トランプ氏の夢「メイド・イン・USA」iPhone、現実の試練に直面

Mark Gurman

  • 米市場向けiPhoneの生産、アップルはインドを重視しつつある

アップルのスマートフォン「iPhone」が米国内で製造されるようになれば、トランプ大統領にとって大きな勝利となるだろう。国産iPhoneの流通は同氏の関税政策を正当化し、製造業の雇用を米国に戻すという公約を果たすことになるからだ。

  トランプ政権は明らかに「メイド・イン・USA」のiPhoneという目標を達成できると考えている。現在アップルの主要製造拠点となっている中国からの輸入品に145%の関税を課すことが、米国での生産を促すだろうとの期待がある。

  実際、アップルは今後4年間で米国内に5000億ドル(約71兆8000億円)を投資すると表明。ホワイトハウスのレビット報道官は今週、「もしアップルが米国では製造できないと考えているなら、あれほど巨額の投資を約束しなかっただろう」と記者団に語った。

  しかし、実際には厳しいものがある。生産に必要な施設や労働力の不足などさまざまな理由により、アップルが近い将来にiPhone生産を米国に移す可能性は低い。

  さらに、米国にはサプライヤーや製造・エンジニアリングのノウハウといった充実したエコシステム(生態系)が欠如している。これらは現在、アジアにしかない。

  アップルが重視しているのは、インドを米市場向けiPhoneの新たな製造拠点とすることだ。同社のパートナー企業は、世界2位の規模を誇るiPhone工場をインドに建設し、対中依存を小さくしようとしている。

  iPhoneの最終組み立てと検査、包装を指すFATPプロセスを担う最大施設は巨大で、中国で暮らさなければ理解するのも難しいだろう。ほとんど一つの町であり、数十万人の人口を抱え、学校やジム、医療施設、寮などがある。鄭州にある主要工場は「iPhoneシティー」と呼ばれている。

  元アップルの製造エンジニア、マシュー・ムーア氏は「米国で、今やっていることを全てやめてiPhoneだけを製造する都市が現れるだろうか。中国ではアップルのサプライチェーンに何百万人もの人が従事している」と指摘。

  例えば「人口は50万人余りのボストンがiPhone組み立てを始めるするには、何もかもやめて取り組む必要があるだろう」と語った。

  アップルの広報担当者はコメントを控えた。

原題:Trump’s Dream of Made-in-the-USA iPhones Faces Reality Test(抜粋)

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