ヨーグルト商品名で「待った」 国家が起こした異例の裁判の行方

特許を巡り裁判で争われた「至福のギリシャ」=2025年2月7日午後0時41分、菅野蘭撮影

 「明治ブルガリアヨーグルト」は、「ヨーグルトは民族の心」とブルガリアから国名の使用を断られた過去がある。それでも、熱意が伝わって許可が得られ、今に至ったとされる。

 そんな歴史を知ってか知らでか、日本製ヨーグルトの商品名を巡る法廷闘争が勃発した。

 訴えたのは、日本人にもなじみがある外国国家だった。

硬めの質感で、濃厚な味わい

 青をベースとした背景に、スプーンのイラストをあしらった容器が目を引くヨーグルト「至福のギリシャ」。大阪府和泉市の乳製品メーカー「日本酪農協同」が販売する商品だ。

 日本の一般的なヨーグルトよりも、水分が少なく、ぎゅっと味が詰まっている。手軽にとれる高たんぱく質食品としても人気があるそうだ。

 ここで素朴な疑問が生まれる。なぜ、「ギリシャ」が商品名に使われているのだろう。

 オリンピック発祥の地で、多数の世界遺産を有し、農業や酪農が盛んなギリシャ共和国は、ヨーグルトの産地でもある。

 ギリシャ国ではかつてヒツジやヤギの乳を原料に、布袋を使って水分を除去するやり方でヨーグルトが作られていた。このため、一般的なヨーグルトとは異なり濃厚な味わいに仕上がる特徴がある。

 記者もギリシャ国から直輸入されたヨーグルトを食べてみた。少し硬めのしっかりとした食感が印象的だった。

 「至福のギリシャ」は、濃密な「本場」を意識した商品なのだろうと想像した。

「伝統製法」なのか

 「至福のギリシャ」は2021年4月、他の人からまねされず、独占的に使える「商標登録」を特許庁から受けている。その際、この商標を使う商品のカテゴリーを「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」とし、商品のパッケージでは「ギリシャスタイルヨーグルト」とうたった。

 問題は、「至福のギリシャ」が日本国内で、しかもギリシャ国の伝統製法とは言い切れない方法で製造されていた…

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