突然の痛みに驚く「足のつり」の原因は脱水とは限らない…デスクワークの人が気をつけたい
■デスクワーカーが気をつけたい3つの疾患 足のつりを引き起こす病気は多岐にわたりますが、ここでは、特にデスクワーカーが注意すべき3つの疾患をご紹介します。 1.下肢静脈瘤 下肢静脈瘤は、静脈弁の機能不全によって血液が逆流し、足の静脈内に血液が滞留することで発症する病気です(Shekhawat. 2017)。 長時間の座位姿勢は静脈弁への負担を増やし、症状を悪化させる要因になるとされており、アメリカで行われた研究では、1日平均8時間以上座っている人は、4時間以下の人と比べて、下肢静脈瘤の発症率が有意に高かったことが報告されています(Łastowiecka-Moras. 2020 ; Brand et al., 1988)。 下肢静脈瘤の典型的な症状には、足のむくみ、重だるさ、痛み、湿疹、そして「足のつり」があります。実際に、下肢静脈瘤患者のうち83.3%が足のつりを経験していたというデータもあります(Hirai et al., 2003)。 ここで注意したいのは、血管がボコボコと浮き出るような外見上の変化がない場合でも、「かくれ静脈瘤」が起きている場合があることです。 多くの方が「下肢静脈瘤=血管の浮き出し」と思いがちですが、外見上に異常がなくても、むくみ、だるさ、足のつりなどが続く場合は、下肢静脈瘤の可能性があります。 この病気は中高年を中心に多くの方がかかる身近な疾患ですが、放置すると皮膚潰瘍を合併したり、深部静脈血栓症のリスクを高める要因にもなるため、早期の対応が重要です(Lee et al., 2015 ; Müller-Bühl et al., 2012)。 2.末梢動脈疾患(PAD) 末梢動脈疾患(PAD)とは、足の動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりすることで足先への血流が妨げられる病気です。最近の研究でも、長時間の座位姿勢がその発症リスクを高めることが報告されています(Said et al., 2023)。 動脈の内壁にコレステロールなどが蓄積して血管が硬く狭くなると、筋肉に必要な酸素や栄養が届かなくなり、しびれや痛み、間欠性跛行(かんけつせいはこう)(歩行中にしびれや痛みが現れ、しばらく休むと回復する)が現れます。さらに進行すると潰瘍ができたり、重症化して壊死に至ることもあります(National Institutes of Health. 2024)。 また、PADを放置すると、命にかかわる重篤な心血管疾患に進行する可能性もあります。たとえば、間歇性跛行を有する人のうち、約20%が5年以内に心筋梗塞や脳梗塞を発症し、10年後の死亡率は約63%に達するという報告もあります(Weitz et al., 1996 ; Sartipy et al., 2018)。
PADは、初期症状として「夜間の足のつり」が現れることもあり、頻繁に足がつる場合は、この病気の初期段階である可能性も考えられます(Lam et al., 2022)。