焦点:イラン戦争で米の対中防衛手薄になるか、同盟国に不安広がる
[東京/台北/シドニー 3日 ロイター] - 米国とイスラエルによる対イラン攻撃で動揺が広がる中、東京都内の自民党本部では2日、議員らが非公開の会合を開き、関係省庁の官僚を呼んで邦人の退避計画やエネルギー備蓄、米国の行動の法的根拠などについて質問を重ねた。
会合では、トランプ政権によるイラン攻撃で中東地域が混乱に陥って以来、アジア各国の政策担当者が抱えている、より深い懸念を象徴するある質問が出された。その問いとは、「もし米国が、中国への抑止力として展開している艦船やミサイルなどの軍事資源を中東地域に回したら、そのことで生じる防衛上の空白にアジア地域はどう対応するのか」というものだ。
これは、中国の軍事力や、核武装した北朝鮮に対抗するための大規模な米軍基地を抱える日本と韓国のほか、中国が自国の領土だと主張し、米国から武器の供給を受けている台湾にとっても重大な問題だ。
台湾の与党・民主進歩党(民進党)の立法委員(国会議員)で、外交・国防委員会に所属する陳冠廷氏は「今回の作戦が迅速かつ限定的となり、(軍事的)資源が速やかにアジアへ戻されることを望んでいる」と述べた。また、紛争が長期化すれば「インド太平洋地域の安定と平和」が損なわれる可能性があると指摘。米国が注意をそらされている間に中国が「強圧」を強める事態に台北は備えなければならないと訴えた。
トランプ氏は、米国による中東での作戦は4、5週間続くとしつつ、さらに長期化する可能性があると述べている。
<アジアで手薄に>
2日の会合の内容を明かした日本の議員によると、出席した外務省幹部は、米国が現在アジアで展開している艦船やミサイルなどの軍事資産を中東に振り向けることはないという保証を、日本は米国に対して求めたと回答したという。
米戦略国際問題研究所(CSIS)が先月まとめた報告書によると、即応態勢にある米海軍の艦船の約40%が中東周辺に配備されている。非営利組織の米国海軍協会が2日に明らかにしたところによると、こうした艦船には空母「エイブラハム・リンカーン」のほか、カリフォルニア、ハワイ、日本の太平洋沿岸港を拠点とする少なくとも6隻のミサイル駆逐艦が含まれる。アジアに配備されている唯一の米空母「ジョージ・ワシントン」は母港の横須賀基地(神奈川県横須賀市)で整備中だ。
元米国防省高官で、ハドソン研究所で海軍作戦を専門に研究するブライアン・クラーク氏は「米海軍は明らかに逼迫した状態だ」と指摘。中東での戦闘が長引けば、イラン情勢への対応強化のためにアジアでの米海軍の戦力を削減する可能性は現実的にあり得るとの見方を示した。「現在の艦隊規模では、全方面で安定的なプレゼンスを維持するには不十分だ」という。
イラン紛争により、米国は弾薬の備蓄も減少している。この点については専門家が以前から警鐘を鳴らしていた。米軍は防衛企業に生産拡大を要請しているが、実現には数年かかる可能性がある。
弾薬備蓄の減少は米国にとっても懸念材料だ。米当局者が匿名を条件に話したところによると、インド太平洋地域における弾薬備蓄の再構築が、中期的に中国が台湾に対して軍事行動を取ることを抑止するのに役立つためだ。
米シンクタンク戦略予算評価センターの上席研究員ヤン・ファントル氏によると、日本は既に米国に発注したトマホークミサイル数百発の納入遅延に直面しており、納入はさらに遅れかねないという。
<大戦略>
米国がインド太平洋を主要な「地政学的戦場」と位置づけ、台湾を巡る紛争の抑止を最優先課題とする新たな安全保障戦略を打ち出してから、まだ3カ月しか経っていない。以来、トランプ氏は大胆な軍事攻撃でベネズエラの指導者を拘束し、デンマーク自治領グリーンランドの併合をちらつかせ、イスラエルと組んでイランに対する空爆に乗り出した。
アジアの米同盟国は、トランプ氏がこうした行動を取ることで本来の優先課題への注意が甘くなっているのではないかと不安を募らせている。ただ、一部の専門家は、少なくとも現時点では、中国が喜ぶにはほど遠い状況だと指摘している。
ベネズエラとイランを攻撃したことで、トランプ氏は、中国に安価な原油を大量に供給し、経済を下支えしていた親中国家2つを弱体化させた。さらには、こうした一連の軍事行動自体、米国が中国封じ込めに専念できるようにするための大きな戦略の一部ではないか、と示唆する専門家もいる。
しかしトランプ氏の中東への関与が長引けば長引くほど、中国が利益を得始める可能性は高まる。
ある日本の与党議員は「中東のイランを封じ込め、中国に対する対応に資源を振り向けるというのが大戦略だと思うが、振り向けるだけの資源が残っているかどうかだ」と不安を隠さなかった。
オーストラリア海軍の元将校で、シドニーに拠点のあるシンクタンク、ローウィー研究所の非常勤研究員であるジェニファー・パーカー氏は、中国は過去にも米国が注意をそらされた局面を利用してきたと述べた。米国がアフガニスタン戦争を進めている間に南シナ海の島々を急速に軍事化したことを例に挙げ、「中国は注意深く見守るだろう」と付け加えた。
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2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。
Ben joined Reuters as a company news reporter in Shanghai in 2003 before moving to Beijing in 2005 to cover Chinese politics and diplomacy. In 2019 Ben was appointed the Taiwan bureau chief covering everything from elections and entertainment to semiconductors.
Praveen leads a team of reporters covering companies and financial news in Australia and New Zealand. Before moving to Sydney he was the New Zealand Bureau Chief, where he reported on the leadership of former Prime Minister Jacinda Ardern, the coronavirus pandemic, the terrorist attack in Christchurch and several natural disasters. Prior to New Zealand, he was Bureau Chief for Malaysia and Brunei leading a team of reporters covering the missing MH370 airliner, the 1MDB scandal and the country's political turmoil in 2018, which won him an journalism award from the Society of Publishers in Asia. He has previously worked as a correspondent in the UAE, Afghanistan and India.