イラン核施設を破壊し得る「バンカーバスター」とは-QuickTake
イランへの軍事攻撃を開始した理由について、イスラエル当局者は、イランの核開発能力の無力化が目的だとしている。ただ、イランの核燃料生産能力に真の打撃を与えるには、米国の支援が必要だと広く考えられている。イスラエルにはない「バンカーバスター」を米国が保有しているためだ。
バンカーバスターは、イランで最も強固に防御されたフォルドゥのウラン濃縮施設を破壊し得るほど強力だ。
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フォルドゥの施設とは何か?
イランの核プログラムの中核を成すのは、濃縮ウランを生産する2つの主要施設、ナタンズとフォルドゥだ。いずれも軍事攻撃に対して一定の耐性を持つよう設計されている。
最大施設ナタンズはイラン中部に位置し、地上と地下に設備がある。地下部分は地表から40メートル超の深さに建設されている。研究者が厚さ8メートルと推定する、鋼鉄とコンクリートによる覆いがある。
イスラエルによる攻撃後、国際原子力機関(IAEA)はナタンズの地上濃縮設備が破壊されたと明らかにした。衛星画像は、地下施設も「直接的な打撃」を受けたことを示唆している。
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テヘラン南方のコム近郊にあるフォルドゥについては、18日時点で顕著な損傷は確認されていないと、IAEAのグロッシ事務局長が述べている。フォルドゥは、山腹に建てられたより堅固な施設。地表からおよそ60-90メートルの深さに埋設されているとみられ、公に知られているイスラエルの兵器の射程外にある。
イランは、フォルドゥとナタンズの両施設でウランの濃縮度を60%まで高めている。IAEAによれば、技術的には兵器級の燃料と区別がつかないレベルだという。
米国のバンカーバスターの特異性とは?
バンカーバスターとは、爆発前に、地中深くまで貫通できる、あるいは強固な構造物を貫通できる爆弾を指す。イスラエルも比較的小規模なバンカーバスターを保有しているが、米国が開発したGBU-57(地中貫通爆弾、MOP)は保有していない。
MOPは重さ3万ポンド、長さは6メートルに及び、世界最大の精密誘導兵器とされる。米空軍によれば、「厳重に防護された施設にある大量破壊兵器」を破壊するよう設計されている。これまで戦闘で使用されたことはない。
空軍によると、MOPは爆発する前に最大で61メートルの深さまで貫通する能力を持つ。フォルドゥの一部はこれよりさらに深いところに埋設されているが、MOPは同じ地点に連続投下でき、一段と深部まで掘り進めることができる。
バンカーバスターはどのように運搬されるか?
イスラエルは、MOPの運搬も米国に依存せざるを得ない。MOPを投入できるのは、米空軍のB2ステルス爆撃機のみで、同機はMOPを2発搭載できる。
ノースロップ・グラマンによれば、B2ステルス爆撃機の航続距離は1万1000キロで、空中給油により1万9000キロまで延長できる。同機の運用基地であるミズーリ州のホワイトマン空軍基地から飛行することも可能だ。
イスラエルは米国の支援なしでフォルドゥを破壊できるか?
イスラエル軍は、フォルドゥの出入り口トンネルを爆撃して封鎖することは可能だ。ただ追撃を含む長期的な作戦を維持する意思がなければ「施設へのアクセス・補給を再確保する掘削作業が、ほぼ直ちに開始される可能性が高い」と、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)シニア・リサーチ・フェローのダリヤ・ドルジコワ、ジャスティン・ブロンク両氏が指摘する。
よりリスクの高いアプローチとして、イスラエル軍を地上に展開し、施設に侵入させ内部から破壊させる方法がある。そうした作戦は、重大な後方支援上の課題を残すとともに、イラン軍との交戦の可能性を高める。
イスラエルは核兵器を保有していると見なされており、核兵器を使用しフォルドゥを破壊することも理論上あり得るが、その場合は前例のない深刻な事態となる。
原題:What are the Bunker Busters US Could Use to Hit Iran?: QuickTake(抜粋)