「資さんうどん」の昆布で育つウニ、特産化を目指す…磯焼け防止で駆除される個体活用

 北九州市のプラント建設会社「高田工業所」が、ウニを廃棄食材で育てる蓄養の事業化にまい進している。エサは同市発祥のチェーン店「 資(すけ) さんうどん」でだしをとった後の昆布や、市名産の「 合馬(おうま) のたけのこ」の切れ端など。約2年半の実験で安定生産に一定のメドがつき、販売先の開拓にも乗り出した。地域資源を有効活用する特産品としてブランド化をねらう。(川口尚樹)

廃棄食材の昆布やたけのこをエサにウニを蓄養する高田工業所の実験施設(2日、福岡県宗像市で)=田中勝美撮影

 7月上旬、福岡県宗像市の鐘崎漁港にある実験施設を訪れると、縦約3メートル、横約1メートルの水槽が2基置かれていた。一つの水槽に約300匹、計約600匹を飼育中といい、水の中をのぞき込むと、網で細かく仕切られた区画の中に、ウニが数匹ずつ入っていた。エサの昆布やたけのこ、アスパラの切れ端をつついて、食べている姿も確認できた。

高田工業所のウニの畜養事業のイメージ蓄養前後の比較。3~4か月の蓄養で可食部が大きく育つ

 実験を始めたのは、2023年1月。当初はエサのやり過ぎによる水質悪化や浄化装置の不具合など、ほぼ全滅させるようなこともあったが、飼育数やエサの量、水温などを試行錯誤し、3~4か月かけて育てれば商品化できるメドがついた。担当する佐野刀志男・事業開発グループ長(45)は「生き物を扱うのは初めてで失敗も多かったが、ようやく安定的に生産することができてきた」と話す。

 高田工業所は製鉄所や化学プラントの保守、建設を本業とする。蓄養に取り組むきっかけとなったのは、宗像市内にある社有地の活用策を検討する中で、ウニが岩場の海藻を食い尽くす「磯焼け」の問題があり、市が対策として駆除していると聞いたことだった。

 エサ不足で育つため可食部がほぼなく、廃棄されており、陸上で蓄養する構想を描いた。食用としてウニを売るとともに、得意とする設備の設計技術を生かして蓄養設備やノウハウをほかの企業に販売する2本柱の戦略だ。

 天然のウニもエサとする昆布を安定的に安く仕入れる狙いで同じ北九州市に本社を置く「資さん」に協力を依頼した。複数の食材を与えた方が味が良くなることが分かっており、同市名産のたけのこを生産する「合馬観光たけのこ園」や、アスパラガスを生産する同県岡垣町のレストラン「ぶどうの樹」の運営会社の協力も得た。いずれも廃棄されていた食材を有償で買い取っている。

 現在は、事業化を見据えて通年で大量生産できる大規模な設備の導入を検討している。料理店などの業務用に加え、スーパーの店頭に並べることも視野に、販売先の開拓も始めた。飲食店での試食では高い評価を得ており、資さんも「ウニを使ったメニューを店で提供できれば、資源循環につながる」と期待を寄せる。

 磯焼けが広がると魚のすみかが減り、漁業に影響が出るとしてウニを駆除している自治体は多い。佐藤慎介・経営企画部長(48)は「会社にとって新しい挑戦だが、地域課題の解決にもつながる。出来るだけ早く事業化したい」と意気込む。

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