人類史上最も高い現在の二酸化炭素濃度、人間の血液化学を変えつつある可能性
二酸化炭素の放出による気候汚染が我々の血液の化学的性質をも変化させている可能性があることがわかった/Westend61/Getty Images
(CNN) 人類が化石燃料を燃やし、大気中に二酸化炭素を放出することにより、地球は温暖化しているが、この気候汚染は我々の血液の化学的性質をも変化させている可能性がある。
オーストラリアの呼吸生理学者アレックス・ラーカム氏は、同僚とともに、20年以上にわたる米国の健康データを分析した。その結果、大気中の二酸化炭素の増加と歩調を合わせるかのように、人々の血液化学にも変化が生じていることが明らかになった。
人類は、二酸化炭素濃度が300ppm(ppmは100万分の1)前後で安定した大気の中で進化してきた。しかし、化石燃料の燃焼により、その濃度は現在では420ppmを超え、人類史上かつてない水準にまで急上昇している。
大気中の二酸化炭素が増えれば、人間はそれをより多く吸い込まざるを得ず、その結果、血液の酸性度は高まる。しかし、体にはこれを緩和する仕組みが備わっている。例えば、腎臓には血液の酸性度を調整する上で重要な役割を果たす重炭酸塩をより多く生成・保持する働きがある。
ラーカム氏らの研究によると、血中の平均的な重炭酸塩濃度は1999年以降7%上昇しており、同期間の大気中二酸化炭素の増加と密接に連動している。研究の内容は先ごろ、エアクオリティー・アトモスフィア・アンド・ヘルス誌に掲載された。
この傾向が続くと、人間の血液中の重炭酸塩は今後50年以内に「不健康な水準」に達する恐れがあると同研究は結論づけている。
またラーカム氏らは、カルシウムとリンの濃度にも着目した。血液がやや酸性に傾いた際、体はその対処法の一つとして骨が過剰な二酸化炭素の一部を吸収し、それを炭酸カルシウムやリン酸カルシウムとして骨内に固定する。腎臓がカルシウムを保持する効率が低下することもある。
その結果、血中のカルシウムとリンの濃度は、時間の経過とともに徐々に低下していく可能性がある。今回の研究でもその傾向が確認され、同期間に血中カルシウム濃度は2%、リン濃度は約7%低下していた。
仮にこの低下傾向が続けば、今世紀末までにカルシウムとリンの濃度は健康的な水準を下回る可能性がある。同研究は、これらを「人間の血液化学における恒常的かつ進行中の変化」だと指摘している。
ただ、今回の研究で示された証拠は、大気中の二酸化炭素の増加と血液化学の変化との関連性を示唆しているが、同研究では、食事や服用している薬、腎機能、肥満率、さらに二酸化炭素濃度が高くなりがちな室内で過ごす時間の長さといった、他の潜在的な影響要因が考慮されていない。そのため、研究論文の著者らは、その関連性を確認するにはさらなる研究が必要だと指摘している。
また血液化学の変化が、人間に具体的にどのような影響を及ぼすのかという点も重要だ。
一部の研究では、最悪の地球温暖化シナリオ下であっても、呼吸量や重炭酸塩の産生量を増やすことにより、人体は悪影響を受けることなく、二酸化炭素の増加に対応できる可能性が示されている。
しかし、ラーカム氏は、この見方は生涯にわたる長期的な暴露(ばくろ)の影響を考慮していないと指摘する。また同研究によると、動物を対象とした研究では、神経の損傷や心拍数の変化といった測定可能な影響が確認されているという。
さらに人間においても、通常、室内で見られる程度の二酸化炭素濃度への短期的な暴露と、認知能力や意思決定能力の低下との関連が示されている。