中央大学は箱根駅伝で2大会連続の5位 総合優勝までの「距離感」を、価値ある蓄積に

上原伸一

2026/01/10

(最終更新:

自身最後の箱根駅伝は9区を走った中央大学の吉居駿恭(撮影・佐伯航平)

第102回箱根駅伝

1月2・3日@東京・大手町〜箱根・芦ノ湖間往復の217.1km

1位 青山学院大学 10時間37分34秒=大会新2位 國學院大學  10時間40分07秒=大会新3位 順天堂大学  10時間43分55秒 4位 早稲田大学  10時間44分29秒 5位 中央大学   10時間44分31秒 6位 駒澤大学   10時間44分50秒 7位 城西大学   10時間46分17秒 8位 創価大学   10時間51分40秒 9位 帝京大学   10時間53分15秒

10位 日本大学   10時間53分56秒

1月2日、3日に開催された第102回箱根駅伝で、優勝候補の呼び声も高かった中央大学は5位に終わった。だが、例年以上に箱根駅伝にフォーカスしながら取り組んできたことは、価値あるチームの蓄積になった。

往路では「27分台ランナー」4選手が想定通りの走り

今大会の中大は青山学院大学、國學院大學、早稲田大学、駒澤大学とともに優勝候補の一角に目されていた。「5強」の中でスピードはナンバーワン。主将の吉居駿恭(4年、仙台育英)をはじめ、10000mの持ちタイムが27分台の選手を6人擁し、上位10人の平均タイムは、大会史上初の27分台となる27分55秒98をマークしていた。

30年ぶりの総合優勝に向かい、1区から藤田大智(3年、西脇工業)がスピードを発揮した。序盤から先頭に立ってハイペースを作り、2位で2年連続「花の2区」を任された溜池一太(4年、洛南)に襷(たすき)を渡した。トップの國學院大・青木瑠郁(4年、健大高崎)とは9秒差ついたが、中大OBの吉居大和(現・トヨタ自動車)が樹立した区間記録(1時間00分40秒)を3秒更新した。

レース序盤から先頭に立ち、ハイペースを作った藤田大智(撮影・藤井みさ)

藤原正和監督が大会前、区間配置について唯一明言していたのが、2区の溜池だった。自身4年連続となる往路。今大会も順位を守り、前回よりもタイムを上げて3区の本間颯(3年、埼玉栄)につないだ。

前回3区で区間賞を獲得した本間は、今回も圧巻だった。トップの城西大学をかわし、前回よりもタイムを8秒縮めて平塚中継所へ。2大会連続の区間賞に「今年は狙って取った区間賞。前回より喜びは大きい」と胸を張った。藤原監督は「3年生の踏ん張りが優勝への一つのカギ」と事前に口にしており、次期エース候補が満点回答で応えた。

チームがつかんだ流れを4区の岡田開成(2年、洛南)は渡さなかった。ルーキーイヤーの前回は7区で高校の先輩、駒澤大学の佐藤圭汰(4年、洛南)に大きな差をつけられた。当時を「求められていたゲームチェンジャーとしての役割を果たせなかった」と振り返る岡田。その悔しさを糧に、区間2位の走りで5区の山登り区間に入った。

藤田、溜池、本間、岡田の4人は、いずれも10000mで27分台の自己ベストを持つ。4人とも藤原監督の想定通りに走った結果、4区を終えた時点でトップ。2位の早稲田大とは1分12秒、5位の青山学院大とは3分24秒の差があった。

岡田開成(右)が区間2位の走りを披露し、5区の柴田大地に襷をつないだ(撮影・佐伯航平)

藤原正和監督「エースの仕事をさせてあげられなかった」

中大は今回「山対策」を強化してきた。託されたのは、トラックで3000mSCを専門種目とし、昨年11月の全日本大学駅伝4区で区間賞を獲得した柴田大地(3年、洛南)。ルーキーイヤー以来の箱根路出走に向けて、昨夏から5区のトレーニングをしてきたという。

