米メルトダウンを警戒、世界のトレーダーがリスク回避にあの手この手
米株から中国株に乗り替え、円とユーロの買いなど、トレーダーはリスク回避に走っている。米市場のメルトダウンが世界にどのような影響を及ぼすだろうかと不安を募らせている。
このところの米国株の下落基調は10日、パニック売りに転じた。リセッション(景気後退)の懸念がウォール街全体に広がった。
リスク回避の動きはアジアにも波及し、米国例外主義が終わったという確信が強まるにつれ、相対的に安全な円やオーストラリア国債、オフショア人民元への逃避が加速した。
長年にわたる米ハイテク株上昇とドル高に慣れていた投資家にとって、目まぐるしい展開となった。ハイテク株中心のナスダック100指数は10日に1兆1000億ドル(約162兆円)を失った。
トランプ米大統領の「米国第一主義」政策が、逆に米資産からのシフトを加速させている。ユーロは2月の安値から約7%上昇し、香港の中国株指数は今年に入って20%近く上昇した。
ヘッジファンド、ブルー・エッジ・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、カルビン・ヤオ氏(シンガポール在勤)は「現在の市場は、五輪レベルのテニスのようだ。私たちトレーダーがボールだ」と語った。
同氏は長期の米国債を選好し米国株には弱気で、変動の激しい市場で「ほどほどの投資」をしている。
11日のアジア市場では、米国債が上昇する一方で、ブルームバーグ・ドル指数は下落した。米連邦準備制度が景気浮揚のために利下げを再開せざるを得ないという観測が強まった。
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欧州では、ドイツの歴史的な防衛支出計画がユーロ高を後押しする中、ユーロ弱気派は方針転換を余儀なくされている。
シュローダーのマネーマネジャー、ケリー・ウッド氏は「米国例外主義は徐々に消滅しつつつつある。このような環境では誰もが資産を保全したいと思うだろう」と述べた。同社ファンドは先月、ドル買いから円とユーロ買いに転換し、短期米国債とオーストラリア国債に強気だという。
中国オーバーウエート
株式市場では米景気減速への懸念から10日にナスダック100指数が3.8%急落したが、経済データは懸念を裏付けるものだ。米失業率は2月に4.1%に上昇し、1月の個人消費支出はほぼ4年ぶりの大幅減少となった。
トランプ米大統領が米経済は「過渡期にある」と述べ、ベッセント財務長官が政府支出への依存を断ち切るための経済の「デトックス」が必要だと発言したことも、トレーダーが米国へのエクスポージャーを減らす理由になっている。
ストラテジストや資金運用担当者は戦略を練り直している。
フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、ジョージ・エフスタソプロス氏は10日遅く、ドイツの中型株を買い増した。同国の財政刺激策が産業部門を後押しするとみている。
シティグループは米国株の投資判断を「オーバーウエーイト」から「ニュートラル」に引き下げる一方、中国株を「オーバーウエート」に引き上げた。
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モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントは東南アジアの企業や国を、ティー・ロウ・プライス・グループは欧州株を選好している。
北京億鯤私募基金管理のファンドマネジャー、リー・ミンホン氏は、米国株のバリュエーション上昇の多くは「泡」であり、オフショア中国株の方が価値があると確信している。
題:Fears of US Contagion Spur Traders to Find Hedges Across World(抜粋)