関税交渉で火花散らした閣僚の認識にズレ…「25%」で揺さぶるベッセント氏、「議論の記憶ない」と赤沢氏
「四半期ごとに評価し、大統領が不満を持つようなら、自動車を含む製品すべてに、25%の関税率をブーメランのように適用する」
日米関税交渉で統括役を務めたベッセント米財務長官は23日、米FOXニュースのインタビューで言い放った。日米関税交渉が合意に至り、トランプ米大統領の強硬姿勢が和らいだと 安堵(あんど) した日本政府や企業に衝撃が広がった。
22日、米ホワイトハウスがXで「日本との大規模な合意」として公開した画像ベッセント氏は「25%の関税率では、特に自動車において、日本経済は機能しなくなるだろう」とも語り、揺さぶりをかけた。
交渉を終えて帰国した赤沢経済再生相は羽田空港で記者団に「日米間の合意をどう実施していくのか、その実施の確保の仕方みたいな議論はした記憶がない」と述べた。交渉で火花を散らした閣僚同士の認識の食い違いは、両国の火種となりかねない。
「日本で米国の車は一台も見かけなかった。日本の車は米国中を走っている。どういうことなんだ」
トランプ氏は一貫して、日本の自動車産業を「不公平な貿易」の象徴とみなしてきた。自動車への追加関税をかけても日本車の輸出が減らなければ、米国のメーカーや製造業労働者の不満が高まりかねない。来年の中間選挙を見据え、有権者をつなぎとめるためにも、今後再び、日本に自動車関税の引き上げをちらつかせる可能性がある。
米国が打ち出す分野別の関税を巡り、日本政府が今後、米国との交渉を迫られる場面も予想される。
トランプ氏は7月8日、医薬品に200%の関税を課す考えを示した。米国は世界全体の医薬品売上高の4割強を占める最大の市場で、日本メーカーの売上高に占める比率も高い。米政府は半導体への追加関税も検討中だ。日本企業が強みを持つ半導体製造装置の対米輸出額は約5300億円に上り、日本経済への影響が膨らみかねない。
巨大市場を抱える有利な立場を利用して1対1のディール(取引)を仕掛けるトランプ流の交渉術について、日本貿易振興機構(ジェトロ)の石黒憲彦理事長は24日、「世界貿易機関(WTO)で当たり前だったルールが完全に無視されている」と嘆いた。経済官庁幹部は「一国では限界がある。欧州連合(EU)など同じ価値観を共有する国・地域との連携を深めなければならない」と指摘する。