英中銀、8対1で金利据え置き決定-ハト派3人も慎重姿勢に転換
イングランド銀行(英中央銀行)は20日、政策金利を4.5%に据え置くと発表した。市場の予想通りだった。
ベイリー総裁率いる金融政策委員会(MPC)は8人が据え置きを支持、1人は0.25ポイント利下げを主張した。ハト派寄りとみられた3人の政策委員も利下げ見送りに姿勢を転じた。
8対1の決定は、慎重なアプローチを支持する当局者がエコノミスト予想よりも多かったことを意味する。MPCは全体的によりタカ派的な方向にシフトした。
過去3回の会合で利下げを主張してきたラムズデン副総裁とテイラー委員に加え、2月に大幅な0.5ポイント利下げを主張して市場を驚かせたマン氏も据え置きに票を投じた。
最もハト派的なディングラ氏は0.25ポイント利下げを主張したが、前回とは異なり0.5ポイント利下げは求めなかった。
ベイリー総裁は、世界的に不確実さが高まる中で政策当局者に慎重な対応を促した。
同総裁は政策判断発表後に放送されたインタビューで、「急速に展開する」世界情勢への対応が求められており、インフレや経済成長への影響はまだ不透明だと述べた。「現時点ではかなり慎重に対応を見極める必要がある。インフレの鈍化は依然として非常に緩やかなペースで進んでいるからだ」と同総裁は指摘した。
RSM UKのエコノミスト、トーマス・ピュー氏は「先月の投票結果と比べ、明らかにタカ派寄りに傾いた」と指摘。「賃金の力強い伸びが続き、企業が増大するコストを想定以上に積極的に転嫁するリスクが明らかにある。そうなれば、利下げ回数は減るだろう」との見方を示した。
議事録は「今後数回の会合において金融政策があらかじめ定められた道筋をたどるという想定はない」としており、5月の利下げは確実ではないことを示唆している。
英中銀は昨年8月以来、四半期に1回のペースで利下げを実施しているが、トレーダーの間で、次の利下げが5月になるだろうという見方はここ数週間で後退している。短期金融市場が織り込む5月利下げの確率は、今回の政策発表後に70%から65%前後に低下。英国債は上昇し、利回りは全年限で低下した。
それでもガイダンスによると、世界経済の悪化で英中銀の「段階的かつ慎重な」緩和に狂いはまだ生じていないとの見解が示された。
ベイリー総裁は議事録に添えられた声明では「現時点では経済の先行きに不透明感が多いが、われわれは依然として金利が緩やかに低下する道筋にあると考えている」と説明。「世界経済と国内経済の動向を注意深く見守っていく」と付け加えた。
中銀はインフレ率が今年中に目標の2倍に近い3.75%に達するという予測を再確認した。物価高騰は一時的な要因によるものだと当局者らは考えているが、議事録では消費者と企業双方のインフレ期待の高まりに対する懸念が示された。
来週の春季財政報告を前にリーブス財務相は「生活費の緩和に向け、まだすべきことがある」と認めていた。
20日午前に発表された英雇用統計によると、賃金上昇率は9カ月ぶりの高水準で、雇用も増加し、労働需要の底堅さを示した。
議事録によると、こうした好調な賃金データは重大視されなかったものの、今後数カ月の賃金交渉については将来の決定の「重要な要因」となるため、当局は注意深く見守るとしている。
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原題:Bank of England Votes to Hold Rates as Doves Turn Cautious (2)、Bank of England Votes to Hold Rates as Doves Turn Cautious (1)、Bailey Urges BOE Caution as Trump Tariffs Ramp Up Uncertainty
(抜粋)