日銀が来年にも1.5%へ利上げの可能性、次回は7月予想ー早川元理事

元日本銀行理事の早川英男氏(東京財団政策研究所主席研究員)は、早ければ来年中にも日銀が政策金利を1.5%程度に引き上げる可能性があるとの見方を示した。次の利上げは7月を見込んでいる。

  早川氏は4日のインタビューで、先行きの日銀の利上げペースは半年に1回程度、次回は7月というのがオーソドックスな考え方だと指摘。年末に再び利上げを行う可能性があり、政策金利は来年にも1.5%程度に達し、「政策正常化プロセスがゴールにたどり着くイメージを中心シナリオに置いている」と語った。

  日銀は1月24日の金融政策決定会合で、昨年7月以来の利上げを決め、政策金利を17年ぶりの0.5%程度に引き上げた。植田和男総裁は記者会見で、日銀の経済・物価見通しが実現していけば、利上げで緩和度合いを調整する方針の維持を表明した。

  ブルームバーグが利上げ後の27日に実施したエコノミスト調査では、次回の利上げについて最多の56%が7月会合を挙げた。最高到達点(ターミナルレート)の予想中央値は1%となっている。早川氏の見方は市場よりもタカ派的といえるが、国際通貨基金(IMF)が昨年10月に示した予測と一致している。

  日銀が示している自然利子率の推計に基づけば、2%の物価目標達成時の緩和的でも引き締め的でもない中立金利の水準は1-2.5%となる。早川氏は推計の下限の1%で利上げを止める理屈はないとし、「まずは1%くらいまで利上げを進め、その先は慎重に様子を見ながらということだと思う」と語った。

  もっとも、中立金利やターミナルレート、利上げペースは明確に分かるものではないとし、消費者物価の上振れリスクが意識される現状では、一段と円安が進行すれば、利上げのタイミングが早まる可能性があると指摘。一方で、高騰が続く生鮮食品の影響によって物価が上振れすれば、個人消費の回復が遅れるリスクが意識され、利上げが遅くなることも考えられるという。

トランプ関税

  1月20日に始動したトランプ米新政権の関税政策などを巡り、金融市場は神経質な展開になっている。トランプ氏は3日、1日に大統領令に署名したカナダとメキシコへの25%の関税適用を1カ月延期する一方、中国からの輸入品への10%の追加関税は4日に発動し、世界的に株式市場が乱高下した。

  早川氏は、今回の土壇場での関税延期などを踏まえ、株価が大きく下がるようなことをトランプ氏はしたくないのだろうと指摘。同氏の発言などを巡って市場が一喜一憂する展開は今後も続くとしながらも、米新政権の政策によって米国経済や世界経済が極端に悪化するリスクが大きいとは見ていないと述べた。

  1月会合での利上げ決定は、事前にほぼ織り込まれていたこともあり、市場の反応は限定的だった。年明け後に正副総裁が相次ぎ、利上げの是非を会合で判断すると言及したためだ。昨年12月会合での植田総裁の発言がハト派と受け止められたこともあり、日銀のコミュニケーションの変化を問題視する声もある。

  決定会合前にほぼ内容を公言するような手法は、日銀幹部の発言に市場が過度に反応する可能性があり、「どうかと思う」と早川氏は苦言を呈した。大規模緩和の長期化後の利上げ局面でもあり、「日銀の発信とその市場の反応について、まだお互いがうまく学べていない」とし、円滑な対話にはもう少し時間がかかるとみている。

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