だが、早稲田大の工藤慎作(3年、八千代松陰)や青山学院大の黒田朝日(4年、玉野光南)には太刀打ちできなかった。特に黒田の異次元の走りには、藤原監督も脱帽だった。「柴田には71分台で走ってほしかったが、柴田が……というよりも、黒田君がすごすぎたということだと思います」

5区で順位を二つ落とし、往路優勝の青山学院大とは1分36秒の差がついた。ただ大会前、藤原監督は「往路で1分半くらいの差なら復路でひっくり返せる」と口にしていた。復路逆転に向けてギリギリ射程圏内という認識だったに違いない。

前回8区20位だった佐藤大介(左)は今回、同じ区間を4位で走り戸塚中継所へ(撮影・松崎敏朗)

しかし、シナリオは現実のものにならなかった。熟慮の末に終盤勝負と見た藤原監督は吉居を9区に置いたが、襷を受けた時点で青山学院大との差は3分14秒。先頭の背中は遠く、吉居が爆発的な走りをすることはできなかった。藤原監督は「結果としてエースの仕事をさせてあげられなかった」と悔やんだ。

全体の配置についても悔いが残ると明かした。「もっと選手の能力を効果的に機能できる最適な配置があったと思います。総合優勝できなかったので、自己採点は50点でしょうか」。最終的には10区で順位を二つ下げ、前回と同じ総合5位でフィニッシュした。

アンカーを務めた吉中祐太、今季はオーバートレーニング症候群などに見舞われたところから箱根路に戻ってきた(撮影・北川直樹)

青山学院大との差を通じて、得られた収穫

箱根駅伝総合優勝を最大の目標に据えていた中大は今シーズン、周到な準備を重ねてきた。

本間は「夏合宿ではチーム全体としてかなり距離を踏みました。僕も例年は1000 kmほどですが、トータルでは150kmぐらい多かったと思います。それぞれ『トラックに力を入れたい』とか『スピード練習をやりたい』という気持ちはあったようですが、そこを抑えながら、チームとして箱根駅伝に照準を合わせて練習に取り組みました」と振り返る。

チームとしての意思統一をしながら、個々の能力も高め合った。

「速い選手が多いのでどんどん結果で示していかないと、自分はもちろん、主将の駿恭さんや溜池さんであってもメンバー落ちしてしまうような緊張感が、普段の練習からありました」

2大会連続で3区区間賞に輝いた本間颯(撮影・北川直樹)

だが、今回も青山学院大の壁は高かった。2度目の3連覇を果たした箱根王者との差は何か。藤原監督はこう考えている。

「色々ありますが、まずは選手の層です。青学さんは層が厚いので、たとえ出雲駅伝や全日本大学駅伝で結果が出なくても、原晋監督は全く動揺することなく(毎年11月下旬に行われる)MARCH対抗戦の頃にはしっかりと戦力を整えてくるのです。それと原監督が、1年かけてどうやってチームを作っていけばいいかを熟知している点でしょうか。言い方を変えれば、勝ち方を知っているのです」

それでもこれまでとは得られた収穫が異なる。優勝候補に挙げられながら13位に終わった前々回は、総合優勝との「距離感」が分からないままはね返されたが、今回は分かった上ではね返された。課題はより明確になった。

藤原監督は選手だけでなく、自らも進化していかなければならないと認識している。

「やっぱり僕ら若い世代で、原さん世代の人たちを倒していかないといけないと思うので。駒大の大八木さんからは『俺が(順天堂大学の元監督)澤木啓祐さんを倒したように、お前たち世代が頑張って、原を倒さないといけないよ』と言われまして。分かっているんですけど、と思いながらも、その時は『頑張ります』と返したんですが(笑)、自分たちの世代の中からまた新しいものが生み出されるとも思うので、もっともっと原さんから学んで、自分自身もまた成長させて、チームをビルドアップさせていきたいと思っています」

ストップ青学へ、再び中大にとってチャレンジの1年が始まった。

新チームに主将は1区を走った藤田(左)が務める(撮影・有田憲一)

関連記事: