プーチン大統領、「西側がロシアを尊重」すれば戦争はないと テレビ出演でBBCに回答

ポール・カービー欧州デジタル編集長、ラウラ・ゴッツィ記者 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日、恒例の年末記者会見で、ロシアが尊重されるなら、ウクライナの後に戦争はもう起きないと述べた。また、ロシアが欧州諸国への攻撃を計画しているという主張を「ナンセンスだ」と一蹴した。 約4時間半にわたるテレビ放送のなかでBBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長は、新たな「特別軍事作戦」があるのかと質問した。「特別軍事作戦」は、プーチン氏が2022年2月開始のウクライナ全面侵攻を指す言葉。 これに対しプーチン氏は、「我々を尊重し、我々の利益を尊重するなら、作戦はない。我々が常にあなた方を尊重しようとしてきたのと同じようにだ」と強調した。 プーチン氏は先にも、ロシアは欧州と戦争をする計画はないが、欧州側が望むなら「今すぐ」応じる準備があると語っていた。 ローゼンバーグ編集長への回答の中で、プーチン氏はさらに条件を付け加え、「北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大で我々をだましたように、我々をだまさない」ならば、ロシアによる侵攻はこれ以上と述べた。 プーチン氏は長年、1990年に西側諸国が当時のソ連指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏にしたとされる約束を、NATOが破ったと非難してきた。この約束はソ連崩壊前のものだが、ゴルバチョフ氏は後に、こうした発言があったことを否定している。 「ダイレクト・ライン」と呼ばれる毎年恒例のこの番組は、ロシア各地の記者や一般市民からの質問を集め、プーチン氏に直接投げかけるもの。 プーチン氏は今回、ウクライナでの占領地域を含む巨大なロシア地図の下に座っていた。この地図には、2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島も含まれていた。 ロシア国営テレビは、300万件以上の質問が寄せられたと主張した。 この番組の放送から数時間後、ウクライナ当局は、南部オデーサ州でロシアによるミサイル攻撃で7人が死亡、15人が負傷したと発表した。ロシアによるウクライナ侵攻は、2022年2月に始まった。 「ダイレクト・ライン」のやりとりは大部分が演出されているが、一般市民からの批判的なコメントも大型スクリーンに表示された。その中には、このイベントを「サーカス」と呼ぶものや、インターネット障害を嘆くもの、水道水の質の悪さを指摘するものが含まれていた。携帯電話でのインターネット障害については、当局はウクライナのドローン攻撃が原因だと説明している。 プーチン氏はまた、ロシア経済の低迷にも言及した。物価は上昇し、成長は鈍化し、付加価値税は来年1月1日に20%から22%に引き上げられる。「なにもかもが狂ったように値上がりしている。これをやめさせて!」というメッセージも読み上げられた。 クレムリン(ロシア大統領府)は、年末のこのイベントを経済のたくましさを強調する場として定期的に利用している。ロシア中央銀行は、番組で大統領が発言する中で、金利を16%に引き下げると発表した。 外交問題には、祖国への思い、地元企業への賛辞、魚の価格、退役軍人を大切にする重要性といった話題も入り混じっていた。 しかし、ほぼ4年間にわたるウクライナ全面侵攻の問題は、多くの質問に影を落としていた。 プーチン氏は再び、ウクライナでの戦争を「平和的」に終わらせる「用意と意思がある」と主張したが、譲歩の兆しはほとんど示さなかった。 プーチン氏は、2024年6月の演説で示した原則を繰り返し強調した。この原則では、ロシアが部分的に占領している東部4州からウクライナ軍が撤退することや、ウクライナがNATO加盟の努力を放棄することを要求している。 ロシアの要求の最重要事項は、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)の完全掌握だ。これには、ロシアが占領できていないドネツク州の約23%が含まれている。 ■西側メディアからは2件の質問 プーチン氏は、ロシア軍がウクライナの前線で前進していると主張し、先週クピャンスクの前線を訪れたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を嘲笑した。ゼレンスキー氏はこの訪問で、クピャンスクを制圧したというロシアの主張を否定した。 プーチン氏はまた、ドナルド・トランプ米大統領が紛争終結のために提示した和平案に、ウクライナでの選挙実施を項目として追加するよう要求した。記者会見でプーチン氏は、投票が行われる際にはウクライナへの爆撃を停止すると申し出た。 ウクライナ保安庁(SBU)は19日、ロシアの石油を世界各地に輸送している「影の艦隊」に属するタンカーを、初めて地中海で攻撃したと発表した。プーチン氏はこれについて、ウクライナが望む結果にはつながらず、ロシアの輸出を妨げることもないと述べた。 ロシアのメディアや一般市民からの質問のほとんどは、プーチン氏に異議を唱えるものではなかったが、西側メディアからは、米NBCニュースのキア・シモンズ特派員と、BBCのローゼンバーグ編集長が質問を許可された。 シモンズ特派員が、トランプ氏の和平案を拒否した場合、ウクライナ人とロシア人の死に対して責任を感じるかと質問すると、プーチン氏は米大統領による「誠実」な戦争終結への努力を称賛したが、合意を妨げているのはロシアではなく西側だと述べた。 「ボールはわれわれの西側の対抗者の手にある」、「主にキエフ(キーウのロシア語読み)政権の指導者たち、そしてこの場合、何よりも彼らの欧州のスポンサーたちだ」と、プーチン氏は付け加えた。 トランプ氏は、プーチン氏が譲歩を拒んでいるように見えるにもかかわらず、和平合意がこれまでになく近づいていると述べている。また、「ロシアがそこにいるのだから、ウクライナが迅速に動くことを望む」とも語った。 ウクライナの代表団は19日、米フロリダ州マイアミでスティーヴ・ウィトコフ米特使とトランプ氏の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏と協議した。これには英独仏の当局者も同席した。欧州の代表者らは数日前、独ベルリンで米当局者と会談している。 報道によると、ロシア側のキリル・ドミトリエフ特使もこの週末にマイアミに到着する予定。 プーチン氏はBBCのローゼンバーグ編集長に対し、「我々はあなた方と協力する準備がある。イギリス、欧州全体、そしてアメリカとだ。ただし、対等な立場で、互いに敬意を払ってだ」と述べた。 「ロシアの中長期的な安全が確保されるなら、われわれは直ちにこの敵対行為を停止する準備がある。そして、あなた方と協力する用意がある」 プーチン氏は、西側がロシアを敵に仕立てているのだと非難した。2022年2月にウクライナ全面侵攻を決断したことには触れず、「あなた方はウクライナのネオナチの手を使って、我々に戦争を仕掛けている」と述べた。その後、ウクライナで民主的に選ばれたゼレンスキー大統領に対する、いつもの非難を繰り返した。 欧州の情報機関は、ロシアが数年以内にNATO加盟国に攻撃する可能性を警告している。NATOのマルク・ルッテ事務総長は先に、ロシアがすでに秘密裏の攻撃をエスカレートさせており、西側は戦争に備えなければならないと述べた。 「ダイレクト・ライン」での質問の多くは無難なもので、子どもからの質問も含まれていた。 一方、北東シベリアのヤクーチア(現サハ共和国)出身の記者からは、過去4年間でエネルギー価格が10倍に上昇したという指摘があった。プーチン氏はこの記者に対し、代替エネルギー源を検討し、「ヤクーチアを念頭に置く」と答えた。 テレビ番組の終盤でプーチン氏は、友情や宗教、祖国、そして一目惚れに関する考えについて、一連の短い質問を立て続けに受けた。プーチン氏は一目惚れを信じていると述べ、その後、自分自身が恋をしていると付け加えたが、詳細は明かさなかった。 (英語記事 Putin vows no more wars if West treats Russia with respect)

(c) BBC News

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