ヤクルト本社を買い推奨!海外展開拡大・ヒット商品販売で利益が10年で倍増

 先週の記事ではビール企業を取り上げましたが、今回は乳製品大手のヤクルト本社を取り上げたいと思います。

2025年10月9日:米ビール大手モルソン・クアーズを買い推奨!直近通期に営業最高益計上もPBR1倍割れ(西勇太郎)

 ヤクルト本社(2267 東京)(株価2,358.5円、時価総額7,830億円:10月10日終値)は、1935年に医師であった代田稔氏が福岡県で設立した代田保健薬品研究所が前身です。

    代田氏は自らが発見した乳酸菌シロタ株によって腸内環境を改善し、人々の健康維持実現に寄与するため、「ヤクルト」の製造販売を開始。1955年には株式会社ヤクルト本社を設立し、1963年にヤクルトレディ制度を導入して訪問販売を開始しました。

 1964年の台湾進出を皮切りに1971年に香港、1972年にブラジル、1973年にフィリピンと海外展開を拡大し、訪問販売モデルを導入しました。1980年代にはメキシコ、アメリカ、1990年代にはオーストラリア、中国、2000年代以降はインドネシア、インド、ベトナム、タイ、ベルギー、オランダと、グローバル化を着実に進めていきました。

    現在の展開国数は40以上で、海外売上高比率が連結売上高の約半分に達しています。この点、売上高の大半が日本国内市場に依拠している国内同業の明治ホールディングス(2269 東京)雪印メグミルク(2270 東京)森永乳業(2264 東京)とは大きく異なっています。

 2025年10月14日には、「ヤクルト」ブランドが、「2024年に世界で最も売れた乳酸・乳酸菌飲料」としてギネス世界記録に認定されたことが発表されました。

 ヤクルト本社がここまでの海外展開を実現できた背景には、①乳酸菌シロタ株という独自技術を武器に信頼性の高い製品を提供できたこと、②現地の女性をヤクルトレディとして雇用し、家庭や職場に直接届けることで地域密着型の販売網を構築したこと(特にアジアや南米では、人との接点を重視する文化にマッチ)、③現地生産・現地販売の地産地消モデルを実現することでコストを抑えるとともに地元の雇用を生み出して社会的信頼を獲得したこと、などの要因があります。

 2021年には日本国内にて乳酸菌シロタ株をヤクルト史上最多の1,000億個含有する「Yakult1000」の全国販売を開始しました。ヤクルト本社としては初めての機能性表示食品で、「一時的な精神的ストレスを緩和」することと、「睡眠の質を高める」ことを機能として掲げ、100mlで店頭価格150~160円で販売しました。

    この商品についてSNSやテレビで「よく眠れる」「ストレスが減った」と口コミが拡散し、一時は品薄状態が続き、入手困難になるほどの大ヒットし、収益にも大きく貢献しました。2024年以降はブームのピークアウトにより販売本数が減少傾向にありますが、ヤクルト本社の収益レベルが一段押し上げられた状態は続いています。

10年間で利益倍増も株価は方向感無く推移

 ヤクルト本社の2015年3月期の売上高は3,680億円でしたが2025年3月期には4,997億円と1.4倍に増加しました。2010年代にはアジア・オセアニア地域、2020年代日本と米州が売上増加のけん引役となっている状況です。

 当期純利益は売上高の増加率を上回る増加を示しており、2015年3月期の251億円から2024年3月期には510億円へと倍増しました。2025年3月期は原材料費や物流コストの上昇によって前年比減益となりましたが、高水準を維持している状況です。

<ヤクルト本社の当期純利益推移(2014年以降)>

※2025年は会社計画値 出所:ヤクルト本社資料等より楽天証券経済研究所が作成

 他方、株価についてはYakult1000が全国発売した2021年から2022年にかけて一時的に上昇する局面はあったものの、過去10年の推移でみると2,000円から5,000円という広いレンジでの方向感のない推移となっており、当期純利益増加トレンドを無視している形になっています。

<ヤクルト本社の株価推移(2014年以降)>

※2025年は直近値 出所:ヤクルト本社資料等より楽天証券経済研究所が作成

PBRが過去平均水準に回復すれば株価は5,000円

 過去10年間の変化で見ると、売上高が1.4倍に増加したのに対して売上総利益は1.5倍、営業利益は1.6倍、当期純利益率は1.8倍と増加ペースが売上高を上回っており、利益率上昇を伴いながらの事業拡大が実現できたことがわかります。

    株主資本蓄積も順調に進んで1.8倍に達している中、時価総額はむしろ10年前から4割程度も減少しています。結果的にPBRは4.3倍から1.5倍へと大きく低下しており、割安感が出ています。この割安感が解消され、PBRが過去10年間の平均水準である2.7倍にまで上昇した場合には、株価は5,000円となります。

<ヤクルト本社の業績推移(2014年度と2024年度)>

出所:ヤクルト本社の資料等より楽天証券経済研究所が作成

 ちなみに地域別では、日本と米州が利益率の上昇に大きく貢献しました。日本ではYakult1000のブームによって営業利益率は6%から15%へと大きく上昇。米州ではカリフォルニア州やジョージア州に工場を設立して現地生産を開始したことによって生産コストが低下し、営業利益率は23%から28%へと上昇しました。

 なお米州で営業利益率の絶対水準が高いのは、2007年の全米店頭市場での本格販売開始時から「プロバイオティクス」「乳酸菌シロタ株」などの健康効果を明確に伝える広告を展開する「プレミアム健康飲料」としてのブランド戦略が成功したため、高単価製品として市場に受け入れられているためです。

 日本と米州で利益率が上昇した一方で、アジア・オセアニアでは26%から8%へと利益率が大きく低下しました。これは、工場の新設・増設が相次いで減価償却費が増加したことや新興国市場でのブランド認知拡大のために広告宣伝費や販促費が増加したことによるものです。

<ヤクルト本社のセグメント別業績推移(2014年度と2024年度)>

出所:ヤクルト本社の資料等より楽天証券経済研究所が作成

 2026年3月期の会社予想は減収減益となっていますが、これは国内におけるYakult1000ブームのピークアウトや為替影響によるものです。いずれにしても株主資本の蓄積は着実に進むことが見込まれているため、株価水準がこのまま変わらなければ、2026年3月期にはPBRは1.2と一層割安な水準になってしまう計算になります。

<ヤクルト本社の業績予想>

出所:ヤクルト本社、FactSetの資料等より楽天証券経済研究所が作成

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