マクロン仏大統領、再び台湾を巡る論争の渦中に-3日から訪中

フランスのマクロン大統領が再び台湾を巡る論争のただ中にいる。マクロン氏は3日から3日間にわたり中国を訪れるが、2年半前の訪中時に台湾支援へのコミットメントに上限があるかのように受け取られた発言をし、批判を浴びていた。

  台湾を巡り日本への反発を最近強めている中国は、国連安全保障理事会の常任理事国であるフランスに中国の主張を支持するよう働きかけている。

  日本の高市早苗首相が先月の国会で、台湾有事の可能性に問われ、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると考える」と答弁

  これに対し、中国の王毅外相は11月27日、ボンヌ仏大統領外交顧問との電話会談で、中仏両国は互いに支えあい、高市氏の「挑発的な発言」を非難する必要があると述べた。仏大統領府のある高官は同日、現状維持の尊重と緊張緩和を呼びかけた。 

  マクロン氏による2023年4月の前回訪中時も台湾が主な論点となった。同氏は帰路の機内で記者団に、欧州各国は台湾政府支援を巡る米国の政策にやみくもに追随すべきではないと述べた。

  この発言は欧州で広く批判され、習氏への外交的な追い風になったとの見方も生んだ。

2つの問題

  高市氏の国会答弁は、中国にとって2つの問題をはらんでいる。第一に、台湾の将来が国際問題になり得ることを示しており、このことは台湾は内政問題だと主張する中国の言う「一つの中国」原則と相いれない。

  さらに、高市氏の発言は、仮に台湾に対する武力行使があれば、日本が自衛隊を投入する法的根拠を持ち得るほど深刻な事態になり得ることを示唆している。

  中国との緊張にどう向き合うかは、習近平国家主席との会談を控えるマクロン氏にとって、これまでにも経験した課題だ。 

  マクロン氏は昨年、中国製電気自動車(EV)に関税を課すよう欧州連合(EU)に働きかけた。中国はこれに対し、フランス産コニャックに反ダンピング(不当廉売)措置に基づく最低価格要件を課す報復で応じた。

  その後、マクロン氏は中国によるレアアース(希土類)供給制限に対応するため、最も厳しい通商手段を発動するようEUに促しており、フランスの豚肉や乳製品の生産農家は、中国による報復の標的になるのではないかと懸念している。

中仏首脳の関係

  中国共産党系の新聞、環球時報は12月1日、専門家の見方として、フランスおよび欧州との経済関係強化が今回のマクロン氏訪中の主要議題になり得ると報じた。

  マクロン氏は中国の過剰生産や輸出依存が貿易摩擦を招いていると指摘しており、フランスにとっては、いわゆる世界的な不均衡への対処が主要目標となる。

  さらに重要なのは、ウクライナでの戦争の終結に向け、ロシアのプーチン大統領に影響力を行使するよう習氏に促す働きかけだ。

  ロシアによる22年のウクライナ全面侵攻以降、マクロン氏は習氏と定期的に連絡を取ってきたものの、中国によるロシア向けデュアルユース(軍民両用)物資輸出を止めることには成功していない。

  中国外相の王氏は1日にモスクワを訪問し、習氏は抗日戦争の勝利から80年を記念する9月の式典にプーチン氏を招いている。重要鉱物も議題に上る可能性がある。ボンヌ氏は先週、王氏との電話協議でこの問題を提起した。

  マクロン氏は今回、習氏と議論を重ねる時間を十分に確保する見通しだ。

  仏大統領府によれば、北京での4日の正式会談後、マクロン、習両氏は四川省の省都、成都に向かう予定。習氏が首都以外の都市で外国首脳と会うのは異例で、両者の密接な関係を示している。

  マクロン氏は23年には広東省広州も習氏と共に訪れていた。 

  中国外務省によると、マクロン氏は習氏に加え、李強首相や全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の趙楽際委員長らとも会談する見通し。

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原題:Xi Courts Macron in Diplomatic Effort to Isolate Japan’s Premier (抜粋)

— 取材協力 Dan Murtaugh and Samy Adghirni

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