大統領でも議会でもない…アメリカを本当に動かす「見えない権力」がわかる3冊【池上彰】(ダイヤモンド・オンライン)

 アメリカ政治を動かしているのは、大統領や議会だけではない。捜査機関であるFBIは、かつて違法な盗聴や家宅捜索を繰り返し、NSA(国家安全保障局)は同盟国まで監視対象にしていた。そして、選挙で選ばれない最高裁判事たちも、国の行方を左右する。池上彰氏が選んだ3冊から、自由と民主主義の国の裏側にある権力構造を読み解く。※本稿は、ジャーナリストの池上 彰『知の本棚』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 違法な盗聴を重ねたFBIの過去を暴く 『FBI秘録 その誕生から今日まで』  2013年6月、アメリカのエドワード・スノーデン元CIA職員が暴露したアメリカ政府による盗聴の実態には驚かされましたが、これは何も目新しい出来事ではなかったことが、この本で赤裸々に明かされます。  著者は元ニューヨーク・タイムズ記者。刊行前に機密扱いを解かれたばかりの政府の文書を元に書き上げました。  FBIは「アメリカ連邦捜査局」として知られています。アメリカの警察は大きく自治体警察と国家警察とに分かれています。連邦捜査局は、州を越える犯罪や連邦法に違反する事件を捜査する機関ですが、実は警察の範疇を超えた諜報機関なのです。  FBIで48年間にわたって指揮を執ったエドガー・フーヴァーが、この組織をより強大なものにしました。フーヴァーは、「敵」とみなした人物や組織を対象に盗聴や違法な家宅捜索を繰り返しました。政治家のスキャンダルを把握すると、これを武器に独立王国を築きます。警察が違法行為の先頭に立っていたのです。  フーヴァーが死ぬと、FBIは諜報部門を廃止。本来の警察組織に立ち返りますが、その代わり、テロとの戦いに後れをとるようになります。その結果が、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロでした。

 この事件の1カ月前、FBIの地方支局の捜査官は、ボーイング747の飛行訓練を受けながらも離陸にも着陸にも興味を示さないアラブ人がいることを把握。捜査の拡大を要請しますが、FBIの組織は動こうとしませんでした。巨大な官僚組織となったFBIは、テロ対策に失敗するのです。  ところが、テロが起きると、一転して徹底した盗聴を再開します。何百万もの電話の通話記録を分析し、今度は電話ばかりでなく、インターネットでのメールのやりとりを盗み見るようになります。  スノーデン元CIA職員はアメリカのNSA(国家安全保障局)の世界的な盗聴を暴露しましたが、FBIもまた、法律を無視して盗聴を繰り返していたのです。  しかし、こうした違法行為も、この本の著者によって明るみに出ます。それが可能になったのは、政府の機密も、いつかはオープンにされるというアメリカの制度です。そこから国家権力への監視の目も育ちます。  2013年、日本でも特定秘密保護法が成立しましたが、秘密保護の解除制度は、民主主義を支える上で必須であることを教えてくれます。  <ティム・ワイナー『FBI秘録 その誕生から今日まで(上・下)』山田侑平訳、文藝春秋、2014年> ● NSAの極秘文書が明かす日米関係の真実 『暴露 スノーデンが私に託したファイル』  元CIA職員のエドワード・スノーデンが暴露したアメリカの盗聴工作は、どのようにして行われていたのか。スノーデンから極秘書類を受け取り、新聞記事に書いたジャーナリストが、その全貌をまとめました。  アメリカのスパイ組織としてはCIAが有名ですが、世界中の電話を盗聴したり、通信、インターネットを盗み見たりしているのはNSA(国家安全保障局)という巨大組織です。スノーデンは、アメリカ同時多発テロをきっかけに愛国心に燃えて軍に入りますが、負傷して除隊。CIAに誘われて入ったところ、その秘密工作の手法に失望。さらにNSAの違法行為も知り、暴露しようと考え、NSAの下請け企業に入社することで、内部の極秘文書を入手しました。

ダイヤモンド・オンライン
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