プーチンが警戒する「太平洋の脅威」、極東のロシア潜水艦に対ドローン網(ニューズウィーク日本版)
NATOは太平洋地域に新たな兵器を配備しており、この地域でも「ロシアへの脅威」となっている──ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月12日、こう述べた。 プーチンが「同盟国」だと思っていた国からの厳しい諫言に、目を閉じうなだれる様子を捉えた動画 国営メディアが伝えた発言によると、プーチンは「残念ながら、この地域でも紛争の可能性が高まっている」と述べた。 プーチンが具体的にどの兵器システムを指していたのかは明らかではない。ただ、NATOの中心的な存在であるアメリカは、中国の軍事力増強を受けて、インド太平洋地域への関与を強めている。 アメリカは3月下旬、空対空ミサイルや精密誘導兵器など多様な兵器を運用できるF35A戦闘機を、青森県の三沢基地に初めて恒久配備した。三沢基地は本州北部に位置し、その北には北海道を挟んでロシア極東のサハリンがある。 また5月には、アメリカ軍がフィリピンで地上発射型ミサイルシステム「タイフォン」から長距離巡航ミサイル「トマホーク」を試射した。「中距離能力(MRC)」とも称されるタイフォンは、射程約1600キロの巡航ミサイル「トマホーク」のほか、より射程の短いアメリカのミサイル「SM6」を発射できる。 ほかのNATO加盟国も今年、太平洋地域に艦船や航空機、部隊をローテーション派遣している。イタリアは5月上旬、防空能力を備えた多目的戦闘艦をインド太平洋地域に派遣した。 NATO加盟国を含む30カ国は、6月下旬から7月末にかけてハワイ周辺で行われた環太平洋合同演習(RIMPAC)にも参加した。 トランプ大統領とその政権がアメリカの伝統的なパートナーに敵対的な姿勢を示し、多くの同盟国が動揺する一方、北朝鮮の核・ミサイル開発の拡大やロシアとの関係深化を受け、日本や韓国などはアメリカとの緊密な関係を維持しながら、国防費を大幅に増やしている。
プーチンは12日、「わが国にとっても脅威となる新たな兵器システムが太平洋地域に配備されており、さらなる配備も計画されている」と述べた。 NATOの報道官は本誌に対し、NATOは防衛を目的とする同盟であり、ロシアに対しては「何の脅威ももたらしていない」と述べた。 プーチンは12日、日本のすぐ北に位置するサハリン島を訪れ、最大都市ユジノサハリンスク近郊でロシア太平洋艦隊の演習を視察した。翌13日には北方領土の択捉島を訪問した。プーチンが北方領土を訪れるのは初めてだ。 その前週には、ロシアが極東カムチャツカ半島にある太平洋艦隊の主要拠点、ルイバチー潜水艦基地に新たな対ドローン用ネットを設置していたことが明らかになった。ルイバチーはロシアの海洋核戦力を支える重要拠点でもあり、核弾頭を搭載可能な弾道ミサイルを運用する原子力潜水艦などが配備されている。 ビジネス・インサイダーによると、ロシアは5月以降、この基地でネットをかぶせて防護する潜水艦を増やした。5月の衛星画像では、2隻の潜水艦がドローン攻撃を防ぐためのネットで覆われていることが確認されていた。 ウクライナから約7400キロ離れているため、ウクライナ軍がクリミア半島や、ロシア南部の黒海沿岸にあるノボロシースクの海軍基地に対して実施してきたようなドローン攻撃を仕掛ける可能性は低い。 今回の措置は、ロシア当局が、戦略的価値の高い最新鋭潜水艦が2025年6月のウクライナによる「スパイダーウェブ(クモの巣)作戦」のような攻撃にさらされる可能性を懸念していることを示している。ウクライナ軍はロシア奥地の飛行場付近に事前にドローンを持ち込み、遠隔操作で攻撃した。ロシア軍機41機を損傷させたとしている。作戦の準備には18カ月を要した。