トランプ氏のFRB攻撃は危険な賭け、利下げ後も長期金利上昇の恐れ

トランプ米大統領は米連邦準備制度への前例のない攻撃をエスカレートさせているが、長期金利の上昇を招き、米経済と金融市場に打撃を及ぼす逆効果の危険をはらんでいる。

  トランプ大統領は、景気を刺激し、政府の債務負担を減らすための大幅利下げに応じないとして、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長への厳しい批判を何週間も展開し続けた。

  退任したクーグラー前FRB理事の後任に自らの意向に沿うミラン経済諮問委員会(CEA)委員長を既に指名し、さらにクックFRB理事に解任を通告したことにより、連邦準備制度の政治的自律に対する威圧が法廷闘争に発展する可能性が高まった。

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  米国の短期金利の決定権は連邦公開市場委員会(FOMC)にあるが、住宅ローンや事業資金融資の指標となる米10年国債利回りは、世界中のトレーダーがリアルタイムの取引で決める。

  パウエル議長は来月にも利下げを再開する用意を示唆しているが、関税によるインフレ悪化懸念、財政赤字拡大に伴う国債増発、景気刺激効果を来年もたらす可能性のある大型減税など別の要因が重なり、米長期金利は高止まりしている。

  大統領に忠実なFOMCが行き過ぎた利下げに動けば、インフレと闘う中央銀行の信認が損なわれるという不安もある。長期金利は今より一段と高くなり、景気を圧迫するだけでなく、他の市場も動揺させかねない。

  ネッドグループ・インベストメンツの債券責任者デービッド・ロバーツ氏は「米雇用者数の伸び鈍化と、ホワイトハウスによる連邦準備制度への攻撃の組み合わせが、米国債投資家にとって現実の問題になりつつある」と分析。短期金利が下がっても長期金利は上昇するとの見通しを示した。

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  ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は「米国は赤字を賄うために膨大な国債を発行せざるを得ず、長期金利は市場の想定より高く、不安定な状態が続く」と予想した。

  ニューヨーク時間26日の取引で、米10年国債利回りは一時4.31%まで上昇後、終盤は4.26%前後となった。30年国債利回りは一時4.94%を付けた。

  ブルームバーグのマクロストラテジスト、エドワード・ハリソン氏は「クックFRB理事を解任しようとする試みがトレーダーの思考を支配した。イールドカーブ長期ゾーンのタームプレミアム上昇が、これまで最も大きな影響として表れてきたが、連邦準備制度を政治的に支配しようとする動きが勢いを増せば、プレミアムとインフレ期待の両方でより大きな反応を覚悟すべきだ」との見解を明らかにした。

  米連邦準備制度の政治からの分離が、投資家にとって問題になるのは、1970年代初め以来のことだ。当時はニクソン政権がバーンズFRB議長に圧力をかけ、金利を低く抑えようとした。その後のインフレ急加速は、大統領の圧力に屈した連邦準備制度の責任と批判され、「反面教師」として語り継がれてきた。

  インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「連邦準備制度にとって暗黙のマンデート(責務)は『バーンズになるな』だ。政治的圧力に屈服してはならない」と指摘した。

原題:Trump’s Fed Gamble Risks Pushing Key Bond Rates Even Higher (1)(抜粋)

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