ただのスコアレスドローでは終わらせない。 春を迎えた日産スタジアムに萌え芽を見つけた [J9節 ヴェルディ戦レビュー]

植中朝日がうなだれた一方で

アンデルソン・ロペスを腹痛による体調不良、ヤン・マテウスを太もも裏の違和感で欠いたマリノスは、前線を純国産の布陣にして臨んだ。これは昨年5月6日以来、約11ヵ月ぶりの出来事である。

その浦和レッズ戦はロペスが累積による出場停止で、ヤンもエウベルもスタメンにいなかった。そこからさらに遡ると、次に純国産布陣で構成したのはケヴィン・マスカット監督時代の話になる。どれだけレアケースなことかがわかるだろう。

結論から言うと、目に見える結果は残せなかった。ゴールネットを一度も揺らせず、それどころか決定機すらほぼなかった。最前線に入った植中朝日はうなだれて言った。

「少ないチャンスを決め切る、その一発を決め切る気持ちだった。でも結果的に今日もシュート0本だったので、FWでシュート0本だったチームは0点だろうなという感じ。今年は試合に長く出してもらっているぶん、自分がチームを変えたいという想いも持っている。今シーズンで一番くらいメンタル的にきているというか、責任を感じている。ロペスやヤンとかいつも当たり前に主力として出ていた選手がいない時に何ができるか。自分たちでも『あいつらがいないとダメだなと思わせないように』と話し合っていたので、結局変わらなかったことになってしまったのが悔しい」

一方で、植中を起点とする前線からのプレスや井上健太をキーマンにしたロングフィードの狙いなど、この組み合わせだからこそのプレーも随所に見られた。開始3分に放った天野純の直接FKも惜しかった。フレッシュな面々だからこそ見せられたパフォーマンスがあったのだから、勝てなかったからといってすべてを否定する必要はない。

スティーブ・ホーランド監督は次節の川崎フロンターレ戦に向けて「ロペスにしてもヤンにしても、この2人が帰ってくることで攻撃力が上がる。次の水曜日の試合には準備できるんじゃないかと思う」と見通しを語った。ヴェルディ戦のメンバー構成で戦う試合はしばらくないかもしれないが、ほんの少しの手応えをポジティブに温めておきたい。

諏訪間幸成と松村晃助

スコアレスドローに終わった一戦に光明を見出すとすれば、マリノスの未来を明るく照らす若者たちのお披露目であろう。

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