世界の報道機関200社、ガザでの記者殺害めぐりイスラエルに一斉抗議
イスラエル軍が攻撃した現場に残されたロイター通信の契約カメラマンのフサム・アル・マスリ氏が使用していた機材=8月25日、パレスチナ自治区ガザ地区/Hatem Khaled/Reuters
(CNN) パレスチナ自治区ガザ地区で後を絶たないジャーナリストの殺害を受け、世界50カ国の報道機関が連帯して1日、イスラエルに対する抗議運動を展開した。ジャーナリストの殺害をやめ、ガザ地区に立ち入って自由に取材活動をさせるよう要求している。
抗議運動には50カ国の約200社が参加。新聞は1面を黒塗りにして、テレビ局やラジオ局は番組を中断、インターネット媒体はホームページをかき乱している。
抗議運動は、イスラエルがガザで続けている戦争で殺害されたジャーナリストの異常な多さに注目してもらう狙いで、国際NGOの「国境なき記者団」や「国際ジャーナリスト連盟」が組織した。
同連盟によると、2023年10月7日以来、ガザでは少なくとも210人のジャーナリストが殺害された。国際メディアはイスラエルに阻まれてガザに入って自由に取材することができず、現場からの報道は戦争の中で活動を続けるパレスチナ人ジャーナリストのみに頼っている。
「このままのペースでガザのジャーナリストがイスラエル軍によって殺害されれば、間もなく世界に情報を伝え続ける記者は誰もいなくなる。これはガザに対する戦争のみならず、ジャーナリズムそのものに対する戦争だ」。国境なき記者団のティボー・ブルタン事務局長はそう強調している。
「ジャーナリストが殺害され、標的にされ、中傷されている。彼らがいなければ、誰が飢餓について語り、誰が戦争犯罪を暴露し、誰がジェノサイド(集団殺害)を非難するのか」(ブルタン氏)
ガザでは8月にも著名パレスチナ人ジャーナリストが相次ぎ殺害されていた。
イスラエルは8月初旬、ガザ市に対する攻撃で、中東の放送局アルジャジーラの記者5人を殺害した。その数日前、イスラエルの治安閣議はガザ市を占領する計画を承認していた。
この時に命を落としたアルジャジーラのアナス・シャリフ記者は、ガザで活動するパレスチナ人ジャーナリストの中で最も有名な一人だった。アラビア語のメディアでほぼ毎日、紛争の様子や人的犠牲について伝え続けた。
同月下旬には、イスラエル軍がガザ南部ハンユニスにあるナセル病院を立て続けに攻撃し、さらに5人のジャーナリストを殺害した。
使われたのは「ダブルタップ」と呼ばれる時間差攻撃。病院に対する1回目の攻撃で負傷した人たちの手当てをするために人々が集まり、記者が取材しようとしていたところを、イスラエルが再び攻撃した。
CNNが入手した映像からは、この第2波の攻撃の際に、実は2回の攻撃がほぼ同時に行われていたことが分かった。この2回目と3回目の攻撃による死者は、1回目の攻撃による死者を上回った。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの攻撃を「悲劇的な手違い」と形容した。