原油と工業用金属が下落、トランプ氏がメキシコとカナダに関税計画で
21日の市場では、原油と工業用金属の価格が下落している。トランプ米大統領がメキシコとカナダからの輸入品に最大25%の関税を賦課する方針を示し、貿易戦争勃発への懸念が再燃した。投資家は安全資産を求め、金価格は値上がりしている。
世界的な貿易戦争が再燃するなら消費と成長へのリスクとなるため、コモディティー全般にとって弱材料だ。ただ、トランプ氏は対中関税計画の表明はせず、大豆やトウモロコシの市場は一定の安心感に包まれた。
サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は「関税の脅威は現実的なもので、経済成長を押し下げるリスクがある」と指摘した。
トランプ氏は2期目の政権をスタートさせた初日、メキシコとカナダからの輸入品に対する関税を2月1日までに導入する計画だと発表。この2国は米国にとって主要原油供給国でもある。トランプ氏はまた、米国内の石油・ガス生産を後押しし、価格低下を目指す考えも示唆した。
こうした発表を受けてドルが上昇する一方、ドル建てで価格が表示される多くのコモディティーは魅力が低下。北海ブレント原油は1バレル=79ドルを、銅はトン当たり9200ドルをそれぞれ割り込んだ。ロンドン金属取引所(LME)で取引される亜鉛、アルミニウム、鉛はいずれも下落率が1%を超えた。
「工業用金属の見通しにとって、最大のリスクは関税だ」とINGグループのコモディティーストラテジスト、エワ・マンティー氏は述べた。トランプ氏の関税が導入されれば、貿易の流れは混乱し、経済のボラティリティーは高まるだろうと付け加えた。
米国とその貿易相手国の間で関税の応酬となれば恩恵を受けそうな数少ないコモディティーの一つ、金のスポット価格は21日の取引で一時0.9%高と上昇。銀はトランプ氏発言後に急伸する場面もあったが、上げを消した。メキシコは銀の主要産出国だが、同国産の銀にトランプ氏の関税が適用されるかは明らかでない。
一方、シカゴ商品取引所の大豆先物は一時2.2%高、トウモロコシは1年ぶりの高値を付けた。世界最大の大豆輸入国で、トウモロコシと小麦の輸入量も世界有数の中国に対し、関税賦課の発表が今のところ見送られ、これらの穀物相場への影響が懸念されたほど大きくはない可能性があるとの楽観が浮上した。
原題:Commodities Retreat as Trump Pushes Ahead With Tariffs Threat(抜粋)