「日本は外国人労働者に選んでもらえなくなる」中国人女性が不法就労“助長”で退去強制 「無過失・不起訴」のはずが…裁判所は「処分妥当」なぜ?

ベトナム人の不法就労を「助長」したとして退去強制処分を受けた中国人女性のXさんが、同処分の前提である入管による「不法就労助長」の認定の取り消しを求めていた訴訟で、東京高裁は7月24日、一審の東京地裁の判決(3月18日)を支持し、Xさんの控訴を棄却した。 【画像】国籍・地域別 入管法違反事件の件数推移(2022年~2024年) 重要な争点となったのは、入管法違反にあたる「不法就労助長」を行ったとされた人に故意や過失がない場合でも、退去強制の対象となるか否かである。 これは「外国人問題」ではない。「行政法規に違反する行為をした人に故意・過失がなくても、制裁を加えて良いのか」という、日本人か外国人かを問わず、わが国で暮らす人すべてに関係する「一般的な法律問題」である。 従来、行政法規に違反した者に対し、「過料」などの制裁的な行政処分を行う場合、対象者に基本的に「故意」や「過失」といった「主観的要件」は不要と解されてきた。 しかし、今日、その考え方には、対象者がこうむる不利益の大きさ、取り締まり効果の点等から、疑問が呈されるようになってきている。また、裁判例によっては対象者の「過失」を要求するものもあらわれている。 さらに、本件についてはそれに加え、適法な在留資格等の法的根拠のもとに日本社会で生活の基盤を築いている外国人に対し、それを奪う重大な不利益を与える退去強制処分についてまで「過失は不要」とすることが妥当か、という問題が浮かび上がる。

Xさんは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有し、関西の人材派遣会社A社で契約社員として働き、派遣登録を希望する外国人の面接を担当していた。 Xさんの業務は、採用希望者からの提出資料を授受し、不足がないかを確認するにとどまり、在留カードの確認等を行う旨は指導されていなかった。 2021年に、Xさんが面接を担当しA社が採用したベトナム人が、実際には就労資格がなかったことが発覚し、大阪府警が捜査したものの、同年12月にXさんは不起訴処分(起訴猶予)となった。 しかしその後、入管がこの件を立件し、調査の結果、Xさんは、外国人の不法就労を助長したとして、退去強制事由(入管法24条3号の4イ)にあたる旨を認定した。 Xさんは現在、最高裁に対し上告ないし上告受理申立てを行っている。 なお、雇用主であるA社は、Xさんを擁護し、弁護士費用等も負担するなど、訴訟活動を支援している。 高裁での審理からXさんの代理人を務める松村大介弁護士(舟渡国際法律事務所)は、Xさんに過失らしきものがないことについて、以下のように語った。 松村弁護士:「Xさんはもともと採用部門ではなく『管理部』の人でした。日本語の能力が万全ではないにもかかわらず、当時社長だったB氏(現在は解任)の都合で、訳も分からないままに『あれもやれこれもやれ』と指示され、それに従わざるを得なかったという背景があります。 B元社長は入管の取調べに対し、採用部門での確認が不十分だったことの責任をすべてXさんに押し付けるような発言を行っていました。『いちいち社長が採用判断していたら割に合わないので現場の判断に任せていた』などと発言しています。 しかし、一契約社員にすぎず、日本語能力に不安のあるXさんに、そんな大きな権限を与えること自体、不自然であるし、問題が大きいといわざるを得ません」

弁護士JPニュース
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