対策の中で最も重視すべきは「糖化」

 年を重ねると、皮膚のシミ・シワ、白髪などが目立ち始める。こうした自然な加齢現象は誰にでも起こり、避けて通るのは難しい。とはいえ、“老け方”には明らかに個人差があり、同じ年代なのに10歳若く見える人もいれば、逆に10歳老けて見える人もいる。問題は見た目だけではない。健康寿命に大きく影響するさまざまな病気の進み方にも個人差がある。同い年の友人は若々しく病気知らずなのに、自分だけ老け込んで病気がちになっていくとしたら――。こんな事態は誰だって避けたいものだ。

(写真はイメージ:PIXTA)

 近年、老化研究が大幅に進み、老化を進める要因も明らかになってきている。その代表として、体内の過剰な糖が悪影響を及ぼす「糖化」や、活性酸素により起こる「酸化」、免疫の低下、心身のストレス、生活習慣などが分かっている。どれも重要な要素だが、特にクローズアップされているのが糖化だ。最近はテレビや週刊誌などでも取り上げられる機会が増えているので、聞き覚えのある人も少なくないだろう。

2025年刊行『糖と脂で体は壊れる』(池田書店)

 同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授の米井嘉一氏は、「数ある老化要因の中で、最も重視するべきなのが糖化です」と言い切る。米井氏は早くから老化対策(アンチエイジング)の重要性に着目し、2000年に日本鋼管病院に日本初のアンチエイジングドックを開設した医師だ。日本抗加齢医学研究会(現・日本抗加齢医学会の前身)の立ち上げに関わり、同志社大学で糖化の観点から抗加齢医学研究に携わってきた。糖化ストレス研究会の理事長も務める中、アンチエイジングについて多くの著書も手がけている。

 糖化とは、糖質がたんぱく質と結びつき、そこに熱が加わって褐色に色づく反応のこと。メイラード反応ともいう。例えば、小麦粉のでんぷんや砂糖(糖質)に卵(たんぱく質)を加えて加熱すると、キツネ色のパンケーキが焼き上がる。まさにこれが糖化反応だ。

 パンケーキに限らず、こんがり焼けた料理のおいしさは誰もが知るところだが、これが体内で起こると大きな問題となる。糖化反応によって体内のたんぱく質が“焦げて”変性し、劣化してしまうからだ。下の写真は、牛の皮をブドウ糖溶液()と、ブドウ糖を含まない溶液()に数日漬け込んだもの。糖を含むというだけで組織内のたんぱく質の糖化が進み、茶褐色に変色し、弾力が失われていく。

牛皮の糖化モデル(左が糖化処理なし、右が糖化処理あり)。(写真提供:同志社大学 アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター)

 糖化反応が進むと、最終的に終末糖化産物AGEs:Advanced Glycation End Products)と呼ばれる物質になる。AGEsはたんぱく質が変性した状態であり、体内の老化を進めるもとだ。

 「たんぱく質は、皮膚や筋肉だけでなく、各種臓器、血管、骨などさまざまな器官の構成要素です。同様に、ホルモンや酵素、遺伝子などもたんぱく質(機能性たんぱく質)でできています。これが糖化によって焦げていくのですから、見た目が老けたり、臓器などが劣化したりして、さまざまな疾患につながるのです」(米井氏)

糖化でさまざまな病気のリスクも高まる

 糖化によってリスクが高まる病気は、多岐にわたる。その1つが糖尿病。糖尿病患者の体の中では、血糖値を調節するインスリンというホルモンが効きにくいことが分かっているが、それも糖化の影響だ。「インスリンがつくられる過程で糖化を起こすため、血糖値を下げる機能が落ちると考えられます」と米井氏。

 このほかにも、糖化によって血管が傷むと、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなり、皮膚ではシミやシワが増える。脳では認知症、骨では骨粗しょう症、目では白内障や加齢黄斑変性など、糖化はさまざまな病気の引き金になる。さらに、免疫力の低下や慢性疲労、意欲の減退などにも影響するという。

 米井氏は、近年の研究から糖化を進めるメカニズムが明らかになってきたと話す。糖質のとり過ぎが原因であることは従来から知られていたが、脂質の影響も大きいことが分かったという。米井氏は「糖質と脂質が体を壊していくのです」と警告する。本特集 第1回では米井氏への取材を基に、糖質と脂質が糖化を進め、老化につながる仕組みを解説。第2回では糖化を抑える食事のルール、第3回ではお酒との付き合い方や運動のコツなど、具体的な糖化対策を紹介しよう。

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