ウクライナとフランス、ラファールとSAMP/T

ウクライナ大統領府とエリゼ宮は14日「両大統領による共同声明」というプレスリリースを発表し、この中で言及した「ウクライナは最初のラファール16機と兵装の発注を発表する」という表現は「商業契約の締結」を意味しておらず、これは政治レベルでの枠組み合意に過ぎない。

参考:Joint declaration by the President of the French Republic and the President of Ukraine. 参考:Joint Declaration by the President of Ukraine and the President of the French Republic 参考:Paris et Kiev s’entendent sur une «feuille de route» pour livrer 16 Rafale à la force aérienne ukrainienne en 2028/29 参考:Ukraine agrees on plan to acquire 16 Rafale jets, France’s Macron says

ゼレンスキー大統領とマクロン大統領は2025年11月「仏製装備品取得に関する意向書に署名した」と発表、この意向書にはラファールF4×100機、Aster30 B1-NTとGF300を含むSAMP/T-NG×8セット、AASM×600発、対ドローンシステムなどの購入が含まれていたが、この仏製装備品取得には「誰が資金を供給するのか」というアイデアが欠けていたため、多くのメディアは「今のところ実現性が疑わしい計画だ」と見なしていた。

出典:President of Ukraine

パリで弾道ミサイル迎撃連合の設立が発表された13日、マクロン大統領は「昨年11月に署名したこれらの意向を具体化することができた。最初の防空システムの出荷、近代化、ウクライナによるラファール取得だ。最初の機体は2028年から2029年の間にウクライナの空を飛ぶことになるだろう」と述べ、フランスメディアのfranceinfoも「フランスとウクライナは16機のラファール調達を規定するロードマップに合意した」「今後数週間以内に次世代SAMP/Tの第一陣がウクライナに配備される」「この合意にはウクライナ国内におけるAASM、ASTER30、SCALP-EGのライセンス生産も含まれている」と報じた。

ウクライナ大統領府とエリゼ宮は14日「両大統領による共同声明」というプレスリリースを発表し、この中で「2025年11月17日に両首脳が署名した意向表明に基づき、両国はウクライナと欧州にとって最も重要な安全保障の要となるウクライナ軍の装備化を加速するため協力していく意向を再確認する。両国はウクライナの航空戦力、防空、対弾道ミサイル防衛能力を強化するプロジェクトを優先することに合意する。ウクライナはEUのウクライナ支援融資に関する合意枠組みに則り、防衛関連項目の実施における防衛関連の優先事項が、ウクライナと欧州連合の防衛産業ならびに技術基盤の統合と協力を強化するものであると確認する」と言及。

出典:Élysée

“ウクライナは最初のラファール16機と同機の兵装の発注を発表する。これに必要な資金は2026年および2027年のウクライナ支援融資及びその他の資金源を通じて手当てされる。早ければ2026年に開始されるウクライナ人パイロットと整備士の訓練が完了次第、最初の4機がウクライナ軍に引き渡される。対地・対空兵器(AASM、対ドローン用のレーザー誘導ロケット弾、MICA、Meteorなど)もラファールの運用展開に応じて順次納入される。さらにフランスは2026年末までにウクライナにおけるAASMとSCALPのライセンス生産を承認し、可能な限り早期に開始することを許可した”

“ウクライナはまたフランスとイタリアが共同開発したSAMP/T-NGを4基発注する予定だ。これに必要な資金もウクライナ支援融資を通じて手当てされる。2026年の支援融資枠にはGM400×5基、GF300×1基、Kronos×1基の取得も組み込まれる予定だ。フランスはSAMP/T-NGを可能な限り早く納入することを約束しており、2027年以降に納入・認証が完了したモジュールの段階的な引き渡しを予定している。2026年末までにSAMP/T-NGの最初の構成要素としてGF300×1基がウクライナに配備される予定だ”

出典:Eurosam

“SAMP/T-NGを製造する間、フランスはウクライナにSAMP/T×2基を派遣し、SAMP/T-NG納入と同時にSAMP/Tを返還することを約束している。GM400×5基は2027年末までに引き渡される予定だ。これと並行して作戦上の緊急性に対処するため、フランスとイタリアはウクライナ支援融資を通じたユーロサムへのコミットメントを支援し、合意された数量のASTER30の引き渡しを2026年10月までに前倒しすることを決定した。さらにフランスとイタリアは2026年末までに、ウクライナにおけるASTER30のライセンス生産を承認し、可能な限り早期に開始する”

共同声明の中で言及された「ウクライナは最初のラファール16機と同機の兵装の発注を発表する」という表現は「商業契約の締結」を意味しておらず、これは政治レベルでの枠組み合意に過ぎない。franceinfoが「ラファール調達を規定するロードマップに合意した」と報じたように、Zone Militaireも「ウクライナのラファール調達に関しては正式な契約締結が一切発表されていない」と、Defense Newsも「ウクライナがフランスからラファールを取得する計画に合意した」と指摘し、SAMP/T-NG発注に関しても政治レベルでの枠組み合意に過ぎない。

出典:President of Ukraine

ウクライナとスウェーデンは5月28日にグリペン調達に向けた防衛協定を締結、6月30日にグリペンE購入に関する正式な協定を締結した直後、サーブも「ウクライナ向けグリペンE×16機に関する契約を約22億ユーロで受注した」と発表し、EUはウクライナ建国記念日の15日「ドローン、ミサイル、戦闘機の調達資金として承認済みの防衛・軍事援助枠(600億ユーロ)から新たに100億ユーロを融資する計画を承認した」と発表した。

欧州委員会の外交官はkyiv Independentの取材に「ドローン調達に約60億ユーロ(約1.1兆円)、ミサイル調達に約15億ユーロ(約2,800億円)、戦闘機調達に約25億ユーロ(約4,600億円)が充てられる」と明かし、戦闘機調達に充てられる約25億ユーロはグリペンE×16機調達のための資金で、まだ融資は実行されていないもののグリペンE調達資金はほぼ確保された格好だが、仏製装備品取得に関しては意向書署名から政治的に一歩前進したに過ぎず、今回の共同声明に基づいて「ウクライナがラファールとSAMP/T-NGを正式発注した」「2025年11月の意向書に基づく正式契約だ」と解釈するのは早計だろう。

出典:President of Ukraine

欧州委員会がウクライナ支援融資の防衛・軍事援助枠(2年分600億ユーロ)からラファール調達向けとSAMP/T-NG調達向けの融資計画を承認するか、融資計画が承認される強いシグナルでもなければ商業契約を締結することは不可能で、とにかくEUからのウクライナ支援融資で装備調達を実行する仕組みは非常に複雑であり、ラファールとSAMP/T-NGの正式発注にはまだ時間がかかる見込みだ。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Kelsea Caballero

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