ヘッジファンド、円高見込むポジション積み増し-日米財務相会談想定
日米財務相会談が今週開かれて為替協議が行われる可能性があり、ヘッジファンドや長期志向の投資家は円高・ドル安を見込むトレードを再開している。
加藤勝信財務相は16日、今週カナダで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の際にベッセント米財務長官との為替協議の機会を設けたい意向を表明した。市場では、トランプ政権がドル安にオープンな姿勢であるとの観測がある。
先週には、米国と韓国が今月初めの貿易協議の際に為替政策を議論したとのブルームバーグ・ニュースの報道を受けて、円を含むアジア通貨が上昇していた。
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野村インターナショナルのG10為替スポット取引責任者アントニー・フォスター氏(ロンドン在勤)は、「ヘッジファンドや長期投資家によるドル・円売りやクロス・円売りの動きが見られる」と指摘。「日本も自国通貨押し上げ圧力にさらされる可能性があるとの思惑で円の買い手が戻っている」と話した。
昨年11月の米財務省の外国為替報告書では、日本と韓国はいずれも為替慣行に関する「監視リスト」に含まれた経緯がある。
アジア時間19日早い時点のドル・円相場は一時0.6%安の1ドル=144円81銭で取引された。米格付け会社ムーディーズ・レーティングスが16日、財政赤字や連邦債務残高の拡大を理由に米国の信用格付けを最上位から1段階引き下げたと発表したことが響いた。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、13日までの1週間でレバレッジファンドの円買いポジションは2万4741枚と、2019年9月以来最大規模となった。ドル・円は今月12日に一時148円65銭と5週間ぶりの高値を記録したが、これは一部のファンドにとって、魅力的な水準でドル・円を売却する好機となったと見受けられる。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアジア太平洋G10為替取引責任者、イワン・スタメノビッチ氏(香港在勤)は「148円を上回る上昇により、新たにドル安・円高のポジションを取る魅力が増した」との見方を示した。
野村インターナショナルも、円高になれば価値が上昇する通貨オプション取引への関心が高まっていると指摘する。
同社のシニア外国為替オプショントレーダー、サーガル・サンブラニ氏(ロンドン在勤)は、先週初めには外国為替市場のインプライド・ボラティリティー(IV)がトランプ大統領が広範な関税措置を発表した4月2日以前の水準まで低下し、低下局面では円高傾向を狙った同社顧客による強い買いが見られたと明らかにした。
同様のコールオプションとプットオプションの価格を比較するドル・円のリスクリバーサルは、この通貨ペアに対する弱気なポジションが増加したことで、上昇リスクに比べて下落リスクをヘッジするコストが先週上昇したことを示している。
UBSウェルスマネジメントのストラテジスト、テック・レン・タン氏(シンガポール在勤)は、ドル・円のリスクリバーサルはこの数日、ドル・円のプットオプションに対する需要の増加を示しており、これは韓国が米国との通貨協議について言及したことが背景にある可能性が高いと指摘した。
原題:Hedge Funds Reload Long Yen Trades Ahead of Kato-Bessent Meeting(抜粋)