「衝撃的」な英国館のアフタヌーンティー 改善のきっかけはSNS

大阪・関西万博の英国パビリオン=大阪市此花区で2025年4月9日午後3時52分、長澤凜太郎撮影

 大阪・関西万博の英国パビリオンで提供されているアフタヌーンティーセットを巡り、「衝撃的だった」という交流サイト(SNS)の投稿が拡散され、英国側がサービスの改善に乗り出す事態になった。投稿した女性に取材すると、思わぬ方向で話が展開した様子が明らかになった。

 発端となったのは、4月27日に万博会場を訪れた女性の投稿だった。大学生の息子から入場券をプレゼントされ、家族で英国パビリオンのレストランに入り、息子にアフタヌーンティーセットをごちそうしてもらうことになった。

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 ケーキとスコーン、サンドイッチに紅茶という1人5000円のセットが運ばれてきた。メニューにはスコーンは2個と書いてあったのに、1個しかなかった。女性らはスタッフに尋ね、1個追加してもらった。

投稿者の真意は

 この出来事について、女性は28日、X(ツイッター)に「一番衝撃的だったこと」として、写真付きで投稿した。

大阪・関西万博の英国パビリオンで提供されたアフタヌーンティーセットの写真=女性提供

 紅茶はポットではなく、ティーバッグを入れた紙コップで提供された。1杯では足りなかったので、お湯を足してもらったことも書いた。

 女性は「メニュー表記が実際の内容と違うことや、紅茶にお湯を足してもらえることを、他の人に伝えたかった。セットには満足したし、おいしかった」と、真意を明かした。

 紙コップでの提供は、紅茶好きの息子が顔色を少し変えたように見えたが、女性自身は、あまり問題だと思わなかったという。

 ところが、SNSで話題になったのは、紙コップでの提供のほうだった。

 英国パビリオンのキャロリン・デービッドソン代表が、すぐさま反応した。29日にSNSの自身のアカウントで「みなさまから寄せられる声を大切にし、より快適な時間を過ごしていただけるよう取り組んでいきます」と語る動画を投稿した。動画には、アフタヌーンティーセットを前に、ティーカップで紅茶を飲む姿が映っていた。

 これを見た女性は、デービッドソン代表のアカウントに、可能なら客にもティーカップで提供してほしいと丁寧にお願いした。すると、デービッドソン代表は5月1日、改めて動画を公開。既にサービスの一部を改善したと説明した。

紙コップで提供した理由

女性がXに投稿した内容

 現在は陶磁器のティーカップで紅茶を提供しているが、当初はなぜ紙コップを使ったのだろうか。

 在日英国大使館は取材に対し、レストランの厨房(ちゅうぼう)スペースが限られていたため、一時的に紙コップを使ったと説明した。現在はスペースの問題は解消したという。

 SNS上には、女性に対する中傷もみられた。女性は「私は文句が言いたいわけではなかった」と胸を痛めている。女性には在日英国大使館からも連絡があり、パビリオンでの茶会にも招待された。お互いに理解しあえたといい、女性は「当事者間では問題は解決しました」と話した。

英国文化の象徴

 デービッドソン代表も取材に対して「一部の食事の提供方法が、皆様のご期待に十分にお応えできなかったと認識しております。引き続き改善に努めてまいります。多くの方が英国のアフタヌーンティーを楽しみにしてくださっていたことを実感しています。英国文化を象徴する大切な伝統です。この伝統、そして英国らしさを、私たちはパビリオンを通じてご紹介したいと考えています」などとするコメントを出した。【矢追健介】

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