米ドルからの大量資金流出、360兆円の通貨「雪崩」にも-ジェン氏

アジア諸国が保有する米ドル資産を減らし始めれば、2兆5000億ドル(約360兆円)規模の「通貨の雪崩」が発生し、米ドルに深刻な下押し圧力がかかる恐れがある。投資会社ユリゾンSLJキャピタルが指摘した。

  スティーブン・ジェン、ジョアナ・フレイレ両氏は7日のリポートで、アジアの輸出企業や投資家は長年にわたり、米ドル建て資産を「極めて多く」積み上げてきたとみられると指摘。

  「アジアの輸出企業や機関投資家による米ドル保有は非常に巨額で、2兆5000億ドル規模に達している可能性がある。これがアジア通貨に対する米ドルの下落リスクを高めている」と両氏はリポートに記した。

  米国主導の貿易戦争が激化する中、一部のアジアの投資家は資金の一部を本国に還流させたり、ドル安への備えを強化したりする可能性がある。こうした動きが、米ドルからの大規模な資金流出を引き起こす恐れがあるという。

  トランプ米大統領による世界貿易秩序再構築の試みにより、投資家が「米国例外主義」の投資戦略を見直しつつある中で、米ドルの長期的な魅力が揺らいでいる。

  5日に台湾ドルが急騰したことも、アジアの政策当局が米国との貿易交渉を成功させるために自国通貨高を容認する用意があるとの見方に拍車をかけた。  

  ブルームバーグ・ドル指数は2月の高値から約8%下落。全てのアジア通貨は過去1カ月に対米ドルで上昇している。

  「ドル・スマイル理論」で知られるジェン氏は以前、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを実施すれば、中国企業が保有するドル建て資産を売却することで、約1兆ドルが中国本土に還流する可能性を指摘していた。

関連記事:米利下げなら1兆ドルの「雪崩」、中国企業がドル売り-ジェン氏

  今回、数兆ドル規模の資金移動を加速させる要因としてジェン氏は、アジア諸国にまん延する「ネーキッド・ドルロングポジション」を挙げる。これは市場変動リスクに対するヘッジをしていない米ドル資産の保有を意味し、中国、台湾、マレーシア、ベトナムなど、米国に対して貿易黒字を持つ国で広く見られるという。

  「世界には、米ドルを脆弱(ぜいじゃく)な立場に追いやる重要な不均衡が存在している」とジェン氏はリポートで指摘した。

原題:Dollar Exodus to Unleash $2.5 Trillion FX ‘Avalanche,’ Jen Says(抜粋)

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