【米国市況】株とドル下落、トランプ関税巡る懸念再燃-142円50銭台
23日の米国株は下落。トランプ米大統領が欧州連合(EU)とアップルに対して関税賦課を警告したことが嫌気された。また為替市場ではドルが大きく下げ、2023年12月以来の安値を付けた。対円での下落率は1%を超えた。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5802.82 -39.19 -0.67% ダウ工業株30種平均 41603.07 -256.02 -0.61% ナスダック総合指数 18737.21 -188.52 -1.00%トランプ氏は、EUとの貿易協議に「まったく進展が見られない」として、EUからの輸入品に6月1日から50%の関税を課す考えを示した。ベッセント米財務長官が、「複数の大規模な」貿易合意が数週間内に発表される可能性はあると述べたことに反応し、相場は一時下げを縮める場面もあった。
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トランプ氏はその後、アップルのみならず韓国のサムスン電子を含む全ての携帯電話メーカーに対し、米国内で製造されていない製品には25%の関税を賦課すると警告した。
こうした突発的な動きは、米国の政策シフトが市場のダイナミクスを急変させるリスクが常に存在することを浮き彫りにする。市場はここ数週間、トランプ氏が関税に対する姿勢を軟化させるとの期待感から回復傾向にあった。また投資家の関心は膨張する米国の債務と財政赤字の問題に移っていた。
ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー最高投資責任者(CIO)は、「市場のテーマは依然としてボラティリティーだ」と指摘。「実質的な合意が成立するまでは関税が引き続き大きな不確実要素だということを、改めて強く示している」と述べた。
ウィズダムツリーUKのマクロ経済調査責任者、アニーカ・グプタ氏は「市場は神経質な状態が続くだろう」と分析。「市場は、少なくとも90日間の猶予期間が終わるまでは関税に関するニュースが落ち着くことを期待していたが、そうなっていないのは明白だ。不確実性は今後も続く。現在はボラティリティーの非常に高い時期にある」と述べた。
キャピタル・エコノミクスによれば、トランプ氏がEUに対して課すとした50%の関税の脅しは「交渉戦術」である可能性が高く、関税率が長期的にその水準で落ち着くことは「極めて考えにくい」という。
「現時点では、対EU関税が最終的に10%程度に落ち着くという当社の前提を変更する意向はない。だが、この件はリスクの存在、そして合意に至る道のりが険しいものになり得ることを浮き彫りにしている」と同社は指摘した。
個別銘柄の動きを見ると、アップルが3%安。USスチールは21%高と急伸した。トランプ氏が、日本製鉄とUSスチールの提携を支持すると表明したことが手掛かり。
為替
外国為替市場ではドルが下落し、ブルームバーグのドル・スポット指数は年初来の下げが7%を超えた。円は対ドルで1%を超える上げ。トランプ米大統領による関税の脅威が再燃したほか、財政赤字の拡大リスクを背景にドルの妙味が低下した。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1211.36 -9.52 -0.78% ドル/円 ¥142.53 -¥1.48 -1.03% ユーロ/ドル $1.1366 $0.0085 0.75% 米東部時間 16時50分ブルームバーグ・ドル・スポット指数は下げを一時0.8%まで広げ、2023年12月以来の安値を付けた。
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円はドルに対し、一時1.1%高の1ドル=142円42銭となった。ユーロも対ドルで大きく上昇した。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は、財政問題や新たな関税の脅威、さらに米経済データの軟化が全てドルに重くのしかかっているとみる。「トランプ政権がドル安を強く望んでいるという事実も手伝って、パーフェクトストーム(悪いことが同時に起きる破滅的状況)の様相を呈している」と同氏は指摘。「ウォルマートは今月からの大幅値上げを警告した。ドル安の影響は近く消費や雇用市場に波及すると考えられる」と述べた。
国債
米国債市場では大半の年限で利回りが小幅に低下。朝方、トランプ氏がEUとアップルに対し関税を警告した後に一時大きく下げたが、その後は低下幅を縮めた。米国株が下げを縮小したことなどが背景にある。米国債市場はこの日、米東部時間午後2時までの短縮取引だった。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 5.04% -0.2 -0.04% 米10年債利回り 4.51% -1.8 -0.39% 米2年債利回り 3.99% 0.1 0.03% 米東部時間 13時59分UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルチェリ氏は「向こう数週間にわたり、財政赤字への懸念から利回りが徐々に上昇するリスクはあるものの、利回りが大きく上昇した場合にはFRBないしトランプ政権が調整に動く可能性が高いとわれわれはみている」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は4日ぶりに反発。祝日を挟む週末を控え、商いは薄かった。米国とイランの核協議がまとまるとの見方が後退した。
イランのアラグチ外相によると、両国は5回目の協議を行い、「一定の進展はあったが決定的なものではなかった」という。
この日発表された米国の新築住宅販売が市場予想に反して増加したことやドル安も相場を支えた。
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トランプ米大統領がEUからの輸入品に50%の関税を課す考えを示したことを受け、原油相場は一時2%近く下落する場面もあった。
ダンスケ銀行のストラテジスト、イェンス・ペデルセン氏は「今週は弱気センチメントが原油市場に戻った」と指摘。「石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成されるOPECプラスの新たな供給引き上げ方針が主な関心事だが、イラン核協議の進展や同国への制裁が解除される可能性、貿易交渉の停滞も市場の懸念材料となっている」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、前日比33セント(0.5%)高の1バレル=61.53ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は0.5%上昇し、64.78ドル。
金
金相場は反発。トランプ関税を巡る懸念が再燃し、金への逃避需要が強まった。スポット価格は週間ベースでは約5%上昇。
金価格は年初来では25%余り上昇。その背景には、米国主導の関税戦争による影響がある。貿易摩擦による混乱を懸念し、株式から資金を退避させる動きが広がる中、安全な逃避先とされる金への資金流入が加速している。
米国の財政を巡る懸念も、安全資産への需要を支えている。投資家の間では、下院を通過したトランプ税制法案が、すでに膨らんでいる財政赤字をさらに拡大させるとの警戒感が強まっている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時17分現在、前日比70.25ドル(2.1%)高の1オンス=3364.77ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、70.90ドル(2.1%)高の3394.50ドルで引けた。
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