世界の海運業界、米高関税政策で先行き不透明 コスト高や運賃下落も

3月3日、トランプ米大統領が世界貿易と地政学的な面に緊張をもたらす高関税政策を打ち出したことで、世界貿易の80%を担う国際海運業界は先行き不透明感に覆われている。米カリフォルニア州オークランドの港で2月撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)

[ロングビーチ(米カリフォルニア州) 3日 ロイター] - トランプ米大統領が世界貿易と地政学的な面に緊張をもたらす高関税政策を打ち出したことで、世界貿易の80%を担う国際海運業界は先行き不透明感に覆われている。

 こうした中、今週カリフォルニア州ロングビーチで開催されるS&Pグローバル(SPGI.N), opens new tab主催の「TPMコンテナ海運・サプライチェーン会議」に注目が集まる。毎年、この会議はコンテナ輸送契約交渉シーズンの幕開けを告げるイベントだ。

いずれの企業も保護主義の高まりに対応せざるを得ない。国際貿易は縮小しかねず、これまで大型コンテナ船所有者として大幅な利益を上げ、価格決定で優位に立っていたものの、今後は持ち前の交渉力が弱まる恐れがある。

ハパックロイドのロルフ・ハベン・ヤンセン最高経営責任者(CEO)は3日、記者団の取材に答え、「世界は極めて予測不可能な状況になった」と警戒感を隠さなかった。同CEOはさらに「高関税や料金割り増しは世界経済に好ましくない」と指摘し、海運業界の成長や、支えてくれる消費者に負担をかけてしまうと懸念を示した。

世界貿易はトランプ政権の高関税政策以前からサプライチェーン(供給網)問題を抱えていた。地球温暖化がもたらす異常気象に加え、中東パレスチナ自治区ガザでの武力衝突を背景にスエズ運河回避の航路選択により、海運コストの急増に直面している。そうした中で起きたのが、世界最大の輸入国である米国が自由貿易主義から保護主義に転換したことだ。

米国のコンテナ輸入は、プラスチック製おもちゃから機械部品に至るまで急増している。これは一部には、関税を回避するための先行購入が影響している。しかし、貿易の専門家は、米政府の高関税に対して相手国が報復関税を発動し、インフレに疲弊した消費者が関税によるコスト上昇の打撃を受けることで、輸入が落ち込む可能性が高いと警鐘を鳴らしている。これは輸送需要や運賃に圧力をかける要因となり得る。

英国の海洋事業調査会社ドリューリーの世界コンテナ指数(WCI)によると、40フィートコンテナのスポット運賃は2月27日時点で2629ドルとなり、新型コロナウイルスのパンデミック中の2021年9月に記録した高値1万0377ドルから75%下落し、24年5月以来の最低水準となった。

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Lisa Baertlein covers the movement of goods around the world, with emphasis on ocean transport and last-mile delivery. In her free time, you'll find her sailing, painting or exploring state and national parks.

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