順天堂大学が盤石の走りで箱根本戦出場を決める 「5強崩し」を目標にエース育成へ
第102回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
10月18日@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園(21.0975km)
1位 中央学院大学 10時間32分23秒2位 順天堂大学 10時間32分35秒3位 山梨学院大学 10時間32分44秒4位 日本大学 10時間32分57秒5位 東海大学 10時間34分07秒6位 東京農業大学 10時間34分59秒7位 神奈川大学 10時間36分07秒8位 大東文化大学 10時間36分12秒9位 日本体育大学 10時間36分14秒
10位 立教大学 10時間36分56秒
10月18日に開催された第102回箱根駅伝予選会で、順天堂大学が総合2位に入り、15年連続67回目の本戦出場を決めた。昨年は、11位に1秒差という、薄氷を踏む思いで予選会通過を決めたが、今回は、出場した選手の上位10人が1時間03分台以内で走る盤石さを見せた。本戦では、青山学院大学や駒澤大学、國學院大學などの5強を切り崩すことを目標に据える。
エントリーメンバーが非常に良い状態
予選会が終わり、結果発表を待つ順天堂大の選手たちの顔には自信が漂っていた。総合1位は中央学院大学に譲ったものの、2位で順天堂大の名が読み上げられると、選手たちはハイタッチ。喜びを爆発させるというよりも、やや控えめな笑顔に、「通過は当然」という自負をのぞかせた。長門俊介監督は、エントリーメンバー14人が非常にいい状態で、最後に外す2人を誰にするのか迷ったという。「私も落ち着いてこの日を迎えることができ、選手たちもそれを感じてくれたと思います」。レース前には、「力はついているから、自信をもって走ろう。ただ、足元をすくわれないように」と話して選手を送り出したという。
吉岡大翔がチームトップでゴール
チームトップの走りを見せた吉岡大翔(撮影・井上翔太)この日のレースプランは、出場した12人のうち、5人が集団となって5kmを15分~15分15秒で刻み、残りの7人には細かい指示を出さず、フリーで走る形にした。他の大学がペースによって集団を二つに分けてチーム走に徹するのに対し、順天堂大は選手個人に判断を委ねた形だ。チーム内で1着になった吉岡大翔(3年、佐久長聖)は、序盤から日本人のトップ集団に位置取り、安定したペースでレースを進めた。5kmのラップタイムは、14分57秒、14分46秒、14分47秒、14分56秒。終盤は集団から徐々に離されたが、全体26位となる1時間02分34秒でゴール。吉岡を追った小林侑世(3年、春日部東)は、15kmを吉岡から2秒差で通過。その後、徐々に距離が広がり、1時間02分46秒の31位でレースを終えた。
吉岡大翔に次いで、チーム2着でゴールした小林侑世(撮影・松崎敏朗)吉岡は17km過ぎの折り返しで、小林や井上朋哉(1年、洛南)ら後続のチームメートと距離が開いていないことを確認。2週間後に全日本大学駅伝が控えていることも考慮し、余裕を持ってレースを終えたという。チーム内で3着に入った井上は、初めてのハーフマラソン。途中まで主将の石岡大侑(4年、出水中央)と走っていたが、後半にペースを上げて1時間02分50秒の35位に入り、出場した1年生のうちではトップの記録をマーク。前半は抑え気味に入り、ペースを上げそうになった時には、主将の石岡からハンドサインで自重するように指示も受けたという。
入学当初は練習の量、質ともに上がったことで、前半シーズンは故障して思い通りに走れなかったが、練習を調整してコンディションを上げてきた。この日の走りに長門監督も賛辞を送った一方、本人は気を引き締める。「この実力だと、シード争いはできないと思うので、現状に満足することなく上を目指して頑張っていきたいです」
1年生ながら1時間02分50秒でチーム3着に入った井上朋哉(撮影・藤井みさ)7秒差に泣いた悔しさを胸に練習に打ち込む
「相当、手応えがある中での選考会になりました。プラン以上でした」。予選会通過を決めた石岡は、笑顔で語った。吉岡と小林が先行する中、石岡は井上に加えて山本悠(2年、八千代松陰)と中盤まで伴走し「いい戦いができている」と感じていたという。主要メンバーが上位にいることを確認しながら走れたことで「ハラハラするのではなく、どっしりと構えた状態でレースを進められました」
主将としてチームを引っ張った石岡大侑(撮影・松崎敏朗)第101回箱根駅伝では最終10区までシード争いを演じたが、惜しくも7秒差で逃し、その悔しさを胸に練習に打ち込んできた。全日本大学駅伝の関東地区選考会では、危なげない走りで3位に入り、本戦出場を難なく決めた。その後の夏季練習はジョグの距離を延ばすなど、練習のボリュームを増やして質の高い練習にも取り組んだ。予選会を意識し、練習時間を朝の早めにするなど対策も徹底してきた。「本戦では16人のメンバーが登録されるので、そのメンバーに入るのにも、すごい戦いになると思います」と石岡は話す。
箱根駅伝の予選会通過を決めて、石岡大侑主将とハイタッチする長門俊介監督(左)さらなるエース育成を目指す
今年の学生駅伝は、青山学院大、駒澤大、國學院大、中央大学、早稲田大学が5強と目されている。順天堂大が本戦で掲げる目標は、その一角を崩しての5位以内。総合力を上げて順調にレースを進められたことを成果として挙げる一方、長門監督と石岡は、本戦に向けた強化ポイントについて「エースの育成」と口をそろえる。最有力はこの日のレースでチームトップの吉岡だが、長門監督は「他にも出てくる選手がいると思います。『順天堂のエース』と言われた時に、名前がバッと出る選手を育てたい」と語る。
5強を崩すため、レースの流れを大きく変えるゲームチェンジャーが生まれるかどうか。この日の結果に満足することなく、本戦に向けた競争がチーム内で続いていく。