音楽サブスクにお金払い続けますか? 中古iPodの人気がグングン上昇中の理由

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レコードやカセットテープをはじめ、Bluetoothイヤホン花盛りの昨今、バッテリー持ちとは無縁で音質も良い有線イヤホンの魅力も再発見されています

ノスタルジックなオーディオは一過性のブームか、それとも回帰するのか…そんな消費者たちの心は、かつて大流行したガジェットに向けられているようです。

そう、iPod。

クリックホイール、イヤフォンジャック、懐かしいシルエット。2022年に正式に生産終了になりましたが、2026年になって状況が変わってきました。

世界はiPodを求め始めている?

eBayなどのフリマサイトでは中古iPodの出品が急増しており、リファービッシュ(整備済み品)を扱うBack Marketによると、2024年に比べて、中古iPodの販売台数は48%増加したそうです。

数字だけじゃありません。SNS上ではAirPods MaxにiPodを有線でくっつけてみたり、スマホでクリックホイールを再現するアプリが話題になったり

元Appleエンジニア2人が開発中のAIガジェットは、iPod Shuffleからデザインのインスピレーションを得たそう

DAP(デジタルオーディオプレーヤー)がカテゴリーとして確立されつつあるのを見ても、なんだかiPodの"面影"がそこかしこに漂っている感じがします。

ノスタルジアだけじゃない「所有」への渇望

Image: Alena Veasey/Shutterstock

テキサス州オースティンに拠点を置く調査・アドバイザリー企業「Moor Insights & Strategy」で、テック系アナリストを務めるアンシェル・サグ氏によれば、iPodへの関心が再燃した背景として、まず有線イヤフォンであるEarPodsの復活ブームを挙げています。安価で、中価格帯のワイヤレスイヤフォンより音質が高い場合も多いからです。

そして、レコードやCDの再評価という流れもあります。音楽ストリーミングサービスが主流になったことで「音楽を所有する」という感覚が、いつのまにか失われていたことに、多くの人が気づき始めているのかもしれません。

さらにもう一つの大事な観点として、それら音楽ストリーミングサービスのサブスクリプション料金がお財布に負担をかけている実情もあります。Spotifyは今年1月にまた値上げをして、アメリカでは月額13ドルに到達しました。

2023年に9.99米ドルから10.99米ドルへ、2024年に10.99米ドルから11.99米ドルと、じわじわと、しかし確実に上がり続けています。日本でも2025年8月に値上げが実施され、個人向け「Standard」プランが100円アップの1,080円に。この波はいつ訪れても不思議ではありません。

音楽だけじゃなく、映像も読書もゲームも、あらゆるコンテンツがサブスクリプション化した時代。「気づいたら毎月いくら払ってるんだっけ?」という感覚、ありますよね。

サグ氏は「価格が上がるたびに、人々は自分が契約しているストリーミングサービスを意識するようになる。音楽もその例外ではない」と話しています。

さらには、「アーティストがサブスクから得る取り分が少なすぎると感じ、アーティストから楽曲を直接買ってiPodに入れたい」という若い世代の声もあるとのこと。好きなアーティストがより音楽を続けていけるように、という応援の意味も込めた選択でもあるわけです。

スマホから「逃げたい」という気持ち

そしてもう一つ、これがおそらく最もリアルな動機でしょう。それは「スマートフォンを手放したい」

「どこにいても高音質で音楽が楽しめて、ストリーミング接続に縛られず、自分が体験をコントロールできる。だからiPodが戻ってきているんだと思う」とサグ氏は語ります。

通知、SNS、メール、ニュース。スマートフォンを開くたびに、何かが飛び込んでくる。音楽を聴こうとしただけなのに、いつの間にかインスタを眺めている……なんてこと、ありませんか。iPodにはそれがない。音楽だけがある。

この点、実ギズモードでも以前に取り上げた話があります。iPodの生みの親、トニー・ファデル氏が「AppleはiPodを復活させるべきだ」と主張したことです(iPodの発案者「AppleはiPodを復活させるべき。理由は2つあるよ」)。

ファデル氏が挙げた理由のひとつが、まさにこの「純粋さ」の問題でした。音楽を愛する多くの人たちは、通知もSNSも届かない音楽だけの空間、「純粋な体験」を求めているのではないかと指摘。

ファデルはさらに、ソニーがテレビ事業を縮小しながらレコードプレーヤーを新たに2機種投入したことを引き合いに出して、こう言いました。「ソニーはターンテーブルを復活させた。これが何を意味するかわかるだろう?」と。

「パーフェクトストーム」の先に何がある?

サグ氏はこれらを踏まえたiPodブームを「パーフェクト・ストーム」と表現しています。ひとつの理由で説明できるものではなく、さまざまな要因が重なった結果だという見方です。

Z世代を中心とした2000年代カルチャーへの憧れ、サブスク疲れ、「所有」の再評価、スマホ依存への反動……それらがいっぺんに押し寄せている。

ファデル氏は具体的なアイデアとして「iPod機能を内蔵したAirPodsを作る」というビジョンを語っていました。AirPodsに音楽ストレージを持たせ、スマホなしでも曲を聴けるようにする。シンプルだけど、それがいちばん「iPodの精神」を継ぐ形かもしれません。

Appleが実際にこの声に応えるかどうかは、まだわかりません。正式にiPodが再登場する可能性は現時点では低いと見られていますが、市場はこれだけはっきりとしたシグナルを送り続けています。

あのクリックホイールを回す感触が、また欲しいです。切実に。

Source: Gizmodo USAP

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