広陵高校の暴力問題報道で問われる朝日新聞の姿勢 「当然、SNSでの炎上は知っていて、取材するタイミングもあったはず」…それでも即座に報じなかった理由

「〈独自〉甲子園出場・広陵の暴力事案がXで拡散 高野連が厳重注意済み、学校は見解公表へ」(産経ニュース)  同校野球部内の暴力行為の情報は7月末から被害生徒の母親によるSNS投稿で広がっていたが、新聞で騒動の第一報を報じたのは8月5日昼の産経新聞ネット版だった。毎日、読売などもその日のうちに報じたのに対し、朝日は翌6日付朝刊で「日本高校野球連盟が声明」との短行記事を載せ、同日深夜に朝日新聞デジタルで「主催者としては大会出場の判断に変更はない」という大会本部のコメントを“大本営発表”的に伝えた。  しかし、騒動は収まらず、広陵が2回戦の出場辞退に追い込まれて、硬式野球部監督が退任したのは周知の通りだ。  高野連(日本高等学校野球連盟)とともに夏の甲子園を主催する朝日は、産経が報じるまで広陵の暴力行為を高野連が厳重注意していたことも、SNSでの拡散も知らなかったのだろうか。 「そんなはずはない」と朝日の現役記者は語る。

「うちにとって高校野球は重要な事業。高校球児の記事を読みたいから夏だけ朝日を購読する読者も少なくない。現場の記者にも他紙より手厚く取材している自負がある。地方大会の1回戦から取材を始めるし、代表校が決まると担当記者が同じホテルに宿泊し、食事中や休憩時間にも監督や選手を取材して関係を築く。当然、SNSでの炎上は知っていて、取材するタイミングもあったはず」  広陵は産経の取材に経緯を説明している。朝日が聞いても答えたはずだ。  問われるのは記者の姿勢だけではない。 「朝日の幹部も高野連とは大会を主催するために密接な情報交換を行なう。広陵の事案や処分の有無等の情報は聞いていたはず。経緯を知ったうえで、高野連が処分もして広陵の出場を決めたのなら報じる必要はないと判断したのではないか」(同前)  朝日は大会が閉幕を迎えてから、8月25日付朝刊で〈「暴力は何も生まない」改めて強調〉と高野連会長の閉会式での言葉を報じながら、〈威圧でなく、言葉でやりとりを〉などと論じているが、それで朝日はこの問題に真摯に向き合ったと言えるのだろうか。  * * *  関連記事【《検証》なぜ朝日新聞は広陵高校の暴力問題を即座に報じなかったのか?「主催者で取材者」という立場の矛盾、自社のキラーコンテンツである甲子園のイメージを損ないたくなかったか】では広陵高校で起きた暴力問題に対する朝日新聞の対応を検証すると共に朝日新聞がどうこれを受けとめているのかの回答について、詳しく報じている。 ※週刊ポスト2025年9月19・26日号

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