米経済のリスクは新政権の政策次第、関税は詳細確認が必要=三村財務官
[東京 21日 ロイター] - 三村淳財務官は21日、ロイターのインタビューイベント「ニュースメーカー」で、米国経済の先行きについて、第2次トランプ新政権のマクロ政策によって上下双方向に行くリスクがあるとの認識を示した。トランプ氏が掲げる政策はインフレを発生させやすい政策である一方、自身はインフレを抑制すると主張していると指摘。「インフレの芽が顕在化してきた場合にはどこかで軌道修正というのはあるかもしれない」と述べた。そうした一定の不確実性を前提にしつつ、先読みをしていくしかないと語った。
三村氏は、米経済について「上向きのリスクも下向きのリスクも新政権のマクロ政策次第」と指摘。外為市場でドル高基調が変化するかについても「究極的にはトランプ氏のマクロ経済政策がどうなるかに尽きる」と述べた。トランプ氏が掲げる減税政策や関税政策、移民政策はインフレや金利の上昇方向につながると一般的には思われており、基本的にトランプ氏の政策とインフレ抑制は両立し得るものではないとの見方を示した。
トランプ氏が各国への関税を引き上げる方針を示していることについては、制度の詳細とその目的を把握する必要がある、と指摘。全ての国が対象なのか、特定の国を指定するのか、鉄鋼・アルミのように業種を指定するのか、いきなり一気にかけるのか、時期とともに少しずつ段階的に上がっていくのか、制度の詳細によって影響が変わってくるとした。
さらに、関税をかける目的も、ディールの手段なのか、貿易赤字の削減なのか、純粋に税収増を目指したものなのかを確認しなければならないとした。日本政府としてそれぞれ有効な対応を考えていくことが必要であり、「単純な議論ではないかなという思いを持ちながら動向をフォローしている」と述べた。
<日銀とは日常的に意思疎通>
三村財務官は日本経済の現状について、企業の設備投資は悪くないが実質消費は弱いとし、今後は「実質賃金がどうなっていくのかがポイントだ」との考えを示した。
市場では、日銀が23─24日の金融政策決定会合で利上げに踏み切るとの観測が多い。日銀の判断によって為替が変動する可能性もあるが、金融政策判断は「日銀の独立性の中での判断になる」と指摘。政府と日銀は様々なレベルで日常的に意思疎通や意見交換を行っていると強調し、今後も基本的な考え方や認識を共有するよう取り組んでいくと述べるにとどめた。
三村氏は、為替の水準以上に、ボラティリティの高まりに注意を払っていると説明。「過度のボラティリティ、無秩序の動きを望ましくないという観点から、投機的なポジションの動向を日頃から見ている」と語った。
主要7カ国(G7)で為替に関する国際合意を2017年から踏襲していることについて「変えようと言っている国を私は全く聞いたことがないし、私自身も変える必要があると思っていない」と述べた。トランプ大統領の再就任でどうなるか気にする声も耳に入ってくるが、G7で確認し続けている為替のコミットメントは「第1期トランプ政権時に合意したものが今日に続いているというのが事実だ」と語った。
三村氏は1989年に大蔵省(当時)に入省し、フランス大使館書記官や主計官補佐を経て、2004年から金融庁へ出向した。15年に財務省に戻った後は副財務官などを歴任し、21年に国際局長。昨年7月31日付で財務官に就任した。急速に進んだ円安に円買い介入で対抗した神田真人氏の後任として日本の通貨政策を指揮している。
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