ウクライナのラファール調達に伴う代償、誰が納入遅延を受け入れるか

フランスのマクロン大統領は「2028年から2029年の間にラファールがウクライナの空を飛ぶことになるだろう」と述べたが、ラファールは契約締結から組み立てを終えるまで3年かかるため、2028年までに引き渡すなら発注済みの海外輸出分かフランス空軍分をウクライナに回す必要がある。

参考:Les 16 Rafale destinés à l’Ukraine vont-ils être prélevés dans la commande passée par le ministère des Armées en 2024 ?

パリで弾道ミサイル迎撃連合の設立が発表された13日、マクロン大統領は「昨年11月に署名したこれらの意向を具体化することができた。最初の防空システムの出荷、近代化、ウクライナによるラファール取得だ。最初の機体は2028年から2029年の間にウクライナの空を飛ぶことになるだろう」と述べ、フランスメディアのfranceinfoも「フランスとウクライナは16機のラファール調達を規定するロードマップに合意した」と報じた。

出典:President of Ukraine

ウクライナ大統領府とエリゼ宮は14日「両大統領による共同声明」というプレスリリースを発表し、この中で「2025年11月17日に両首脳が署名した意向表明に基づき、両国はウクライナと欧州にとって最も重要な安全保障の要となるウクライナ軍の装備化を加速するため協力していく意向を再確認する。両国はウクライナの航空戦力、防空、対弾道ミサイル防衛能力を強化するプロジェクトを優先することに合意する。ウクライナはEUのウクライナ支援融資に関する合意枠組みに則り、防衛関連項目の実施における防衛関連の優先事項が、ウクライナと欧州連合の防衛産業ならびに技術基盤の統合と協力を強化するものであると確認する」と言及。

“ウクライナは最初のラファール16機と同機の兵装の発注を発表する。これに必要な資金は2026年および2027年のウクライナ支援融資及びその他の資金源を通じて手当てされる。早ければ2026年に開始されるウクライナ人パイロットと整備士の訓練が完了次第、最初の4機がウクライナ軍に引き渡される。対地・対空兵器(AASM、対ドローン用のレーザー誘導ロケット弾、MICA、Meteorなど)もラファールの運用展開に応じて順次納入される。さらにフランスは2026年末までにウクライナにおけるAASMとSCALPのライセンス生産を承認し、可能な限り早期に開始することを許可した”

出典:Élysée

共同声明の中で言及された「ウクライナは最初のラファール16機と同機の兵装の発注を発表する」という表現は「商業契約の締結」を意味しておらず、これは政治レベルでの枠組み合意に過ぎない。franceinfoが「ラファール調達を規定するロードマップに合意した」と報じたように、Zone Militaireも「ウクライナのラファール調達に関しては正式な契約締結が一切発表されていない」と、Defense Newsも「ウクライナがフランスからラファールを取得する計画に合意した」と指摘し、SAMP/T-NG発注に関しても政治レベルでの枠組み合意に過ぎない。

さらにZone Militaireは16日「この枠組みの合意は契約と同じ法的効力を持つものではない。さらにラファールは頭金を支払って契約が効力を持つようになってから、少なくとも組み立てに3年かかるため、今回の発表された注文をこれほど短期間(最短2028年)で履行できるのかが問題になる」「ウクライナに中古ラファールが納入される可能性は低いため残された可能性は2つしかない」「ダッソーが顧客から制裁を受けることを覚悟で輸出分をウクライナに回すか、フランス空軍が発注済みのラファール納入を待つかだ」と指摘。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Kelsea Caballero

フランスはクロアチアに移転した中古ラファール×12機の穴埋め分を含む42機(第5ロット)を2024年1月に発注し、この第5ロット生産分は2027年に納入が開始される予定で、Zone Militaireは「(正式な契約が締結されれば)ウクライナ納入分はフランスが3年前に発注したラファールから捻出される可能性が高い」と指摘し、ラファールのリードタイムは3年=36ヶ月だと判明したことが非常に興味深い。

F-35生産のリードタイムは約18ヶ月だが、これは全ての構成要素が揃った状態で最終組立にかかる時間で、契約上の納入期日を守るためには正式な契約を締結して支払いを開始する前に「リードタイムの長い主要部品の事前購入=Advanced Procurement」が必要になり、特に時間がかかるエンジンやアビオニクスのリードタイムは24ヶ月以上かかることもあるため、F-35調達全体のリードタイムと比較すればラファールのリードタイムが特に遅いというわけでは無い。

出典:Lockheed Martin

誰が納入遅延を受け入れることになるのかは謎だが、最終組み立てライン上にあるラファールをウクライナに回すなら、2028年納入のため正式な商業契約の締結を特に焦る必要なく、EUのウクライナ支援融資の2027年分で調達資金を確保しても問題ないだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Armée de l’Air et de l’Espace

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