日系EVに中国の技術…トヨタはファーウェイのOS採用、ホンダはディープシークAIを導入

 【北京=照沼亮介、上海=田村美穂】開幕中の上海モーターショーで、日系メーカーが中国の最先端技術を取り入れる戦略を打ち出している。電気自動車(EV)への移行が急速に進む中国市場で、劣勢をはね返したい考えだ。

トヨタが発表した新型EV「bZ7」。ファーウェイのOSを搭載する(24日、上海で)=大原一郎撮影

 トヨタ自動車は23日、新型EV「bZ7」に中国・華為技術(ファーウェイ)の基本ソフト(OS)を採用することを発表した。1年以内の発売に向け、開発を進めている。中国向け車種のチーフエンジニアを、若手中国人から採用する方針も明らかにした。

 現地法人総経理・ 李暉(リーフイ) 氏は、「中国人が真に求める車を届けるには、中国人の頭脳と腕で開発を進めることが不可欠だ」と強調した。

 中国での2024年新車販売数はトヨタは前年比6・9%減、日産自動車は12・2%減、ホンダは30・9%減と軒並み落ち込んだ。中国の全国乗用車市場情報連合会によると、日系メーカーの中国市場シェア(市場占有率)は20年の24・1%から、24年には13・7%に低下した。BYDなど大手から新興企業がしのぎを削る中国市場で、EVやプラグインハイブリッド(PHV)など新エネルギー車人気への対応遅れや、景気悪化による節約志向が背景にある。

 「日本車はまだ新エネ車に本気を出していない感じを受ける。革新性に欠けている」。日本勢の展示を見学していた上海市の自営業男性(24)が厳しく指摘する。

 世界最大の販売台数を誇る中国市場での挽回のため、トヨタなど日本勢が打ち出しているのが、現地の人材や技術の取り込みだ。

 ホンダは、中国の新興企業・ディープシークの人工知能(AI)を中国向け車種に導入すると発表した。別の新興企業とも運転支援技術を共同開発する方針も発表。中国都市部での激しい渋滞に対応できるシステムを構築するという。

日産が発表したPHVのピックアップトラック「フロンティアプロ」(23日、上海で)=大原一郎撮影

 日産は、26年末までに中国での研究開発に100億元(約2000億円)を追加投資することを発表。合弁会社・東風日産の関口勲・総経理は報道陣に対し「大きく新エネ車シフトする中国市場で戦い方を再定義した」とし、現地での開発スピードを加速させる考えだ。

 PHVへの対応もカギになりそうだ。中国自動車工業協会によると、24年のPHVの新車販売台数(輸出含む)は前年比83%増の514万台。15%増で771万台だったEVを伸び率で上回った。都市部でのEV普及が一巡し、地方都市ではガソリンでも走れて航続距離の不安が小さいPHVが好まれているとみられる。

 日産は、同社初のPHVとしてピックアップトラック「フロンティアプロ」を年内に中国で発売する。マツダは、新車種「EZ―60」をEVとPHVの2種類で展開すると発表した。

 日本勢幹部は、「中国は世界で最も大きい電動化と知能化の最先端市場。この市場で要求に応えるために、中国企業との協業に力を入れるのは重要なことだ」と話す。

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