化膿性汗腺炎患者は自殺リスク高い
化膿性汗腺炎(HS)は、精神疾患リスクの上昇と関連する慢性皮膚疾患である。人口ベース研究ではHS患者における自殺リスクの上昇が示されているが、危険因子に関するエビデンスは限られている。デンマーク・Copenhagen University HospitalのNikolaj Holgersen氏らは、全国レジストリデータを用いてHSにおける自傷および自殺の発生率と、自殺の関連因子を検討。その結果、一般人口に比べてHS群は自傷リスクが2.13倍と高く、既遂例は少ないながら自殺リスクも2.54倍と有意に高かったと、JAMA Dermatol(2026年3月11日オンライン版)のResearch Letterで報告した。
デンマークは他地域よりHS有病率が高い
最新のメタ解析では、HSの世界的な有病率は0.99%と推定されるが(JAMA Dermatol 2025; 161: 1022-1028、関連記事「化膿性汗腺炎の世界有病率は既報の2倍」)、デンマークの若年女性を対象とした研究では4.1%と他地域に比べ高い可能性が指摘されている(J Am Acad Dermatol 1996; 35: 191-194)。HSは精神疾患リスクを高めること、皮膚疾患のうち悪性黒色腫と化膿性汗腺炎は自殺完遂リスクが高いとの報告もあることから(J Eur Acad Dermatol Venereol 2026; 40: 46-58、関連記事「自殺完遂リスクの高い皮膚疾患は?」)、HS患者における自殺の抑制が公衆衛生上の課題となっている。
Holgersen氏らは、2003年1月1日以降にデンマーク全国レジストリに登録された全てのHS患者9,566例を特定。年齢および性を1:5でマッチングさせた一般人口の対照群(4万7,827例)を選出し、自傷行為または自殺の初発、他の原因による死亡、移住、2020年12月31日のいずれか早い段階まで追跡して自殺の関連因子を探索した。
自傷については、自傷行為の既往の有無で層別化し、1,000人・年当たりの発生率を算出し、自殺についても発生率を算出した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、年齢、性、喫煙歴、過度のアルコール使用歴、薬物使用歴、所得水準、教育水準を調整したハザード比(HR)を算出。さらに事後解析として、自殺で死亡したHS患者と対照者の共変量を比較してオッズ比(OR)を算出した。
HSの危険因子は喫煙歴、物質使用、低学歴など、保護因子は高収入
解析対象の主な背景は表1の通り。平均年齢は38.7±13.7歳で、女性が69.0%と多かった。
表1. ベースライン時の背景
ベースライン時の解析では、HSの危険因子として喫煙歴、過度のアルコール使用、薬物使用、最も低い教育水準、精神疾患、自傷既往が、保護因子として最高所得水準が抽出された(表2)。
表2. ベースライン背景の比較
(表1、2ともJAMA Dermatol 2026年3月11日オンライン版Research Letter)
1,000人・年当たりの発生率は、自傷が4.26、自殺が0.23
追跡期間中の自傷エピソードは、対照群で534例(1.1%)、HS群では312例(3.3%)が経験。1,000人・年当たりの自傷発生率は、それぞれ1.38(95%CI 1.27~1.51)、4.26(同3.80~4.76)と、HS群でリスクが2.13倍と有意に高かった(HR 2.13、同1.81~2.51、P<0.001)。
HS群では自傷既往なし例と比べ、あり例でリスクが低かったが、いずれも対応する対照群より高かった(既往なし例:HR 2.06、95%CI 1.72~2.46、P<0.001、既往あり例:同 1.43、1.02~2.02、P<0.05)。
追跡期間中の自殺による死亡は、対照群で31例(0.1%)、HS群で17例(0.2%)に発生。1,000人・年当たりの自殺発生率は、それぞれ0.08(95%CI 0.05~0.11)、0.23(同0.13~0.36)と、HS群でリスクが2.54倍と有意に高かった(HR 2.54、95%CI 1.33~4.87、P=0.01)。
年齢、性、喫煙歴、物質使用歴、精神疾患などに群間差なし
対照群の自殺例と比べ、HS群の自殺例では非暴力的手段による自殺(29.0% vs. 52.9%)および自傷の既往歴(14.8% vs. 41.7%)の割合が高かった。一方、年齢、性、喫煙歴、薬物使用歴、過度のアルコール使用歴、精神疾患、Charlson併存疾患指数に両群で差は認められなかった。
以上を踏まえ、Holgersen氏らは「HSは、自傷リスクの上昇と関連していた。ただし、自傷既往例では対照群との差がやや減弱したことから、年齢と性が等しい一般人口はHS群に近い精神的負担を有している可能性がある。HSは自殺リスクの上昇とも関連しており、自殺例の共変量プロファイルは両群で類似していたことから、HS自体が自殺の危険因子であることが示唆された。HS患者に対する多職種連携の必要性について、医療者に注意喚起すべきだ」と結論している。
(編集部・関根雄人)