「OpenAIが汎用人工知能(AGI)に到達したらMicrosoftのアクセスを制限できる」という契約の条項を巡り両社の意見が対立
MicrosoftはAI開発企業のOpenAIに巨額の投資を行って長期的なパートナーシップを結んでいますが、両社の契約には「OpenAIのAIシステムが汎用(はんよう)人工知能(AGI)に達した場合、Microsoftによる最先端モデルへのアクセスを制限できる」という条項が含まれています。この条項を巡り、OpenAIとMicrosoftの対立が深まっていると報じられています。
OpenAI, Microsoft Rift Hinges on How Smart AI Can Get - WSJ
https://www.wsj.com/tech/ai/openai-microsoft-rift-hinges-on-how-smart-ai-can-get-82566509Satya Nadella on AI progress: What Microsoft CEO revealed in a talk https://www.digit.in/features/general/satya-nadella-on-ai-progress-what-microsoft-ceo-revealed-in-a-talk.html
OpenAI CEO Altman says he spoke with Microsoft CEO about future partnership, NYT reports | Reuters
https://www.reuters.com/technology/openai-ceo-altman-says-he-has-spoken-with-microsoft-ceo-nadella-nyt-reports-2025-06-25/ 長らくMicrosoftはOpenAIに対する最大の出資者として、大きな影響力を維持してきました。記事作成時点のMicrosoftは、OpenAIの営利部門の株式のうち約49%を保有しており、OpenAIのAPIをMicrosoft Azure経由で独占的に販売しているほか、OpenAIの知的財産へのアクセスも許可されています。ところが、近年はOpenAIが非営利法人による管理を脱して営利企業化しようと試みるなど、その体制に揺らぎが生じつつあります。OpenAIの営利企業化は多数の反発を受け、2025年には計画を断念して非営利法人による管理が続くことが発表されました。しかし、OpenAIとMicrosoftの間では、「仮にOpenAIが新規株式公開(IPO)を実施した場合にMicrosoftがどれだけの利益を得られるか」といった内容での交渉が行われていることが報じられています。
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MicrosoftとOpenAIの間では厳しい交渉が続けられており、MicrosoftはOpenAIが新たな営利企業を設立した場合、株式の約35%を取得する意向を示しているとのこと。両社の争点のひとつが、「OpenAIのAIシステムがAGIに達した場合、Microsoftによる最先端モデルへのアクセスを制限できる」という契約の条項です。仮にOpenAIが「AGIに達した」と宣言した場合、Microsoftは影響力を大きくそがれる結果になります。 多くの専門家はAGIについて、「人間のような汎用的な知能を持ってさまざまな状況に適応できるAI」と定義しています。経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルは、MicrosoftとOpenAIはこの問題を巡って意見が対立していると報じました。 事情に詳しい関係者によると、サム・アルトマンCEOを含むOpenAIの幹部らは、自社のAIツールがAGIレベルに達したと宣言できる段階に近づいていると考えているとのこと。OpenAIはAGIを「最も経済的に価値のある仕事で人間を上回る、高度に自律的なシステム」であると定義しています。
一方、Microsoftのサティア・ナデラCEOはAGIに対して懐疑的な姿勢を見せています。2月にはポッドキャストで「私たちが自ら主張するAGIの重要なマイルストーンは、単なる意味のないベンチマークハッキングに過ぎません」とコメント。6月にサンフランシスコで開催されたAI Startup Schoolでインタビューを受けた際にも、AIやAGIは現実的な利益をもたらすことによって評価されるべきだと主張し、ベンチマークのみで評価することに否定的な見解を示しています。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、「Microsoftは最近の交渉の一環として、契約からこの条項を完全に削除するか、AGIが宣言された後もOpenAIの知的財産への独占的なアクセスを確保することを目指しています」と報じました。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、OpenAIの幹部らが「高度な人間のプログラマーの能力を超えるAIコーディングエージェント」を通じて、AGIを宣言する可能性について議論したとのこと。 MicrosoftとOpenAIの契約では、OpenAIの取締役会は誠意を持ってAGIを宣言することが認められています。しかし、この宣言に不満を持ったMicrosoftが「OpenAIの取締役会が悪意を持ってAGIを宣言した」として訴訟を起こす可能性もあるそうです。 また、OpenAIは自社のAIシステムが将来的にMicrosoftへ十分な利益をもたらすと判断した時点で、「sufficient AGI(十分なAGI)」を宣言することもできます。Microsoftは十分なAGIを承認しなくてはならず、その時点でOpenAIは自社の技術を他のクラウドプロバイダーに販売、あるいはライセンス供与することが認められます。 アルトマン氏がニューヨーク・タイムズのポッドキャストで語ったところによると、アルトマン氏とナデラ氏は6月23日に電話会談を行ったとのこと。アルトマン氏は、「どれほど深いパートナーシップにも、当然ながら緊張点は存在しますし、私たちにも緊張があります。しかし全体としては、両社にとって素晴らしい関係を築いています」と述べました。
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