50年来の同級生からヘイトスピーチ 訴訟に踏み切った理由

東京地裁の前で勝訴と書かれた紙を広げる金正則さん(中央)=東京都千代田区の東京地裁前で2025年3月18日、後藤由耶撮影

 記念写真に納まる9人の高校生たち。再現した「縄文時代の住居」の前で白い歯を見せ、はにかむ顔が並ぶ。にぎやかな声が聞こえてきそうだ。

 写真は約50年前、福岡県立高校の文化祭での一コマだ。被写体の一人、現在70歳となった在日コリアンの金正則(きん・まさのり)さんは憤っている。

 「自分の一番大事な思い出を汚された感じがします」。今になって身近な人物から、ヘイトスピーチが繰り返されていたのだ。

【写真映像報道部・後藤由耶】

 ※被害の実相を伝えるため、差別表現をそのまま掲載する部分があります。

 2022年、金さんがツイッター(現在のX)を見ていると、「在日の金くん」という書き出しで在日コリアンへの差別をあおる投稿が目に留まった。

 アカウント名に見覚えがあった。

 高校時代の同級生の名前だった。前述の記念写真にはいないが、卒業後も同窓会で顔を合わせてきた50年来の付き合いだ。画面をスクロールしていくと、同様の差別投稿が次々と見つかった。

 「また、在日の犯罪だ」

 「またまたお仲間が犯罪です」

 「もう日本にたかるの止めなよ」

 時間が止まったような感覚にとらわれた。

 さらにさかのぼると、「金よ、元林よ」という文字が飛び込んできた。

 林は金さんが高校時代まで使っていた通称名の名字だった。

 その瞬間、自分に向けられた発信であると確信した。…

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