米関税で不確実性、政策運営「何ら予断持てる状態にない」=中川日銀委員
[前橋市 17日 ロイター] - 日銀の中川順子審議委員は17日、群馬県金融経済懇談会後の記者会見で、経済・物価の見通しが実現していけば利上げしていくという基本方針に変わりはないものの、米国の関税の影響を巡る不透明感により、具体的な政策運営は「今後の経済・物価・金融情勢次第で、今の時点で何ら予断を持てる状態にはない」と話した。
4月30─5月1日の次回金融政策決定会合に向けて情報収集に努め、経済・物価の見通しが実現する確度を見極めながら適切に政策判断していくと語った。
中川委員は米国の関税措置について「日本としても久しぶりに大きな困難、不透明感に直面している」と指摘。金融市場は「神経質かつ不確実で、不透明感が高まっている状況」だとした。
米関税政策は輸出や企業収益の下押し、市場変動などを通じて「わが国の経済を下押しする方向に働く要因になる」と述べた。物価については、経済の下押しが押し下げに作用する一方でグローバルサプライチェーンの再構築など供給サイドの要因が上押しに働く可能性もあるとし、上下双方向の要因を挙げた。
その上で、政策運営について「その時その時点での経済・物価情勢や金融市場の動向を丁寧に確認した上で、適切に判断していきたい」と強調した。
実質金利について、日銀がこれまで使ってきた「極めて低い」との表現を使わなかった理由を問われ、中川委員は「考え方に大きな変更を加えたものではない」と答えた。名目の長期金利の上昇で長期の実質金利のマイナス幅は縮小したものの、企業や家計の経済活動への影響が大きい短中期ゾーンの実質金利は「まだはっきりとマイナス圏にある」と指摘。「緩和的な金融環境は維持されていて、引き続き経済環境はしっかりとサポートされていく」と述べた。
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