ドイツ緑の党、国防費巡り週内合意の可能性示唆-ユーロ相場上昇
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- 「交渉の用意は言うまでもない。必要性は明らか」-ブレントナー氏
- メルツ氏案は範囲が狭過ぎ、他用途への支出余地が大き過ぎると批判
ドイツの環境政党・緑の党(90年連合・緑の党)のブラントナー共同党首は11日、2月の連邦議会(下院)選で最大勢力となった中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)陣営との間で、防衛費増額の措置を巡り交渉の用意があり、週内の合意を期待していると語った。
ブラントナー共同党首はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「交渉の用意があるのは言うまでもない。ウクライナの状況は切迫しており、欧州の防衛支出を加速させることが必要なのは明らかだ」と発言した。
ブラントナー氏のコメントにより、財政支出増が欧州の成長を後押しするという期待が高まり、ユーロの対ドル相場は上昇。ドイツ国債は下落した。
10年物ドイツ国債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.88%と6日以来の高水準となった。2年物利回りは1bp上昇とより小幅な上昇にとどまった。ユーロは一時0.8%高の1ユーロ=1.0921ドル。
行き詰まりを打開するための協議がベルリンで10日夜遅くに始まり、緑の党は防衛費支出により厳格なルールを要求した。同党が対案を出したことは、ドイツの次期首相就任が見込まれるメルツ氏との間で、数千億ユーロ規模の支出計画について合意が成立する可能性を示唆している。
メルツ氏が率いるCDU・CSUと社会民主党(SPD)は、防衛費の増額と5000億ユーロ(約80兆2000億円)のインフラ基金の創設に焦点を当てた大規模な財政改革案を提示した。しかし緑の党は10日、現行の形での提案を拒否し、選挙公約を実現する財源を確保する試みだと批判した。
巨額の借り入れを含む財政改革には憲法改正が必要で、そのためには議会で3分の2の賛成が必要。CDU・CSUは緑の党を次期政権の連立相手と見なしていないが、憲法改正のためには同党の支持が不可欠だ。
メルツ氏は、3月25日に新連邦議会が招集される前に、財政パッケージを上下両院で可決することを目指しており、緑の党との交渉の時間はほとんどない。
新議会が発足すれば、議席を増やす極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」や反資本主義の「左派党」が反対しているため、3分の2の賛成確保ははるかに困難になる。
ブラントナー氏は、メルツ氏の防衛予算案は非常に狭い範囲に限定され、、インテリジェンスやウクライナ支援の支出が含まれていないだけでなく、政府が他のプロジェクトに支出を回せる余地が大き過ぎると批判。「政府支出に白紙委任状と自由裁量を与えるつもりはない」と述べた。
CDU・CSU陣営とSPDは、国内総生産(GDP)比1%を超える防衛支出について、借り入れを制限する財政ルールの対象から外すことで合意した。
緑の党は債務規則の適用除外となる防衛支出の基準をGDPの1.5%に引き上げることを提案した。
現政権の経済副大臣で、昨年11月に緑の党の共同党首に選出されたブラントナー氏は「容易な交渉はない」と述べつつ、「われわれは建設的かつ真剣な姿勢を維持する。ドイツのために、必要なことをする用意はある」と続けた。
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原題:German Greens See Chance for Defense Spending Deal This Week (2)、German Greens See Chance for Defense Spending Deal This Week、Euro Climbs After German Greens’ Comments on Defense Spending(抜粋)