DeepSeek巡るエヌビディア急落は「序章」-「ブラック・スワン」著者
ベストセラー「ブラック・スワン」の著者ナシーム・ニコラス・タレブ氏は、人工知能(AI)向け半導体大手エヌビディア株の27日の急落について、AI主導の株価上昇に盲目的に飛び乗った投資家がこれから直面する事態の「ほんの序章に過ぎない」と警告した。
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中国のスタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)が高性能AIモデル開発に成功したことを受け、エヌビディア株は27日に17%下落。時価総額は5890億ドル(約91兆円)減と、米企業1銘柄の1日当たりの減少額としては過去最大を記録した。タレブ氏は27日、マイアミで開催された「ヘッジファンド・ウイーク」の際にブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、今後の下落は同日にエヌビディアが記録した2、3倍の規模になる可能性があると語った。
タレブ氏は27日の一部ハイテク株の下落について、「現実を受け入れるための調整の始まりだ。ガラスはもはや無傷ではなく、小さなひびが入っていることが分かったためだ」と指摘した。
従来より低コストでAIモデルを開発したディープシークの登場により、27日の市場では米大手ハイテク企業がAI分野で優位性を確保できないとの懸念が突然広がり、売り浴びせにつながった。
エヌビディア急落は、同社の先進半導体に対する需要と信頼性の両方が脅かされると解釈されたためだ。タレブ氏はエヌビディアがAI分野で優位性を維持する限り、同社の株価は上昇し続けるとのシナリオに投資家は集中し過ぎていたと指摘。27日の株価下落は、業界のリスクを考慮すると「ごくわずかなもの」だったとも述べた。
タレブ氏は著書の中で、まれで予測不能な出来事が引き起こす極端な影響について探究している。予想外で市場に大きな影響を引き起こすブラックスワン的イベントに備えるファンドを運用する、ユニバーサ・インベストメンツのアドバイザーも務めている。その悲観的な予測により、ウォール街ではよく知られる人物だ。
タレブ氏は、AIの機能や成功の可能性について詳細を正しく理解しないまま、関連企業の株価をつり上げている投資家が多過ぎるとも指摘。1営業日に起こり得る株価の変動が過小評価されているとして、ハイテク企業を「グレースワン(灰色の白鳥)」と表現した。
原題:Black Swan’s Taleb Warns Nvidia Rout Is ‘Hint of What’s to Come’(抜粋)