米ハイテク大手の決算、楽観と警戒が交錯-予想下回れば売り加速へ
米大手ハイテク企業が前回決算を発表したのはトランプ大統領の就任直後であり、成長促進型の政策に対する期待を背景に株式市場は上昇基調にあった。当時、投資家の主な関心事は、人工知能(AI)関連投資がどの程度の期間を経て収益に結びつくかだった。
それから3カ月で様相は一変した。投資家は現在、はるかに暗い状況に直面している。
米中貿易戦争の行方に市場関係者が神経を尖らせる中、今週はマイクロソフト、アップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムがそれぞれ決算発表を予定している。AIを巡る懸念は、関税による景気後退(リセッション)への不安でかき消された格好だ。動揺した投資家は割安感が生まれた株式を買う余裕もなく、安全資産である金への資金逃避を急いでいる。
一方でアナリストは、不透明感が高まる中でも大手ハイテク企業の業績予想をあまり変えていない。上記4社にアルファベット、テスラ、エヌビディアを加えた「マグニフィセント・セブン」については、2025年に平均15%の増益が見込まれている。貿易摩擦の激化にもかかわらず、この予測値は3月以降ほとんど変化していない。
それだけに、S&P500種株価指数で約2割の構成比率を占めるハイテク4社による今週の決算発表は一段と重みを増している。投資家心理が冷え込む環境下では、業績の下振れに対する市場の許容度は低いとみられるからだ。特に、これら巨大企業が厳しい見通しを示せば、特に企業の支出減速懸念を強める場合、市場の失望は避けられないだろう。
オサイック・ウェルスの主任市場ストラテジストのフィル・ブランカート氏は「関税を巡る懸念があるため、予想を少しでも下回れば売りが強まるだろう」と語った。同氏は大型ハイテク銘柄の今年の弱含みは買いの好機とみている。
先週にはハイテク大手の動向を占う初期の材料が示された。テスラはここ数年で最悪の四半期決算となったが、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が政府関連業務から手を引き、同社の経営に専念する意向を示したことを市場は好感した。グーグルの親会社アルファベットの1-3月(第1四半期)決算は売上高と利益がアナリスト予想を上回ったが、今後の見通しはほとんど示さなかった。ブルームバーグのマグニフィセント7指数は先週、市場全体が反発する中で9.1%上昇。それでも年初来では15%安となっている。
利益と設備投資
30日に予定されているメタとマイクロソフトの決算発表で、投資家はさらなる手掛かりを得られるだろう。
多くの経営者は関税が業績に与える影響について明言を避けているが、ウォール街は独自の予測を進めている。ブルームバーグ・インテリジェンスのチーフ株式ストラテジスト、ジーナ・マーティン・アダムス氏は、平均実効関税率22%(ブルームバーグ・エコノミクスが推計)に基づくと、粗利益率の低下によってS&P500種構成企業の25年純利益は7%減少する見通しだと分析する。現在の市場予想コンセンサスである約12%増益からはかなり大きな下振れだ。
もう一つの注目すべきポイントは設備投資だ。マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタの4社は合計で約3000億ドルの設備投資を計画している。この水準を維持する方針が示されているものの、マイクロソフトが一部データセンターの建設を突然停止したことで、クラウド事業者による投資計画の見直し観測が浮上している。
サプライチェーンを中国に大きく依存しているアップルは、関税による価格上昇を避けたい消費者による駆け込み需要の恩恵を受ける可能性がある。ただし、こうした追い風は一時的なものであり、将来的には関税が需要を押し下げるとの見方が強い。アマゾンも通販や広告事業で関税リスクに直面しているが、利益率の高いウェブサービス事業が業績を支える可能性があると、ジェフリーズのアナリスト、ブレント・シル氏は指摘している。
もっとも、マクロ経済の不透明感が高まる中で、経営陣が自信を持って業績見通しを示せると期待する向きは少ない。実際にアメリカン航空グループなどは通期の業績見通しを撤回している。
IONマクロ・マネジメントの創業者マイケル・シャウル氏は、今後数四半期の業績見通しについて経営陣が市場を納得させるのは難しいと指摘。「経験豊富な経営者ほど、最初から見通しを示そうとはしないだろう」と述べた。
貿易戦争緩和の兆しが出れば、押し目買いを狙う投資家にとって「マグニフィセント・セブン」の魅力が高まる可能性はある。実際、先週にはトランプ氏が対中関税の大幅引き下げを示唆したことで株式相場が上昇する場面もあった。
しかし、トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者(CIO)は、重要なのは株価収益率(PER)の分母、つまり利益の部分だと指摘する。
「現在のバリュエーションは以前より魅力的になってきたが、まだ本格的な買いには踏み切れていない。利益見通しには不確定要素が多い」と語った。
原題:Big Tech’s Earnings Problem Is Estimates May Be Way Too High(抜粋)