雨でも構わない太陽光発電システムが誕生

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雨の日の太陽光パネルって無用の長物感がすごいですが、実際、わずかには発電しているそう

とはいえ、当然に発電量は大きく落ちます。それならば、もっと他にいいやり方はないものかと考えたのか、スペインの研究チームが常識をひっくり返してきました。

雨粒がパネルに当たるたびに発電する、晴れも雨も「全天候型」のハイブリッドデバイスです。

雨粒1滴で110ボルトの電圧

まず少し予備知識を。

太陽電池には今、次世代の本命候補がいます。ペロブスカイト太陽電池です。従来のシリコン製に比べて製造コストが低く、変換効率も高く、薄くて軽くて曲げられるという特徴があり、世界中で研究が加速しています。

ただ、致命的な弱点がひとつ。水に弱いのです。雨ざらしにすると材料が溶け出して、あっという間に劣化してしまう。屋外で使う太陽電池なのに、雨が苦手というなかなかの矛盾を抱えています。

今回、スペインから発表されたデバイスは、その弱点をまるごと武器に変えてしまいました。 セビリア材料科学研究所(ICMS)、スペイン国家研究評議会(CSIC)、セビリア大学の共同チームが開発したのは、ペロブスカイト太陽電池と摩擦電気ナノ発電機(TENG)を組み合わせたハイブリッド構造です。

TENGとは、異なる2つの素材が触れ合う摩擦で静電気を起こして発電する装置のこと。下敷きで髪をこすると静電気が起きますよね。あの原理を極限まで小さく、効率よくしたようなものだと思ってください。

チームはプラズマ技術を使い、ペロブスカイト太陽電池の表面に厚さ約100ナノメートル(髪の毛の太さの約1000分の1)の保護膜をコーティングしました。この膜が摩擦電気面として働き、雨粒が落ちた衝撃エネルギーをそのまま電流に変換するといいます。

雨粒1滴あたり最大110ボルト。つまり、雨が降るほど、パネルが喜ぶ構造になっています。

しかもペロブスカイト太陽電池の弱点もカバー

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この保護膜、実は三役兼任の働き者でして。

まずは雨粒を電力に変える発電素子の役割。それから、ペロブスカイト太陽電池を劣化から守るカバーの役割。そして、光の吸収効率を高める光学フィルターとしても働きます。100ナノメートルという目に見えない薄さで働きすぎです。

スマートホームや気象観測センサーなどのIoTデバイスはもちろんのこと、橋や高層ビルに取り付けてひび割れや歪みを検知する構造センサー、街灯や信号機の電源、田んぼや畑の土壌センサーなど……要するに「小さくて、電池切れが困る系のデバイス全般」で恩恵がありそう。

ちなみに、日本でもペロブスカイト太陽電池を別のものと組み合わせる動きは進んでいます。

たとえば、奥村組と岩手大学のチームは2025年12月、防水シートの表面にペロブスカイト太陽電池を積層した「太陽電池防災シート」の実証実験を開始したと発表。傾斜地や屋上など、従来ではパネルを置けなかった場所での発電を狙えて、防災にも役立てようというアプローチですね

「雨の日は損」から「雨の日も稼ぐ」へ。そんなパラダイムシフトの厚さが、たった100ナノメートルの保護膜というのがまた、なんともテクノロジーじゃないですか。

Source: HDBlog , ScienceDirect, Techxplore, 奥村組

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