「1.1%の壁」越え広がる先高観、タカ派日銀が導く長期金利1.5%の道

越すに越されぬ「1.1%の壁」を年明け以降一気に突破した日本の長期金利に先高観が広がっている。日本銀行が追加利上げに動き、さらなる金融緩和の調整も辞さないタカ派姿勢を維持する中、市場関係者が見据える次のターゲットは1.5%だ。

  SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは2025年末の長期金利の水準を1.5%と想定し、JPモルガン証券は年末の見通しを1.5%から1.55%に上方修正した。ブルームバーグのデータによると、アナリストの25年末の利回り予想は平均で1.38%。日銀が昨年12月に公表した債券市場サーベイ(11月調査)でも1.32%となっていた。

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  長期金利の1.5%は09年以来の水準だ。同時に、日銀がゼロ金利政策を導入した1999年2月から続くレンジの上値圏に位置し、本格的な「金利ある世界」の入り口とも言える。現在1.6%程度の中国の長期金利との逆転も視野に入り、世界で最も金利が低い国債として長らくアクティブ運用を見送ってきたトレーダーらが戦略の変更を迫られる可能性がある。

  かんぽ生命保険の野村裕之執行役員兼運用企画部長は、長期金利は年内に1.5%近くまで上昇し、その水準になれば生保など機関投資家だけでなく、事業会社や個人投資家の国債に対する需要を喚起すると予測。「日本の金利がぐっと上がった時こそチャンス。皆買い場を狙っている」と話している。

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  昨年の債券市場では日銀のマイナス金利解除と追加利上げを経ても、長期金利は1.1%を抜けなかった。しかし、米国金利高の流れもあり、年末にこの壁を越えると年明けには1.255%まで上昇。1カ月ほどで景色が変わり、この間米新政権の動向を見極めるハト派色を打ち出していた日銀のトーンも変化し、1月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%に引き上げた。

  日銀が今回利上げしたのは昨年7月以来で、市場では今後も半年に1回の利上げを予想する向きが多い。りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、追加利上げは6-9月のどこかとみるが、経済や物価が日銀の見通し通りなら「5月1日の会合もライブになる」と指摘。政策金利が0.75%引き上げられた段階で、長期金利は1.5%に近づくと読む。

  キャピタル・エコノミクスのシニア市場エコノミスト、トマス・マシューズ氏はOISレートから推計したターミナルレート(利上げの最終到達点)は1%に届かず、植田和男総裁が示す中立金利を下回っていると言う。日本は賃金上昇率の持続的加速で緩和策を真に終える条件が整いつつあり、政策金利は1.25%に達し、2025年末の長期金利は1.75%と中国の10年金利を上回るとの見方を示す。

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  もっとも、利上げの実施時期は為替や夏の参議院選挙など国内政治情勢、トランプ大統領の政策と米国の経済・金融政策の影響を多分に受ける。円安の加速でインフレ懸念が再燃すれば利上げペースは速まり、長期金利にも上昇圧力が強まる半面、不透明感で利上げペースが遅れれば低下圧力がかかるだろう。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、市場で織り込まれつつあるターミナルレート1%に向け半年に1回程度の利上げというパス(経路)に大きな変化がない場合、長期金利の上昇余地は限られると言う。

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