F1カナダGP:「全責任」のノリスに”無意味ペナルティ”―ピアストリとの絆、同士討ちでも崩れず

6月16日に開催された2025年F1第10戦カナダGP決勝を経て、FIAのスチュワードは、チームメイトのオスカー・ピアストリと接触したランド・ノリス(マクラーレン)に対し、5秒のタイムペナルティを科す決定を下した。

ただし、このペナルティは次戦オーストリアGPでのグリッド降格にはつながらず、カナダGP内での処分として扱われる。そのためノリスにとっては、最終順位に一切影響を及ぼさない、実質的に意味を持たないペナルティとなった。

ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで行われた70周のレースは、コンストラクターズ選手権争いをリードするマクラーレン勢のまさかの同士討ちという結末を迎えた。一方で、ノリスはレース後にピアストリに対して公に謝罪。その誠意ある姿勢が注目を集めている。

接触はレース終盤、メインストレート上で発生。ノリスがピアストリの左側から追い越しを試みたが、スペースが足りずに両者が接触した。スチュワードによれば、ノリスは聴聞の場で「スペースがあると思ったが、ないと気づいたときにはすでに遅かった」と述べたという。

エンリケ・ベルノルディを含むスチュワード陣は、ノリスに「全責任」があると判断。一方で、接触によりピアストリに明確な競技上の損害がなかったことから、5秒のタイムペナルティという比較的軽い処分に留めた。

ノリスはこの一件でリタイアを喫したが、ピアストリはマシンに大きなダメージを負うことなく、4位でレースを完走した。

リタイアするなどして、レース中に科されたタイムペナルティを消化できなかった場合、スチュワードは次戦でグリッド降格という代替ペナルティを科すことができる。

ただし、ノリスは「完走扱い」とされているため、今回の5秒ペナルティはカナダGP内で有効と見なされ、次戦への影響はない見通しだ。

チーム内対立の火種には至らず

F1においてチームメイト同士の接触はしばしば波紋を呼ぶが、今回のケースでは両者ともに冷静な姿勢を貫いており、チーム内の対立に発展する気配は見られない。レース後、ピアストリはノリスからの謝罪を受け、次のように語った。

「ランドは本当にいいヤツで、思ったことをそのまま口にする人間なんだ。たとえそれが自分にとって不利になる内容であっても関係ない、そういう性格なんだ。それって、すごくいいことだと思う」

「チームとしても、こういう話がきちんとできるのは大事だし、たとえ物事がうまくいかないときでも、それを乗り越えられるのはポジティブなことだ」

さらに、「今回の件で関係が変わることはない」と断言し、今後も良好なチーム関係を維持できるとの見方を示した。

この発言を受けてノリスも次のように応じている。

「そう言ってくれてうれしい。もちろん彼が納得してるわけじゃないのは分かってる。もし逆の立場だったら、僕だって同じように怒ってたと思う」

「だから、謝らないといけない。彼はそれまでフェアにバトルしてくれていたし、それこそが望ましい形だった。悪かったのは僕だけ。誰も悪くない。僕が全部悪いんだ」

ノリスは、マクラーレンに対しても深い謝意を示した。

「マクラーレンは僕にとって家族みたいな存在だ。毎週末、チームのために走ってる。時には自分のためよりも、チームのために頑張ろうとしてるくらい」

「それだけに、今日みたいな瞬間に彼らを裏切るようなことをしてしまって、自分でもすごく後悔してるし、自分が情けない。本当に誇れることじゃない。チームを失望させてしまったっていう感情が、一番つらい。だから、チーム全員、そしてオスカーにも心から謝りたい」

2025年F1第10戦カナダGPでは、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がポール・トゥ・ウインで通算4勝目を飾り、メルセデスに今季初優勝をもたらした。2位はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。3位にはアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が続き、キャリア初の表彰台を獲得した。

次戦はレッドブル・リンクを舞台に開催される第11戦オーストリアGP。現地時間6月27日(金)のフリー走行1でレースウィークが幕を開ける。

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