ビットコイン飲み込む「クジラ」、ブラックロックのETFが変えた景色
ウォール街がビットコイン市場の「実権」を握りつつある。かつては国外市場と個人投資家による熱狂に動かされていたが、世界最大の暗号資産(仮想通貨)は今では米金融システムの中で価格が形成され、流れが決まるようになった。
変化の中心にあるのは資産運用大手ブラックロックの「iSharesビットコイン・トラスト(IBIT)」だ。資産規模860億ドル(約12兆8000億円)を抱え、今では最大のビットコイン上場投資信託(ETF)となった。これに結びついたオプション取引も今年、3倍を超えて急成長し、約340億ドルに膨らんだ。調査機関ASYM500の創業者ロッキー・フィッシュマン氏は「ETFがこれだけ大規模なオプション市場に発展するのは、極めてめずらしい。しかもローンチはつい8カ月前だ」と述べた。
IBITのオプション取引は米上場ETFの中でも群を抜いて活発で、ここ数日では1日の平均取引高が40億ドルに達している。
IBITの急成長は、流動性が正統性につながり、その結果さらに資金流入を促進するという、好循環を形成している。
マーケットメーカー、キーロックのケビン・デパトール最高経営責任者(CEO)は「暗号資産のオプションは長い間、機関投資家に受け入れられなかった」と語る。「ETFやオプションが登場した現在、ようやく機関投資家の運用戦略に合ったアクセスが可能になった」と述べた。
アンバーデータのデリバティブ担当ディレクター、グレッグ・マガディーニ氏も「流動性の高まりはボラティリティーを自然に抑え、パニック売りを防ぐ効果がある」と指摘した。
一方でIBITのオプション取引にはリスク管理の規制上、2万5000枚の上限が設けられている。ナスダックは1月、その10倍への引き上げを証券取引委員会(SEC)に申請し、SECは9月までに決定を下すことになっている。ブラックロックのデジタル資産責任者、ロビー・ミチニック氏は「現在の制限が解除されれば、オプションの取引高は無視できない規模で増加するはずだ」と語る。
「いずれはすべての資産がデジタル化される」とキーロックのデパトール氏。「今、暗号資産と呼ばれているものは金融システムの一部となり、他の金融資産と同様にシステムの中で価格が形成され、ヘッジが設けられ、リスクを管理されるようになる」と述べた。
原題:Wall Street’s Bitcoin Grip Tightens as BlackRock Becomes Whale(抜粋)