「中国メーカー製携帯ゲーム機」を紹介したYouTuber、家宅捜索を受けて30台以上押収される。”違法商品の宣伝”とみなされたためか

イタリアのガジェット紹介系YouTuberのOnce Were Nerd氏は7月15日、イタリアの財務警察(Guardia di Finanza)によって家宅捜索を受け、刑事告訴されたことを明らかにした。非公式エミュレーター機能を搭載し、“海賊版ソフトの同梱版”が販売されている中国製携帯ゲーム機を動画で紹介したことが原因とみられる。海外メディアArs Technicaなどが伝えている。

Once Were Nerd氏が7月15日に投稿した動画によると、4月15日に突然6人の税務警察が同氏の自宅を訪れ、捜査令状を見せてきたのだという。税務警察は同氏が所有する30台以上の非公式エミュレーター機能付き携帯ゲーム機を押収。さらに、デバイスメーカーとのやり取りの記録のほか、仕事に使っていた携帯電話なども差し押さえられたそうだ。同氏は著作権を侵害するコンテンツの宣伝をおこなったとして、イタリア著作権法171条の3にもとづき、6か月以上3年以下の禁固および500万イタリアリラ以上3000万イタリアリラ以下(約45万円以上約267万円以下・レートは本稿執筆時点)の罰金が課される可能性があるという(著作権情報センター)。

捜査の対象となったのは、Anbernic・Powkiddy・TrimuiなどといったメーカーのAndroid搭載の携帯ゲーム機だ。これらは、スーパーファミコンやニンテンドー64などのレトロゲーム機の非公式エミュレーター機能を備えている。こうしたエミュレーターを使用すること自体は、技術的保護を迂回しない限りは多くの国において合法であるものの、上述したメーカーの製品では違法にコピーしたゲームソフトのROMが同梱されている場合があるという。メーカーはこれらのデバイスを、ROMを収録しているとみられるmicroSDカードとのバンドルというかたちで販売しているとのこと。またこれらのメーカーの大半が中国を拠点としており、欧米においては直接メーカーを取り締まることが難しい状況だという。

Image Credit: ANBERNIC on YouTube

Once Were Nerd氏はこれらのデバイスを動画で紹介。ただし同氏は、あくまでもほかのインフルエンサーと同様にデバイス自体のレビューをおこなっていたに過ぎず、メーカーから金銭を受け取ったり、アフィリエイトリンクの利用もしたことがないと主張している。自身に対する家宅捜索がおこなわれた経緯は不明だとしており、任天堂をはじめとするレトロゲームの製造元が告訴したのか、あるいは税務警察が独自に捜査をおこなっているのかは明らかになっていない。

そして家宅捜索から3か月が経った上述の動画を撮影している時点で、同氏が管理するYouTubeやInstagramなどのSNSアカウントを閉鎖する手続きの開始を知らされたとのこと。これをきっかけに動画の公開へと至ったそうだ。同氏は税務警察の捜査に対してあくまでも協力的に対応したとしつつ、判決を待たずにSNSが閉鎖される可能性があることや、自宅に訪れた税務警察の振る舞いなどについて不満を露わにした。今回の経験により心に大きなプレッシャーを感じており、今後長期にわたって続く捜査や裁判に対する不安も募っているようだ。

近年イタリアでは、こうした著作権法違反に対する取り締まりが強化されているのだという。今回はイタリア国内で著作権侵害の疑いがある機器を購入・紹介するインフルエンサーが当局の捜査の対象となったようだ。同氏はAnbernicをはじめとするメーカーのデバイスを紹介するインフルエンサーらに対して警鐘を鳴らしており、YouTubeで同様の活動をおこなうユーザーにも捜査の手が及ぶのかについても注目される。

なお先日には、海賊版ソフトを配布していた複数のWebサイトが、米連邦捜査局(FBI)とオランダの捜査機関の国際捜査に基づいて閉鎖に至っていた(関連記事)。今回の事例も見るに、特に海賊版ソフトに対する取り締まりが、世界的に強まっていることもうかがえる。

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