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かねてから噂となっていたフェラーリ「ローマ」の後継モデルは、2025年7月1日、新たに「アマルフィ」の名が与えられ、ネーミングの由来となった南イタリア・カンパニア州アマルフィにてワールドプレミアされました。それからわずか約4週間後となる7月30日、早くも日本国内でもデビューイベントが行われ、美しき新型「アマルフィ」が報道陣の前に姿を現すことになりました。
「ドルチェ・ヴィータ」の世界観を体言化したクルマと演出
2019年11月にデビューしたフェラーリ ローマは、1960年代のイタリア映画を思わせる「ドルチェ・ヴィータ(甘い生活)」を体現したような豪奢な「2+」クーペとして、数々の映画の舞台となったイタリアの首都が車名に選ばれた。
実質的なローマの後継車にあたるアマルフィもまた、今も昔も欧州のセレブリティたちが豪奢な「ヴァカンツァ」を過ごす南イタリアの小さな港町の名から命名された。
日本における新型アマルフィ国内発表イベントの会場となった、東京・浜離宮恩賜庭園を臨む「ウォーターズ竹芝」には、南イタリアの象徴でもあるレモンの木を植栽したファサードなど、アマルフィ海岸の華やかさをイメージした仕立てが施されるとともに、「アマルフィジャズ」と称する生バンドの演奏も行われるなど、引き続きイタリア式ドルチェ・ヴィータを体現したフェラーリであることをアピールしていた。
ロマニエッロ氏が自走で姿を表した
この日は、イタリアのマラネッロ本社からプロダクトマーケティング責任者、エマヌエレ・カランド氏が来日。自らプレゼンテーションを行ったのち、これもアマルフィの街並みを意識したと思われるポルティコ状装飾が施されたステージに、フェラーリ・ジャパン代表取締役社長のドナート・ロマニエッロ氏の運転するアマルフィが、ゆっくりではあるが自走で姿を現した。
現時点においてラインナップされたボディカラーとしては、おなじみ「ロッソ・コルサ(Rosso Corsa:赤)」に加え、「ヴェルデ・コスティエラ(Verde Costiera:緑)」、「ビアンコ・アルティコ(Bianco Artico:白)」、「ジアッロ・モンテカルロ(Giallo Montecarlo:黄色)」、「グリージョ・アブダビ(Grigio Abu Dhabi:シルバー)」、「ルビーノ・ミカリッツァート(Rubino Micalizzato:ルビー色)」、「ヴィオレット・ディーノ(Violetto Dino:紫)」などが用意されるなか、今回の日本デビューに登場したのは深紅の「ロッソ・ポルトフィーノ(Rosso Portofino)」のアマルフィであった。
フェラーリ曰く
「モダンなエレガンスとハイパフォーマンスが完璧に融合した、唯一無二のモデル。グランド・ツアラーのコンセプトを進化させたスポーツカーとして、ハイパフォーマンスと日常的な汎用性の高さを両立」
と自認する新生アマルフィは、ローマからいかなる進化を遂げているのか。次項にてご説明させていただきたい。
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ローマからの正常進化で向上したパフォーマンス
新生アマルフィの形式名は「F169MM」とのこと。グラマラスかつエレガントなプロポーションから見ても「F169」であるローマの大規模改良版と見て間違いあるまい。
ただしエクステリアについては、フラヴィオ・マンゾーニ氏の率いるフェラーリ「チェントロ・スティーレ(デザインセンター)」が、ほぼすべてのボディパネルを新たにデザイン。マンゾーニ氏が掲げる「複雑さを一切排除したシンプルさこそが、そのクルマを永遠に愛されるものにする」という信条のもと、流麗ながらミニマルなスタイリングとしつつも、12チリンドリ譲りの「可変アクティブ・ウィング」を活用して、LD(ロー・ドラッグ)/MD(ミディアム・ダウンフォース)/HD(ハイ・ダウンフォース)の3種類を自動的に切り替える「アクティブ・エアロダイナミクス」を採用するなど、最新鋭の空力パッケージを盛り込んでいる。
フロントに搭載されるパワーユニットも、ローマから継承されたV8ツインターボ3855ccの「F154B」系最新スペックのものでリア駆動となる。カムシャフトやブロックの軽量化を図ったほか、「296GTB」や「12チリンドリ」でも実績のある最新世代のエンジン制御システム、2基のターボチャージャーに施された新たなキャリブレーションなどの相乗効果により、最高出力はローマの620psから640psまで高められている。
その結果、トランスミッションは8速ATを組み合わせることで、最高速度こそローマと同じ320km/hにとどまりながらも、0-100km/h加速は0.1秒短縮された3.3秒をマークするとのことである。
ローマからの「デュアル・コックピット」コンセプトを強化
いっぽう、フェラーリでは「ビークル・ダイナミクス」と称するシャシーについてもローマの基本設計を維持しつつ、新たにブレーキを電子制御する「ブレーキ・バイ・ワイヤ」を採用。6Dセンサーにより高い精度で車速を測定し、各輪の最適なスリップ値を特定する「ABS Evo」システムと併せて、制動力を最適分配するという。
またインテリアでは、ドライバーの正面に15.6インチのデジタル式インストゥルメントクラスターを備えるほか、インパネ中央に10.25インチのタッチパネルディスプレイを配置。さらに12チリンドリと同じく助手席側にもディスプレイを備え、ローマ以来となる「デュアル・コックピット」のコンセプトを強化した。ただ、ローマの特徴であった左右座席を分ける高いコンソールは廃され、助手席に座るパートナーとの「ドルチェ・ヴィータ」をより緊密なものとすることにしたようだ。
今回のプレゼンテーションでは、販売価格や日本でのデリバリー開始時期などについては明かされなかったものの、ワールドプレミア時の報道によると、イタリア本国をはじめとする欧州では、まず左ハンドル車から2026年前半に生産開始されるとのこと。今後の続報に注目していきたい。