脳科学者が教える「誰かと一緒にいる意味」。なぜSNSでは心が満たされないのか?(ライフハッカー・ジャパン)
私たちは今、かつてないほど「つながっている」はずなのに、なぜか孤独を感じています。 『Why Brains Need Friends: The Neuroscience of Social Connection(なぜ脳は友人を必要とするのか)』の著者であり、神経科学者のBen Rein氏は、10年以上にわたり社会的相互作用の生物学を研究してきました。 スタンフォード大学などで教鞭をとる彼が指摘するのは、私たちの脳における「社会性」のメカニズムです。 なぜ孤独は体に悪いのか? なぜZoomやチャットは、直接会うことの代わりにならないのか? その答えを知ることは、現代の「孤独の疫病」への対策になるだけでなく、私たちがより良く働くためのヒントにもなるはずです。 この記事ではそんなBen Rein氏の著作から、5つの重要な洞察を紹介します。
「人間はつながるように配線(Wired)されている」という言葉をよく耳にしますが、これは単なる比喩ではありません。 太古の昔、私たちの祖先は食糧不足や外敵といった凄まじい脅威にさらされていました。一人では生き残れない過酷な環境下で、もっとも生存に適していたのは「集団で協力できる人間」でした。 その結果、私たちの脳には「社会的報酬システム」が組み込まれたのです。誰かとつながると、脳内では以下のような神経伝達物質が放出されます。 ドーパミン: 快楽や意欲を感じさせる セロトニン: 精神を安定させる オキシトシン: 安心感や信頼感を高める これらが「心地よい」と感じさせることで、私たちはまた誰かと関わりたいと思うようになります。 この脳の仕組みこそが、数千年にわたって人類をつなぎ止め、生き延びさせてきた「接着剤」なのです。
しかし今、私たちは深刻な事態に直面しています。 人々と過ごす時間、友人の数、孤独感といったデータを追うと、すべての指標が悪化の一途をたどっています。特に衝撃的なデータがあります。 2013年から2021年の間に、平均的なアメリカ人が一人で過ごす時間は、月に36時間も増加しました。 これは、ほぼフルタイムの労働1週間分に相当します。私たちは、文字通り「孤立」し始めているのです。
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ここまで読んで「友達と会わなきゃ」と思ったとしても、週末になるとつい「やっぱり家でNetflixを見ようかな」と思ってしまうこと、ありませんか? 実はこれも、脳のちょっとしたバグのようなものです。研究によると、私たちは以下のことを誤って見積もる傾向があります。 楽しさの過小評価:「人と会うことがどれだけ楽しいか、脳にとって良いことか」を低く見積もってしまう。 好意の過小評価:「他人が自分をどれだけ好意的に思っているか、自分の社交スキルがどれだけ通用するか」を低く見積もってしまう。 「行けば楽しいとわかっているのに、腰が重い」。これは人間の脳に備わった、奇妙ですが自然な欠点です。 このバグに気づいていれば、一歩踏み出す勇気が湧いてくるはずです。私たちの脳は、本能レベルで「リアルなつながり」を求めているのですから。 Source: Amazon Originally published by Fast Company [原文] Copyright © 2025 Mansueto Ventures LLC.
ライフハッカー・ジャパン編集部